じぇりー さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
見守るように丁寧に観ていきたい作品
主人公が「女の子になりたい男の子」と「男の子になりたい女の子」…という、一見センセーショナルな設定ではあるが、決してドラマチックではない。
あくまで淡白かつスローに、思春期を迎えた少年少女たちの悩みと葛藤を描いている作品だと思えた。
中学生になり、身体に徐々に表れてくる変化、恋愛、友人関係…主人公とその周りの少年少女たちが皆それぞれに悩みを抱えて学校生活を送る様子が描かれているのだが、だからといって決して彼らが特別ということはなく、誰しもこの年の頃には個々に経験したであろう青春のほろ苦さや失敗みたいなものを見ているような気がした。
そして、少年少女たちが自分と周囲の変化に時に戸惑い・傷つきながらも、徐々にそれを受け入れて「今の自分」や「友人たち」をそれで良しとしていく過程が非常に丁寧に描かれている。
音楽はOP/ED共に非常に良かった。メロディー・歌詞どちらもが、本作の伝えたいメッセージをよく表現していたと思う。
声優に関しても、主人公・二鳥修一と、その友人の有賀誠という本作の中心的存在の男子役を、女性声優ではなくどちらもまだ声変わり前の男の子が演じていたことで、リアル感が出て良かった。
また、淡い色調の作画も原作者のカラー絵のタッチを生かしたとのことだが、淡くほろ苦い青春の日々を描くには抜群の効果を発揮していたと思う。
冒頭に書いた通り、決してドラマチックではなく、どちらかと言えば淡々と物語は進行する。ジェンダー問題という表面上の設定の重たさよりも、彼らの感情の機微をどこか上品に、かつ深く描いているため、これを物足りないと感じる人もいるかもしれないが、私はこれこそがいいのだと思う。
自分の青春時代を振り返りながら、不器用でも前を向こうともがく子供たちを見守っていきたい…そう思わせてくれる良い作品だった。