「幸腹グラフィティ(TVアニメ動画)」

総合得点
70.8
感想・評価
955
棚に入れた
4739
ランキング
1465
★★★★☆ 3.6 (955)
物語
3.3
作画
3.8
声優
3.7
音楽
3.6
キャラ
3.7

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takarock さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3
物語 : 2.5 作画 : 3.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

料理のできていない料理アニメ

私は、食や料理というジャンルに異様に興味を示す傾向があり、
これまで様々な作品(主に漫画)に触れてきましたが、
本作の、「美少女(萌え)×料理」という組み合わせは、
実は新しいのではないでしょうか。
既にそういった作品は存在するのかもしれませんが、
代表作となる作品が思い浮かびません。
まるで盲点を突かれたような心持ちだったのですが、
よくよく考えると、この組み合わせは、特段相性が良いわけではないのかもしれません。

萌えと特定のジャンルを組み合わせることのよって得られる効用というのは、
実に多岐に渡りますが、
端的に言うと、知識の有無を問わず、誰でも気軽に視聴することができ、
かつ、その特定のジャンルの知識を得る(魅力に触れられる)ことができるというような、
さながら入門書のような効用が挙げられると思います。
例えば、「ヤマノススメ」は登山の入門書という表現ができるのかもしれません。
本作は登山でなく、料理というジャンルを取り扱っていますが、
ここに入門書は必要ないですね。
料理というのは、それだけ普遍的なジャンルだからです。
「ヤマノススメ」を視聴して「登山に興味を持った」という方は多数いるでしょうけど、
本作を視聴して「料理に興味を持った」という方はほとんどいないでしょう。
多くの人は本作を試聴する前から、自分が料理に興味があるかないかは、
既に知っていたと思います。

入門書としての効用が期待できないのであれば、別の側面からも考えてみましょう。
「美少女が料理を食べているからこそいい」
これに対しても私は些か懐疑的で、
肝要なのは料理が美味しそうに見えるかどうかであり、
誰が食べてるというのはそこまで重要だと思っていません。
美味しそうな料理の絵力というのはそれだけ強いのです。
従って、美少女に頼る必要性はないと考えています。
よしんば、その効用を認めるにしても、
本作のスタイリッシュエロ食い(勝手に命名)がそんなにいいですか?
これは私の持論ですけど、エロ等の演出過剰なオーバーリアクションよりも、
普通に食べて「おいしい~~!!」くらいのリアクションの方が
よっぽど美味しそうに見えます。
別にオーバーリアクションでもいいですけど、
その場合は、もはやギャグだろってくらいもっともっと突き抜けて欲しいですね。
ですが、そもそもオーバーリアクション自体、本作の作風に全然合っていないのです。

それでは、「美少女(萌え)×料理」の組み合わせというのは、
あまり相性が良くないのかというと、
そう結論付けるには早計かもしれません。
「美少女(萌え)×料理」という組み合わせをもっと活かしていく
方法はあると思うからです。

「大切な誰かと食べる料理は1人で食べるよりもおいしい」ということを、
本作は終始訴えてきます。その通りなのかもしれませんが、
ただ、私の考えは少し違っていて、結局は食べる側のメンタリティの問題だと思います。
もの凄くいいことがあって気持ちが弾んでいる時には1人で食べても美味しく感じますし、
逆に、気持ちが沈んでいる時には誰と食べても美味しいとは感じません。

こんな身も蓋もないようなことを言って、
テーマそのものにケチをつけたいわけではありません。
「大切な誰かと食べる料理はおいしい」というのは、大切なことだと思いますし、
テーマは別にこれでいいと思います。
ただ、もっと伝えて欲しいことがありました。

料理というのは、先人たちから蓄積してきた知恵の結晶だと思います。
ほんの1手間、1工程加えることによって劇的に味が変わります。
その知恵を、その知識を伝えるというのが、
料理という題材を扱う上での最大の魅力なのです。
そして、それは本作でも出来ましたよね。

例えば、主人公の町子リョウが料理をする際に、
「お魚を煮る時は煮汁を煮立たせてから煮るとおいしくなるのですよ」とかの
知識をもっと語らせてみたり、
森野きりんなんかは、創作ジャンク料理担当にするというのも1つの方法です。
「リョウ、カレーの中に砕いたかっぱえびせんを入れてみよ~よ♪」
なんて入れてみたら実は美味しかったとか、
視聴者に「へ~なるほど~」と思わせるような工夫はもっとできると思います。

調理じゃなくて食べるのがメインだからというのであれば、
というか、そういう作品はいくらでもありますけど、
その場合でも、実に様々な工夫が凝らされていますよ。
主に使われているのは「砂漠と水理論(勝手に命名)」です。
この状況下で、こんなに苦労した後に食べる~はこんなにも美味しいって魅せ方です。
炎天下の砂漠で飲む水というのが、分かりやすいでしょう。
この場合、原則的に、炎天下の砂漠の描写を徹底的に行います。
故に後の水を飲む描写が活きてくるのです。

本作においても、夏のお風呂の中でアイスを食べるという描写がありましたが、
あれは「砂漠と水理論」が働いていたと言ってもいいと思いますけど、
おそらく偶発的なものでしょう。
だってほとんどは、ただスタイリッシュエロ食いしているだけですからね。

「ただ食べるだけ」
そういう作品もありますし、本作の原作は、
「まんがタイムきららミラク」で連載されている4コマ漫画です。
漫画として分類するならば、箸休め的な位置付けに属する作品でしょうし、
料理が主でなく、萌えが主ということであれば、
知識とか食べ方の工夫がとか、あまりうるさいことは言いません。
「読んでてちょっとほっこりする」
これで十分だろうとは思います。

でもね、そういう作品をアニメ化するならですよ、
(知識や食べ方の工夫なき)「美少女(萌え)×料理」と、
(原作の改悪とも言うべき)「スタイリッシュエロ食い」
だけでは、約30分間視聴者を引きつける武器になり得ないでしょう。
その理由は前述した通りです。
あとはちょっとした百合風味ですか。
どっちにしてもショートアニメならともかく、30分アニメとしてはきついですね。
おもしろい回もありましたし、決してひどい出来の作品ではないと思いますけど、
完食する前にお腹いっぱいとなってしまうような、早い話が飽きちゃうんですよね。
一見強そうな武器だから、これだけで何とかなると思ってしまったのかもしれませんね。
「スタイリッシュエロ食い」とかの訳の分からない調味料をぶち込むんじゃなくて、
もっと素材(原作)の良さを引き出すよう料理すべきだし、できたと思います。

シャフト制作、総監督 新房昭之、シリーズ構成・脚本 岡田麿里、
そして多くの人の関心を引くであろう料理というジャンルと、
材料や料理人はそれなりに揃っているとは思いますし、ある程度期待もしました。
でも、メシマズとまでは言いませんけど、全然料理できてないですよね。
海原雄山なら「このアニメを作ったのは誰だぁ!!」ってブチ切れてますよ。

投稿 : 2015/04/13
閲覧 : 487
サンキュー:

45

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