どらむろ さんの感想・評価

4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 5.0 状態：観終わった

本格派のダークファンタジー＆ヒーローアクション。マイナーだが隠れた力作！

元は2005年放送の特撮番組、シリーズ初のアニメ化作品。全24話。
中世ヨーロッパ風の「剣と魔導の世界」で「ホラー」という怪物から人々を守る「魔戒騎士」や「魔戒法師」達の活躍を描く、変身ヒーローバトル。
CG駆使したバトルシーンの迫力は抜群！
内容はかなり残酷で凄惨な展開も多い、ダークファンタジーです。
重厚な設定とストーリー、辛い宿命に翻弄されつつも生き抜いた人間ドラマ、王道かつ迫真のバトル等々、見所満点。

…遺憾ながら一般受けは難しいマイナー作品。
マイナーなのは残念ですが、これはもっと評価されて然るべき名作級です！


{netabare}『物語』
舞台は「ヴァリアンテ」という中世ヨーロッパ風の国家。
魔界っぽい異世界から、心に闇を抱えた人間の弱さに付け込んで憑依して怪物にしてしまう「ホラー」という化け物の脅威から、「魔戒騎士」という英雄が人知れず人々を守っていた。
…ところが、17年前。
メンドーサという悪者の陰謀で「魔女狩り」と称して魔戒騎士や魔戒法師達が大勢皆殺しにされてしまった。
（守りし者たる魔戒騎士は戒律により、普通の人間には反撃できない）
その魔女狩りで母親が火あぶりにされた記憶「炎の記憶」を持つ少年レオン、レオンの腹違いの兄アルフォンソ王子（メンドーサのクーデターで国を追われてる）の二人の少年が、魔戒騎士として苦悩しつつ成長していく物語。

バトルは特撮の変身ヒーロー＋超速の剣撃バトル！
変身中は攻撃しない等のありがちなお約束で興醒めする事無く、お互い容赦なく攻防繰り広げるのが素晴らしい。
バトル面では間違い無く2014秋～2015冬アニメ最高水準です。
この水準観てしまうと、ラノベ原作の中二バトルがお遊びに見えちゃうくらい凄い。

…序盤からかなりダークな舞台背景で、「人を守りし者」たる二人の少年のドラマが始まる。
序盤はレオンとヘルマンが旅の途中で野良ホラーを退治する個別ストーリー多く、大抵は善人が心の弱みをホラーに付け込まれてしまう、悲しい展開多いです。
のだが、レオンの父ヘルマンが、女にだらしのない、頻繁に全裸になる等の抜けてるキャラなお陰か、幾分ギャグもあって暗い雰囲気が和らいでいる感じ。
一部ギャグ回では爆笑展開も。
ヘルマンの存在自体が和み要素になっていなければ、鬱過ぎて辛い所でしたw
それでも父ヘルマンの生き方や戦い方から、未熟なレオンが学んでいく成長物語でもあった。

中盤、力を暴走させてしまい、魔戒騎士失格となってしまったレオン。
全てを失い、寒村で…村人たちそして少女ララとの出逢いで、少しずつ人間としての安らぎを取り戻して行く。
…心和むハートフル展開、と思いきや！？
ﾏﾓﾚﾅｶｯﾀ･･･

辛い。これは非常に辛い主人公です…。
二度にわたる挫折、これは人間としてもう立ち直れない…
だが！
ここからレオンが真に人を守りし者としての使命を受け継いでいく展開が非常に熱い！
メンドーサが邪悪な野望持つに至ったり、ヘルマンの親友だった男が闇落ちしたり、とにかく本作は「人間の脆さ・闇」を重厚に、徹底的に描き出している。
そんな絶望感にも決して屈する事無く成長し立ち向かっていくレオンとアルフォンソ、彼らを見守り支えたヘルマンやエマ、師匠たち。
終盤までバトルが加速、守りし者としての生き様を息子に示したヘルマン、その意志を継ぐ黄金騎士レオン！
最後の最後まで白熱のバトルと重厚なドラマを見せてくれました。

総じて
極めて重厚なストーリー、本格派西洋ダークファンタジー！
「人の心の闇や業」と、それでも希望を捨てず孤独に戦い続けた者達の壮絶バトル！
全般にかなり鬱展開多し（特にララちゃんェ…）
主にヘルマンがムードメーカーなお陰で幾分ギャグもｗ
武器職人フリオ達がポンコツロボット（いや、中世としては十分オーバーテクノロジーだが！）で大活躍する回は大笑い（な一方で人の強さを示す良回でもあり）
…一般受けはしない作風かもですが、全編通して、かなりの力作です。

『作画』
キャラデザはあまり一般受けしそうにないのですが、慣れれば悪くは無いです。
本格ダークファンタジーを彩る背景描写は中々。
特筆すべきは変身ヒーローバトル！
ＣＧ駆使したバトルシーンは圧巻の迫力あり！
近年、これより凄いバトルシーンは滅多に無いのでは。
単純に派手なだけではなく、細かい剣撃や足場を活かしたアクションが秀逸で、一瞬たりとも目が離せない！
…これ程のレベルの大作アニメなのに、何故不人気なんだ…。

『声優』
本作は声優陣も素晴らしいです。
レオンは浪川大輔さん、アルフォンソの野村勝人さんいずれも辛い宿命から成長していく未熟な若者を熱演。
ヘルマンの堀内賢雄さんも素晴らしい。
普段はだらしのないダメ男だが愛嬌のある大人の男、しかし決める時は決める！
父として、先輩として、守りし者の生き様を息子に示し続けた男ヘルマンのかっこ良さ、堀内賢雄さんの好演が大きい。
エマの朴璐美さんも、大人の滅茶苦茶いい女っぷりがハンパ無かった。
これは若手には中々到達できぬ名演！

※途中で声優陣（浪川大輔さん、野村勝人さん、堀内賢雄さん、朴璐美さん）が御出演した特別番組ありましたが、実力派声優四人のやり取りが見れて凄く面白かったです♪
万策尽きたー！いやいや、有名声優さん達の掛け合い楽しかった上に、各々の演じるキャラへの思い入れが聞けて、素晴らしい特別篇でしたよ。

ラスボス・メンドーサの土師孝也さんも素晴らしい名悪党っぷり。
近年悪のボスは飛田さん多いが、更に老獪さとカリスマで上回っていた感じ。
他にもアニソン歌手として有名な影山ヒロノブさんが喋る指輪ザルバ。
燻し銀のベテラン多数出演。

本作で悲劇のヒロインとなってしまったララを、逢葉まどかさんが好演。
素朴な感じが良く出ていたような。

『音楽』
前期OP「炎の刻印-DIVINE FLAME-」が一番良かったです。
しかしその他も主題と雰囲気に沿っていてかっこいい。
また作中BGMも白熱の激戦に華を添えていた。

『キャラ』
2度も精神的に辛すぎる挫折を味わいながらも立ちあがったレオンが素晴らしい主人公でした。
近年、ここまで挫折する主人公は中々居ない。
ダメ親父の女房役としてしっかり者に成長してたり、童貞をからかわれてムキになったり、色々と可愛い面も。
近年最高の主人公です。

ヘルマンは普段は全裸で街中駆け回ったり女にだらしなかったりとダメ親父なのですが…
生涯通して息子に守りし者の生き様を示した、最高にクールな男でした！
暗くなりがちな本作を適度にギャグにしてくれた功績もｗ
ヘルマンの最期は久々に涙腺緩みました。カッコイイ！

アルフォンソ王子は優等生で苦労人なサブ主人公として頑張った。
王子の責務と魔戒騎士の使命…過労死しそう。
レオンの兄貴として、弟とはベストパートナーになっていく展開も萌え…もとい燃えた！

メインヒロイン格、エマさんも最高にいい女でした。
レオンを坊や扱いしつつ、戦闘でも人格面でも頼れるお姉さんだった。
バトルでの技を駆使した支援やロープアクションはワザマエ！
…生き残って良かった。

悲劇のヒロイン、ララちゃん…。すっごく優しい良い子だったのに。可愛かったのに！
2期EDではレオンに守られてて良きヒロインポジかと思いきや…

このほか印象的キャラの層は非常に厚いです。
ラスボス・メンドーサも道を踏み外した哀れな男だった…
まあ擁護のしようもない吐き気を催す邪悪でしたけど。
こんな男を愛してしまったオクタヴィアさんも、女の意地と悲哀を感じる良キャラ。
アルフォンソの師匠ラファエロも登場回数こそ少ないが、アルフォンソを導いた印象的な人物だった。
市井の人々も逆境に負けずに希望を捨てなかった強き人々も多い。
全編通してどんな絶望があっても「人は決して弱くは無い！」という人間賛歌も感じさせるキャラクター多かったのが素晴らしいです。{/netabare}