jethro さんの感想・評価

4.7
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態：観終わった

忘れてはいけない大切なもの

小説でもなんでも読み解く面白さがあるものが好きだ
なぜなら、そういったものは
読み解かせるための計算がしっかりしており
何よりも明確なテーマが存在するからだ

本作は中学3年生の夏から冬にかけての物語
現実離れした「夢」や「希望」なんてものを
過去の遺物として扱い
現実社会へ向けての１歩を踏み出す時期でもあります。

そんな「夢」や「希望」が残る町に
7年ぶりに戻って来る主人公
その天体(そら)には円盤が存在し
懐かしい家には、それらの象徴ともいえる不思議な少女が現れます。
母親の死により意気消沈していた主人公は
そんな出会いの中で
再び「忘れていた大切なもの」を思いだしていきます。

夢や希望って「明るい」ものの代表格みたいな記号ですが
それを叶えるには
嫌な事を進んでやらなければいけなかったり
失敗もあったり、誰かを傷つけてしまったりと
負の要素と言う土台の上に成り立っていると
言っても良いのではないでしょうか

時として、願っていたものを拒否したり否定したり
でも、それらは全て夢や希望を強く求めるからに他ならない

青春ってやつは残酷で
そんな大変な思いをしてまで手に入れても
手に入れた事すら気付かず、記憶の彼方へ消えてしまう

この感覚、実に沁みます。

夢が具現化された円盤と、その誕生を象徴する少女ノエル(クリスマス)
(クリスマスは生誕祭でもありますし、子供たちにとっては願いの叶う日かも)

この物語で登場人物達の具体的な夢は語られませんが
明確に青春時代「誰しも思い描く大切なもの」として表現されます。

天体観測や粉雪といった冬の心象風景
薄れゆく輝いた日々・・・
そして、全く対照的な夏の日差し
彼らが見つめる先には・・・
「あなたを見つめる」そんな花言葉をもつひまわりが咲きほこる
忘れてしまったことだけど、消え去ってしまったことだけど
忘れず見守っていてくれる
だから、それは決して無駄じゃなかった
青春って素晴らしい

その直感的なメッセージが痛烈で、とても温かかった。