photon さんの感想・評価
2.6
物語 : 1.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
マインド・ウィルスの自己複製簡便化
最近では珍しくないゲーム・シナリオから派生した作品だそうだけれど、差し当たって内容は無い。
価値観は条件付けによって意図せず浸透するものであるから良し悪しの判断基準にはならないけれど、過激な描写や台詞の言い回しは人々により強い感情を引き起こし、マインド・ウィルスの自己複製をより行い易くすることで、ミームの拡散効率を向上させる。
本作品は内容は無いが、注意を強く引く為の作品づくりを目的としている傾向があるような印象を受けた。
刺激的であったり本能に訴えかけたりするようなミームは、たとえ現実離れした内容でも注意を惹きつけ易く、自己複製に優れているという性質を持つ。そこからまず、拡散され易いということが言える。また、そんな注意を惹くミームは感染を繰り返し易く、条件付けも成立しやすいわけで、価値観も刺激的、本能的に陥り易い。途中を大分端折ったけれど、ドーキンスやデネットなんかの著書に詳しい記述があると思う。
極端な価値観を伝道するような作品のミームに染まりたいとは思わないけれど、冷静に考えればそんなものにきめ細やかな(複雑な)心理描写など存在し得ないであろうことが見えてくる。
もしかすると動物的な本能描写を心理描写と捉えることがあるのかも知れないけれど、一応人間のキャラクターならば理性が存在する筈で、理性のループの中には情動が存在する。限定的かつ極端な情動の描写によって特徴づけられているキャラクターは理性に欠陥を持つか、作り込まれていないかのいずれかになる為、人間心理の描写とは言い難いように思う。というところまでいってしまうとカテゴリーが娯楽から飛び出している気がしないでもない。
娯楽として本作品の台詞の言い回しを評価するなら、真剣に馬鹿なことをやっているという表現の真剣度が中程度という感じ。
娯楽の域で心理描写はSFな感じ、或いは動物に近い感じの作品が殆どだから少し考察を重ねると生物学的(多分認知神経科学的とか)な矛盾が生じる。なので恐らくあまり考えなくて良い気がする。
そんなわけで拡散効率向上は売上を目的とするのだろうから、他に印象のないこの作品は所謂商業アニメと考えるのが妥当かな。