セレナーデ さんの感想・評価
3.3
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
一人の主人公に葛藤は二つもいらない
これ言っちゃうと元も子もなさそうだけど、別にマリアさんの「戦争嫌い」を掘り下げる必要はなかったと思うんですよ。
序盤は引きがあってよかったのですよ。戦争を妨害する荒くれ魔女として恐れられているマリアさん。そんな彼女はなんと処女。「不純」の化身である魔女にも関わらず、かの聖母マリアの象徴の如くバージニティを有しているという。この矛盾したキャラクター性を本人はコンプレックスにしている。純潔なんぞさっさと捨てたい。しかしなんと「純潔を失ったとき魔女としての力も失う」という制限をかけられてしまう。さらにそこにいかにもな若年の色男キャラも登場、マリアさんとなんだかいい感じに――。これはなかなか愉快な作品が始まったなと思いました。男と魔法を天秤にかけるマリアさんの滑稽な葛藤を期待できる、面白い出だしです。
しかしこれ、中盤からマリアさんの描き方がブレてくるんですよね。「戦争嫌い」というキャラクターが本格的に掘り下げられ出してから、マリアさんは「戦争を暫定的に止めさせて正解なのか」という新たな葛藤もどんどん膨らませていく。正直、これはいらんですよ。既に「バージニティを捨てるか魔法を取るか」というなんとも面白そうな葛藤があるのに、そこにまた別の葛藤を投入しても、前者の葛藤に面白みが足されるわけでもなし。むしろ、特に興味のないところを掘り下げられていく感じがして、面白くないのです。
戦争嫌いという性格は、マリアさんが魔法の放棄を惜しませる装置として機能していれば充分。話を盛り上げるためにフィーチャーにしていいパーツではなかったと思いました。
序盤のコミカルな雰囲気がよさ気だっただけに、ドラマが変な方向に突っ走っていくのが歯痒かったですね。
*
ちなみに、他作品でシリアスパートがなにかと煙たがられる原因は、今作の様な表現・文脈のズレなのかもしれない、とも思いました。本作でも、マリアさんが異性や性の話題にアタフタするコメディパートは「男か魔法かの天秤」、戦争やら宗教やらのいざこざが絡んだシリアスパートでは「戦争の妨害の是非」と、抱える葛藤に一貫性がありませんでしたから。