「SHIROBAKO(TVアニメ動画)」

総合得点
91.4
感想・評価
3733
棚に入れた
15454
ランキング
34
★★★★★ 4.2 (3733)
物語
4.3
作画
4.2
声優
4.1
音楽
3.9
キャラ
4.2

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ネタバレ

ピピン林檎 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

業界人の“神アニメ”だが、本当の手の内は見せてくれない?不完全燃焼感の残る名作

放送中から本サイトをはじめ各所で例外なく評判の高かった作品であり、また2012年放送のTVアニメでは個人的には間違いなく一番面白かった「ガールズ&パンツァー」の水島努監督の作品、ということなので視聴してみました。

◆各話タイトル&評価

★が多いほど個人的に高評価した回(最高で星3つ)
☆は並みの出来と感じた回
×は脚本に余り納得できなかった疑問回

※星印の右は脚本家

=============== SHIROBAKO (2014年10月-2015年3月) =============
{netabare}
- - - - - えくそだすっ!編 (宮森=制作進行) - - - - -

第1話 明日に向かって、えくそだすっ! ☆ 横手
第2話 あるぴんはいます! ★ 横手
第3話 総集編はもういやだ ★ 横手
第4話 私ゃ失敗こいちまってさ ★ 吉田
第5話 人のせいにしているようなヤツは辞めちまえ! ★ 吉田
第6話 イデポン宮森 発動篇 ★ 吉田
第7話 ネコでリテイク ☆ 横手
第8話 責めてるんじゃないからね ★ 横手
第9話 何を伝えたかったんだと思う? ☆ 吉田
第10話 あと一杯だけね ☆ 吉田
第11話 原画売りの少女 ★ 横手
第12話 えくそだす・クリスマス ★★★(Aパート)☆(Bパート) 横手

- - - - - 第三飛行少女隊編 (宮森=制作デスク) - - - - -

第13話 好きな雲って何ですか? ★ 横手
第14話 仁義なきオーディション会議! ☆ 横手
第15話 こんな絵でいいんですか? ★ 横手
第16話 ちゃぶだい返し ★ 吉田
第17話 私どこにいるんでしょうか…  ★ 吉田
第18話 俺をはめやがったな! ☆ 浦畑
第19話 釣れますか? ☆ 浦畑
第20話 がんばりマスタング! ☆ 横手
第21話 クオリティを人質にすんな ★  吉田
第22話 ノアは下着です。 ★ 横手
第23話 続・ちゃぶだい返し ★ 吉田
第24話 遠すぎた納品  ☆ 横手{/netabare}
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★★★(神回)1(※但しAパート限定)、★★(優良回)0、★(良回)14、☆(並回)9、×(疑問回)0 ※個人評価 ★ 4.3


====== OVA えくそだすっ! (作中で制作されるアニメ) ======

第1話 出トーキョー ☆ 吉野


◆制作情報

監督      水島努
シリーズ構成 横手美智子
※脚本
(1) 横手美智子 ★ 7 ☆ 5 ★★★(Aパート)+☆(Bパート) 1
(2) 吉田玲子  ★ 7 ☆ 2
(3) 浦畑達彦  ☆ 2
(4) 吉野弘幸  ☆ 1


◆全話まんべんなく面白かったのだけど・・・

完走した結果、上記の通り、

(1) OVAも含めて全25話中、★付き(高評価)が14話、☆付き(並評価)が9話で、面白くない回がひとつもない、という平均点の高い出来で、
(2) 特に、前期(えくそだすっ!編)の締めである第12話では、Aパート限定ですが、★★★という最高レベルの感動を得ることが出来たのですが、
(3) そうした前期の満足度の高さを受けて、いやが上にも期待値を高くしていた後期(第三飛行少女隊編)では、視聴を終えた直後の正直な感想としては、どうもイマイチだった様に感じてしまいました。

・・・いや、後期が面白くなかったということでは全くないのですが、しかし、この微妙な感じは何故なんだろう?事前の期待が大き過ぎた、というだけでは割り切れない気がする、ということで、少し考察してみました。

{netabare}
◆①ヒロイン宮森の成長物語+②アニメ制作現場の群像劇

本作は、女子高時代からアニメが大好きだったヒロイン宮森あおいが、夢を抱いて就職した都内のある老舗アニメ制作会社で、

(1) 前期(えくそだすっ!編)では、オリジナル制作の1クール作品の各話制作を担当するぺーぺー(新人)の制作進行として、
(2) 後期(第三飛行少女隊編)では、大手出版社原作付き1クール作品の制作進行の全体状況を、木下誠一(監督)を補佐しつつ把握し統括する制作デスクに大抜擢されて、

それぞれ、

<1> 脚本・絵コンテ・演出・キャラデザ・原画・動画・作監・撮影・音響などアニメ制作の個別工程を担当する様々な人たちの間をつないで制作を進めていくうちに発生する様々なトラブルや、
<2> 各話担当の制作進行の間や、原作出版社との間に発生するトラブルを、

先輩や同僚や各部門の担当者の助けを受けながら懸命に乗り越えて、仕事を成功に導いていく、というヒロイン宮森あおいの成長物語を主軸としつつ、

それと同じくらいの熱意を籠めて

①宮森も含めて、上山高校「アニメ同好会」出身の仲良し五人組が、それぞれ、制作担当・原画・CG・脚本・声演というアニメ制作の各分野で頑張る様子や、
②宮森の会社に留まらず、アニメ制作の現場に携わる多様な人々のリアルな態様を、ポジティブな側面だけでなく、時にはネガティブな側面も織り交ぜつつ描き出していく、

というアニメ制作に関わる規模の大きい群像劇となっています。


◆しかし、語られることのない③監督自身の制作ポリシー

このように本作は、①ヒロイン宮森の成長物語+②アニメ制作現場の群像劇、として、アニメ好きな視聴者や殊(こと)にアニメ制作の現場に実際に関わる人たちに、その放送中から、かなり大きなインパクトと感動を与えた作品であり、今後も様々な機会に言及されることになるアニメ業界にとっての「メモリアルな名作」と要約して良いと思います。

・・・だけれど、私の率直な感想を謂わせてもらえれば、

(1) 前期と後期で、ヒロイン宮森のやっている事って、各話制作進行と全体制作進行という役柄の大小はあるとはいえ、大局的に見れば同じだし、
(2) 本作に描かれている様々なアニメ制作現場のリアルな態様も、前期は主に社内とその周辺の人脈、後期は原作出版社や外注先との人脈、といった規模の違いはあるとはいえ、やはり大局的は同じにしか見えない、のですよ。

・・・つまり、前期はそれで十分以上に良かったと思うし、第12話には本当に感動したのだけれど、それを受けての後期では、①宮森の成長物語+②アニメ制作現場の群像劇、というテーマに加えて、もう一つ、

③水島努監督の考えるアニメ制作ポリシー

というものを、木下誠一監督の口を借りて、熱く語って欲しかったのです。
あの大傑作「ガールズ&パンツァー」の監督の本音が聴きたかったのです。

いや、アニメとはいえ監督自身の言葉を開陳する、というのでは都合が悪い、ということなら、別に麻雀ばかりしている渡辺ライン・プロデューサーの言葉でも、いつも料理を作っている丸山社長の言葉でも良かったのです(とにかく、監督・プロデューサー・社長といった立場の人物が、新任の制作デスクとなった宮森を適宜指導する、という形でアニメ作りの本音が開陳されるのであれば)

だけど、その辺は結局、第23話での現作出版社へのマンガちっくな突入話で誤魔化されて終わってますよね。


◆シナリオ構成から見る本作の意図的な?限界

ここで一寸(ちょっと)注目したいのは、本作のシナリオ構成・脚本の担当者のことです。
私が、1クール作品としては、「魔法少女まどか☆マギカ」と並んで、ほぼ完璧と認める「ガールズ&パンツァー」は、本作でも計9話の脚本を担当している吉田玲子氏が、そのシナリオ構成と共に全話の脚本を担当していました。

それに対して本作では、横手美智子氏がシナリオ構成を担当すると共に、全24話中14話の脚本を担当しています。
で、その横手氏のシナリオ構成した作品で、私がこれまでに視聴したものでは、「プリンセスチュチュ」(総監督は佐藤順一氏)が印象に残っているのですが、その結末部分が、やはり本作と同じように、誰か一人あるいは数人に悪事とか都合の悪いことの責任を押しつける、という(視聴者個人の好みもあると思いますが)どちらかというとスッキリしない・後味の少し悪い締めくくり方で終わっているんです。

これが吉田玲子氏だと、水島監督と組んだ「ガールズ&パンツァー」に限らず、前記の佐藤順一監督と組んでシナリオ構成を担当した「カレイドスター」の場合でも、誰か一人を悪者にして話を閉めるのではなく、登場キャラのほぼ全員に華を持たせる後味の良い結末に上手く仕上げてるんです。

本作では、この吉田玲子氏が横手美智子氏に次いで多くの脚本を担当しているのに、何故シナリオ自体は吉田氏ではなく横手氏が担当したのか?
水島監督としては、吉田玲子氏と組んだ「ガールズ&パンツァー」という大成功例があるのになぜ?という疑問が浮かびます。

もちろん、そこには個々の担当者の仕事の予定とか本作制作の全体スケジュールとか発注単価との兼ね合い、みたいなものがあったのだと思いますが、多少邪推するとすれば、

吉田玲子氏がシナリオ構成を担当した場合、

(1) 木下監督が本作のような道化役一辺倒の存在では収まらず、
(2) (実は水島監督があまり開陳したくない)アニメ制作の達人の本音、即ちこれまで水島監督がアニメ制作という仕事を積み重ねていく中で、まさに「血と汗の滲むような努力によってようやく会得してきた」アニメ制作の本当の意味でのノウハウや智慧や哲学(※絵コンテや原画や制作進行レベルのノウハウではなく)といったもの、を表舞台にさらけ出してしまう結果になりかねない

・・・と、実は本音ベースで危惧されてしまったのではないか?
と完全に門外漢の私などは考えてしまいました(本当に単なる邪推なのでしょう)。

そういう意味で、本作が、あの「ガールズ&パンツァー」の水島努監督の作品だっただけに、私の個人的な感想としては、意図的な?不完全燃焼の印象を持ってしまったのですが、それでも、これだけの面白さをもった作品なので、ここは素直に名作と認めるべきなのでしょう。多分。{/netabare}

*(2018.2.7) 誤字訂正

投稿 : 2018/02/07
閲覧 : 924
サンキュー:

88

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