「アルドノア・ゼロ(第2期)(TVアニメ動画)」

総合得点
82.1
感想・評価
1693
棚に入れた
9756
ランキング
373
★★★★☆ 3.9 (1693)
物語
3.7
作画
4.1
声優
3.8
音楽
4.0
キャラ
3.8

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ネタバレ

生来必殺 さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

左目に気をつけろ

過去最高のオマージュ比率の高さ。
ここまでオマージュ詰め込みすぎるとある意味完全オリジナルというくらいに
オマージュのレベルを軽く超越している。
このシーンはあの作品を意識してるのでは?とか詮索しながら見るのも本作の楽しみの一つ。

2期は3人の主人公が基点となって物語が進行する。
一人はラインハルト、もう一人はルルーシュ、最後の一人はディアナ・ソレル。
覇道を行くラインハルトと冷徹なギアス能力保持者ルルーシュの夢の対決が再現されるかも?

1期に比べるとやや難易度が上がったのか、簡単にストーリーを追えなくなったような印象がある。
ギアスよりも銀英伝が好きな人にオススメで、何といっても政治的ドロドロ劇が一つの見せ場。
帝国側の昔気質の騎士たちの人間味溢れるキャラクター性、気高く気品ある会話、
台詞の一つ一つが聞いてて心地よいと言うか、味わい深い。
(個人的には戦闘シーンをもっと削って会話のシーンを増やせと思うくらい)
例の「悪くない」も本作の名台詞の一つと言える。

ロボットバトルについてはややマンネリ化した感がないでもないが
他の要素で楽しめた自分にとってはあまり重要な問題ではなかった。

戦争とは始めるよりも、終わらせる方が遥かに難しい。
そういう状況を踏まえながら本作の内容を理解し
感想を書くのはかなり難易度が高いような気がする。
レビューを書くのが難しいというのも本作の魅力の一つである。


戦いの火蓋は切られた・・・
{netabare}
「蝙蝠」とは裏切り者という意味を込めた蔑称で、オレンジ君は蝙蝠の彼が、
姫の思いを裏切り覇道を行くことを予知していた。
ある意味一期からギアス能力を持っていたようなオレンジ君だが、
姫殿下に魅せられた者同士、因縁めいたなにかを感じるところがあったのかもしれない。

姫殿下を基点にして敵同士になった二人の男の関係は、単に恋敵というだけでなく
戦争に対する姿勢、政治的主義主張の相違として対立軸を形成することなる。

蝙蝠君には姫殿下の思いがわかっていたはずだが、彼女の命を救うという緊急避難的措置のため
形振り構わず、悪魔=交戦派と取引してしまう・・・
これがすべての元凶で、過ちの連鎖を生み出す。
姫殿下の命を守るためのベストな選択が、帝国と地球の共存共栄、平和を願う彼女の思いを
裏切るという皮肉な結果をもたらすことになる。

姫殿下の和平路線に共感したオレンジ君は、彼女の思い、願いを踏みにじる裏切り者が許せない。
戦いを煽るために姫殿下をも利用する蝙蝠野郎は彼女の思い、平和のために排除しなければならない。
片や蝙蝠君としては、姫殿下の命を危険に晒したオレンジ君が許せない。
いかなる代償を払ったとしても大切な人の命を守る、それが火星騎士の生き様であり
騎士が騎士であるための存在理由だからだ。

一方は姫殿下を守るため、もう一方は姫殿下の思いを守るために
二人の男の対立、争いが勃発するのだが

すべてを悟った姫殿下が果たすべき使命は争いごとを沈め、和平を結ぶこと。
そのためには互いの過ちを認め合い、許し合い、信じ合わなければならない。
アルドノアはヴァース皇帝が信じたように人類にとって希望の光であったはずだが
皇帝は地球人に不信感を抱き、共存共栄の明るい未来を信じることができなかった。
争いによる血塗られた歴史に染まった地球とは違う帝国の繁栄を願い、アルドノアの平和的有効利用を
切望していたはずが、憎しみに囚われ道を踏み外す。

姫殿下は皇帝の過ちを悟り、皇帝の願いを理解した。
そして今スレインも同じ過ちを犯している。
明るい未来を信じられない者に明るい未来は訪れない。
すべてを犠牲にして破滅に向かうスレインの過ちを正し、彼を許し、救わねばならない。

だから自分と同じ理想に共感したイナホに思いを託した。
死に場所を求める火星騎士はイナホという餌におびき出され、再び姫殿下によって救われる。
姫殿下の意に背いたことを死んで詫びるつもりだった彼にとっては不本意な結末。
スレインは姫殿下によって生かされた命の重さ、自分にとって彼女の存在がいかに大きいかを知る。
姫殿下の「ギアスの暗示」にかかった彼は、明るい未来を信じて生き続けるしかないのだろう。{/netabare}

女神転生!
{netabare}
ヴァース帝国の不幸は、アルドノアに魅せられた一介の博士が皇帝になってしまったこと。
この皇帝には帝国を繁栄させるための知恵が無く、苦境を打ち破るための政治力が無い。
もしも、まともな経済担当の臣下がいたり、そういう有能な人材を抜擢できる能力が皇帝にあれば
資源が少ないことから生じる経済的問題も無事解決でき、帝国の現状は
もっとマシなものになっていただろう。
資源が無ければ地球から資源を輸入し、加工して付加価値をつけた製品を
地球に輸出するしか選択肢が無いのだが・・・
アルドノアの恩恵によりヴァース製品の生産コストが割安に抑えられても
強欲で打算的な地球人はヴァースからの輸入品には関税をかけてブロックするかもしれない。

恐らく皇帝はそうなることを熟知しているから地球とは交易しないのかもしれないが
結局資源が乏しい帝国が生き残っていくためには交易しかなく、他に道が無いからこそ
有能な臣下による地球サイドとの交渉が重要となるはずである。
アルドノアという強力なカードがあれば、地球側との交渉で関税率の引き下げを実現することも
そう難しいことではないように思える。

アルドノアの力とそれに基づく軍事力による実力行使、戦争で資源問題の解決を図ろうとしても
資源が乏しい帝国は、経済力の問題で戦争を長期的に継続する能力について難がある。
此度の軌道騎士による地球降下作戦であるが、ジャミングをかけつつ奇襲攻撃で
地球の重要拠点を陥落させ、圧倒的な力を誇示するというスタイルの電撃戦を試みたようである。

騎士道的決闘、決戦思想に毒されているヴァースの人間ならば、力の差に敬意を払い
敗北を認めたかもしれないが、強欲で打算的な地球人は、潔く敗北を受け入れるどころか、
自軍に多大な犠牲を強いる物量作戦で対抗。
長期戦、消耗戦に持ち込めば帝国は苦戦するという算段だろう。
戦いが長引けば帝国側にもそれ相応の被害が出て地球侵攻に対して慎重論が
もしかしたら出てくることもあり得るのだが
この消耗戦によってより多くの損害を被るのは地球側である。

消耗戦に疲れた帝国側が仮に和平を提案したとしたら
強欲で打算的な地球人は、愚かな消耗戦の落とし前を火星側に転嫁し
代償としてアルドノアを差し出すことを要求するかもしれない。
それが地球人という種族であり、愚かな地球人と今更対話しても
なんら得るものはない、
少なくともそう信じている皇帝がいる限り、地球と帝国の和平の実現は困難を極める。
泥沼の消耗戦は双方に甚大な被害をもたらし、得るものよりも失うものの方が大きい
報われない戦争がとめどなく続く。

皇帝の地球人に対する不信感、嫌悪、ザーツバルム伯の私怨、地球人の強欲さが
複合的に絡まりあい戦争といううねりを構成し、そのうねりの中に
敬愛と忠義の殉教者スレインが巻き込まれていく。
それは儚く、切なく、もの悲しい。

スレインはすべての代償を払う覚悟があって戦争指導者の地位に就いたのだが
すべてのツケを彼独りに払わせるのは不条理であり、このまま彼を見殺しにしていい道理がない。
だから彼の臣下は、「桃園の誓い」を敢行。

彼の主君である姫殿下は、権力とありとあらゆる政治力を駆使して彼の企てを妨害し
彼を救い出さんと尽力する。
それは主君としての責任でもあり、ヴァースの皇族としての責任でもある。
臣下のために、帝国と民のために、姉と友人の無事を願うイナホのために、
アルドノアがもたらす明るい未来を信じた祖父のために、
アセイラム・ヴァース・アリューシアは王座に立つ。
すべてのツケを帳消しにできる力をもっているのは彼女の他にいないからだ。

スレインが彼なりに自分の思いを行動で貫いたとするなら
姫も同様に自分の思いを貫き通すのが必然であるはず。{/netabare}

投稿 : 2015/04/16
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サンキュー:

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