CountZero さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
日本版「人形つかい」!?
SFの巨匠ロバート・A・ハインラインの名作に「人形つかい」という作品があります。
私が初めて読んだハインラインなのですが、こちらはナメクジのような地球外生物が人間に寄生することによって、人間社会がじわじわと侵略されるという内容で、「寄生獣」の原作を初めて読んだ時に「人形つかいに似てる!」って感じた記憶があります。
きっと原作者も少なからず影響は受けていると思いますが、実際には寄生獣の方がもっとシリアスでグロテスクです。
昨年の「ピンポン」もそうでしたが、多感でうら若き十代の頃に読んだ作品が、今またアニメ化されて観ることができたり、原作を知らない世代のみんなの感想なんかをアニコレで読むことができるのは、なかなか嬉しいものですね(笑)
で!アニメ版の寄生獣ですが、原作のヒリヒリするような痛みや悲しみや息苦しさは薄まっていたように感じましたが、それでも90年代の作品を上手に現代風にアレンジしつつ、物語の構成も原作を無理しすぎることなくまとめていたと思います。
今見ても物語は十分面白かったです。
ミギーを通して語られる人間観察。
田村玲子(田宮良子)を通して語られる生命の存在意義。
そして泉新一を通して考えさせられる人間らしさ。
いずれもかなり真面目で少し哲学的なテーマですが、それがこの作品を高く評価させる要因です。
奇抜なアイデアでも、衝撃的なシーンでもなく、やはりこの作品で注目できるのはストーリーです。
観終わった後に何を感じるかは十人十色だと思いますが、なんとなく静かに物思いにふけって思索を巡らしたくなります(笑)
運命の赤い糸を信じた君嶋加奈とのやり取りや、母性に目覚めた田村玲子の最期は、苦しくて涙が溢れましたが、ミギーとの友情と別れには爽やかな涙が溢れました。
個人的には主要登場人物の声(田村玲子役の田中敦子さんとミギー役の平野綾さんは特に!)もあっていたし、作画の質も許せるレベルだったので、成功したアニメ化だと思います。
ちょっとグロテスクで怖いところもありますが、シリアスな作品を見たい方には是非お勧めします。