セレナーデ さんの感想・評価
3.4
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 3.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
2期込み感想
主人公の成長描写がいい味出てました。
白状すると、農業高校が舞台の作品だと聞いて「どうせ、命うんぬんな啓蒙臭プンプンアニメだろう、新鮮味のない説法だったらちょっと小バカにしてやろう」とかケツの穴の小さいことを考えていたんですが、農業関連の素材だけに頼らないドラマがちゃんと用意されてて、あっすいませんでしたって感じです。
労働で社会に関与していると実感したときの緊張感とか、自信を持ててる状態を「周囲の見えていない盲目な状態」と考えてしまう青臭い用心深さとか、初めて本当に自由に使えるお金を得たときの感慨深さとか、社会的にも精神的にもワカモノの成長過程が、主人公を通していろいろ散りばめられてます。
そういう意味で、主人公の過去設定も地味にちゃんと活かされてましたね。最初こそは、農業高校に逃避的に入学した主人公の過去の描写がすごいあっさりで、やや不満だったんだけども、「中学時代は、勉学浸けという、ある意味で社会から距離のあった空間に浸っていた」という背景があったからこそ、農業事情に対しカルチャーショックを受ける主人公のリアクションに、説得力が生まれていたように思います。
またそれとは別に、舞台である農業高校の描写にも説得力があって、いいですね。授業内容、部活動、果ては農家の経済事情など、農業高校の実態や農業界のあれこれを、多角的にかつ信憑性を持って描かれてて、情報にいちいち安心感があります。Wikiで原作者の出生を見て大いに納得。農業界の実情を描かんとする姿勢に、厳然たる「データ」とはまた違った形の説得力を感じられます。
めまいしそうなくらい健全な内容、それに似合う安定感が冴える作品でした。強いて文句を付けるなら、もう少しドラマに爆発力が欲しかったですが、そこは安定感との二者択一かなと。