ワタ さんの感想・評価
3.4
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 2.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
おもしろい!(酷評)
本作の見所は数多くあるが、例えば「寄生獣」というタイトルの持つ意味合いが
終盤以降、変遷していく様子が挙げられる。
人間に寄生するパラサイト
↓
地球に寄生する人間
(広川「人間どもこそ地球を蝕む寄生虫!いや・・・寄生獣か)
↓
地球に生まれた全ての生物=寄り添い生きる獣
(新一「みんなここで生まれてきたんだろう?そして何かに寄りそい生きた・・・)
この変遷は、作品自体のメッセージ性の変遷でもある。
ここで興味深いのは、原作者は「寄り添い生きる獣」という意味を連載当初は想定していなかったということ。
環境問題が声高に叫ばれるようになったのは原作が連載してしばらく経った後で、
「人と同じことを作品内で復唱するのが気恥ずかしい」と原作者が後書きで述べている通り、
「愚かな人間ども」という主張は広川に引き継がせ、
作品の主題は当時の世間の風潮からもう一段階先に進むことになる。
(つまり「寄り添い生きる獣」は完全に後付けということになるが
それを全く感じさせない程、結末まで物語の流れを自然に展開していく原作者の技量には感服するほかない)
そして、その作品の主題こそ、自分が本作から最も感銘を受けた部分だ。
最終話でのミギーの台詞が正にそれなのだが、後藤とのバトルのクライマックスシーンが象徴的である。
後藤にとどめを刺す行為は人間のエゴだと思うし、とどめを刺すことに涙を流す行為は偽善と捉えられるかもしれない。
その前の後藤の弱点への一撃を食らわせる際の、あれこれと思い悩むところなんかも、
本当に人間って面倒くさい生き物だよな、とも思う。でもそれこそが人間らしさであり
そんな人間を心に余裕(ヒマ)がある生物(この表現の仕方がまた秀逸)と評して、
なんとすばらしい!と肯定してみせる。
(この台詞を、新一と出会った当初は人間=悪魔に近い存在という認識だったミギーに言わせてるところが良い)
この一連の流れに人間の本質というものが凝縮されていると感じる。
「愚かな人間ども」な時代にこういったメッセージを発したことに意義があると思う一方で、
人間の本質というものはいつの時代も変わらないものであり、本作は時代を超えた普遍性を有しているのだと思う。
だからこそ連載終了から20年経ち今なお評価され続けているのだろう。
もし自分にミギーみたいな寄生生物が寄生して、人間とは何かを学びたいと言われたら
どんな本よりも真っ先に「寄生獣」という作品を読ませてやりたい。
以上が、原作の感想になります。
でもここはアニメのレビューサイトなので、アニメの感想にも触れなければダメですよね(笑)
率直に言って、面白かった。ただそれは大筋が原作通りであるからであって、
アニメになって原作を超えてると思えるシーンは、正直ひとつもなかった。
舞台を現代にする必要はあったのだろうか。
PC、タブレット、スマホといったアイテムも登場させてるが
物語の中に活かすことなく上辺だけ取り繕ってるだけじゃ意味がないと思うのだが。
改変するなら「情報技術が発展した現代に寄生生物が現れたらどうなるか」を
徹底的にシミュレートした上で作って欲しかったと思う。
寄生獣同様、漫画原作で実写映画メインのメディア展開をしている暗殺教室という作品が現在放送中だが、
こちらは原作の持ち味を殺すことなく丁寧に作られている。
原作付きアニメは原作を忠実に再現するか、大胆なアレンジを加える2つの方法論が考えられるが
暗殺教室は正に前者のお手本のような作品。寄生獣も一応前者なのだが、どうにも中途半端。
ストーリーの主題こそ捻じ曲げてはいないものの、意味を見出せない無駄な改変が目立つという印象を受ける。
演出も平坦すぎるし、ストーリーも本当にただ原作の表層をなぞってるだけなので
上で述べたメッセージ性もイマイチ伝わってこない。
というか何だかスタッフにやる気を感じられないのは私だけだろうか。
どうせ実写映画の宣伝に過ぎないと適当に作ってるんじゃないだろうか。
そんなこんなで原作厨であることは重々承知した上で過激なことを言わせてもらうと
「原作舐めるなよ、テメェら」というのが、詰まるところアニメ版寄生獣に対する正直な感想です。