ichinana さんの感想・評価
4.7
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
翼(過去)は夢(現在)。そして空(未来)へ・・・
カレイドスターのもう一人の主人公、レイラ・ハミルトンの過去と現在と未来への話。
テレビシリーズはそら視点でしたので、そらの心理描写は非常に良く描かれ、そらにとってのレイラさんの存在の大きさはひしひしと伝わってきます。一方でレイラさんの内面についてはあまり多く語られておらず、レイラさんにとってもそらの存在が大切なものであることは伝わりますが、そこに至る精神的な過程が不足しているように感じていました。
本作はそこのところを見事に補完しており、そらレイファン必見の内容となっています。
物語はブロードウェイの新演目「フェニックス」の稽古シーンから。周囲の絶賛とは対照的に自分の演技に不満を漏らすレイラさんとキャシー。ついには公演日を目前にしてレイラさんは失踪して・・・と続いていきます。
よく考えてみるとレイラさんもそらもまだ10代。悩み迷わない方が不思議ってもの。特にレイラさんはテレビシリーズでは一貫して「強く気高い女性」として描かれており、演じる大原省の声質もあって「弱さ」とは無縁のような存在でした。しかしそれは母との別れや父との確執、トップスターとしての責任など、おおよそ10代の少女では耐えられないほどの重圧の中で身につけた防衛本能のようなものだったのかもしれません。
サイクリングバイクであてもなく走り続けながら、途中幾多の人と出会い触れ合っていく中で、かつての弱かった頃の自分を思い出していきます。そしてそらに対して感じた既視感(時折みせるそらの弱さに過去の自分を重ねたのかもしれません)と羨望の理由が語られていきます。
湖畔での一連のシーンはカレスタの中でも屈指の名シーン。
「そうだ。そらに会いに行こう」は、
その時の彼女の純粋な想いの発露で、10代の少女らしい飾らない真っ直ぐな言葉でした。ここで登場するそらさん。マジイケメンです。
そして不死鳥のごとく復活するレイラさん。
シリーズのフィナーレにふさわしい感動的なラストです。
最後に余談をば。
本作はシリーズ初のワイド画面になっています。映像も綺麗です。
しかしここであえて4:3のテレビで視聴するのもまた一興。
作中にはいかにもアメリカ大陸というシーンが多々あり、レターボックスで視聴すると一昔前の西部劇っぽく感じられて面白いです。メインテーマが"過去"ですしね。