「寄生獣 セイの格率(TVアニメ動画)」

総合得点
79.8
感想・評価
1614
棚に入れた
7768
ランキング
488
★★★★☆ 3.8 (1614)
物語
4.1
作画
3.7
声優
3.8
音楽
3.6
キャラ
3.8

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ネタバレ

OZ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 5.0 作画 : 3.0 声優 : 4.5 音楽 : 2.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

アニメ化したモンスターコミック

原作の漫画は読んでいて
期待と不安の半々で観てみた
2014秋~2015冬の2クール作品

■アニメ化したモンスターコミック■
1988年~1995年まで
雑誌「モーニング」「アフタヌーン」で連載され
既刊のコミックスに加え
完全版 新装版 文庫版と
シリーズ累計1,300万部を売り上げ
今現在もなお売れ続けている
言わずと知れた岩明 均先生の傑作『寄生獣』

今でこそネットの普及で
数ある作品の評価を
当たり前に知る事が出来る様になってきたが
ネットの普及されていなかった当時
マイナー誌であるにも関わらず
メディアミックスもされないで
コミックス全10巻の売り上げが1,000万部に達した
実に驚異的な作品である。

さて そんなモンスターコミックのアニメ化だが
アニメ版のキャラクターデザインを初めて目にした時は
「イメージと違う・・・」なんて
正直"やっちまった"感が先行したけれど
何しろ古い作品なので
原作未読者や初見の人を含めると
今風にマイナーチェンジしてあるのは然るべきなのだろう。

無機質で渇いた漫画版の雰囲気とは異なり
キャラクターデザインの変更や色が付いた事で
不気味さとグロさは大幅に緩和されている。

原作を知っているが故
違和感は有れど回を重ねる毎気にならなくなり
先入観で判断してしまうのは非常に勿体無い。

今作品の魅力と言えば
巧みな心理描写と生物の共存をテーマに
「人間とは何か?」
視聴者へ問いかけるストーリーである。

人は生きる為に必ず他種生命の
犠牲の上に成り立って生きている。
作中でパラサイトが行っている捕食行為は
残虐な殺戮以外の何物でもないのだが
あくまで"人間から見た常識"で
照らし合わせているからであり
牛や豚や鳥
異なる様々な畜類の視点で想像したら
人間がしているそれとあまり大差はないだろう。
だからと言って正しい訳ではないのは一目瞭然である。

あらゆる物事や事象に対して
何時の時代も正しい答えは存在せず
自分にとって正しいと信じていても
異なる視点から見たら間違っている事は多々あるのだ。

人間の持つエゴイズムが
至って偏在しているのかもしれないと
問題を提起した作品なのである。

■音楽面の演出は・・・■
ストーリー展開は申し分ないのだけれど
残念ながら"音楽の使い方"は
致命的とも言える唯一の弱点となってしまった。

場面をより強調する見せ方の一つとして
音楽は欠かせない要素であり
シーンと合っているか否かで
印象は大きく異なってくるもの。

第12話「こころ」にて
加奈の葬儀後に光男と揉める場面や
第18話「人間以上」で
田村 玲子が息を引き取る際の場面でも
突然 ED曲「IT'S THE RIGHT TIME」が流れ出す。

台詞に歌が被ってしまって聴き取り辛くなる上
迫真の見せ場をお構い無しに感動路線へと走らせるのは
観ている側に強要している様で
少々押し付けがましい。

涙を誘う演出なのは重々理解出来るが
やり過ぎとも感じる過剰な演出により
上記の場面で興醒めしてしまったのだ。
せめて歌詞の無いインストを
流してもらいたかったものである。

音楽の使い方には不満があったものの
BGM自体は悪くなく
お気に入りの曲を二つ挙げたい。

主にパラサイトとのバトルシーンで使用され
アップテンポな曲から
バトルにスピード感をプラスした「HYPNOTIK」

続いて 憂いが募る感情時に
随所で使用されたピアノ曲「NEXT TO YOU」

第6話「日はまた昇る」で
殺された母の仇を取ろうと
民宿の娘 真樹子を振り切って
海岸に向け走り出すシーンが印象に残り
今作品が思い浮かぶ代表的なBGMである。

音楽そのものは悪くないだけに
使い所が適していなかった為
音楽面の評価は厳しめになってしまった。

■ミギー・・・防御を頼む■
名場面や名言が多い今作品の中で
原作共にもっとも衝撃を受けたのが
第12話「こころ」での心情描写だ。


パラサイトの捕食が行われている現場に
新一の姿を追って運悪く遭遇してしまった加奈

新一が駆けつけたと同時に
背後から一瞬にして胸を貫かれ
加奈は瀕死の重傷を負ってしまう

あまりにも瞬間的な出来事に
事態を把握出来ないまま
茫然と空白の表情で立ち尽くす新一

ほんの一呼吸分時間を置いてから
全てを理解した新一は

新一「ミギー・・・防御を頼む」
ミギー「防御?」

言い終わった直後
右手はパラサイトの攻撃を捌き
心臓をめがけて勢い良く身体を貫通した左手は
そのまま凄まじい力で
壁をぶち破る程に叩きつけた

ミギー「凄い・・・」
一連の流れを見て驚きながらボソッと呟く

対パラサイトとの戦いでは常に「作戦」を立て
ミギーが主導権を握り 指示されなければ
新一自ら攻撃を仕掛けたりする事はないのだが
今回に限っては「作戦」と呼べるものではなく
ただ目の前の相手を破壊しようとする
怒りからきた「衝動」が描き出されている。

破壊的衝動に満ちた感情を表現するのに
「ミギー・・・防御を頼む」
これ程適した台詞はあるだろうか。

ミギーに攻撃させず
防御を任せる事によって
新一の悲痛な怒りを伝えた
見事としか言い様のない描写であり
強く印象に残った場面である。

■あとがき■
キャラクターデザインがイメージと違い
第一印象はどうしても違和感を抱きましたが
楽しめる全24話でした。

原作が完成されているだけに
正直 心配はありました。
でも 杞憂に終わりアニメ化は良かったです。

やっぱりネックだったのは音楽面かな。
OPにしろEDにしろ
楽曲そのものは悪くないのだけれど
「作品に合っているか?」と問われたら
残念ながら首を縦に振る事は難しくて
一度観たら後はスキップしてしまっていたよ。

改めて音楽の重要性を知れたので
結果 良しと落ち着きましたが
音楽面だけは本当に惜しい。

反対に意外とハマっていたのが
ミギー役 平野 綾さんの演技だね。
作品の外で色々と話題に挙がる事の多かった方だけれど
実力を感じさせてくれましたね。

ちなみにミギーの1番好きな台詞は
新一が水で手を洗う際に発する「シンイチつめたい」です(笑)


最後になりますが
他の生物が死を迎えた時に悲しむのは
人間がそれだけひまな動物だとミギーは言います。

そして それこそが人間の最大の取り柄であり
心に余裕のある生物は素晴らしいと。

こういった台詞がよく思いつくものだなって
本当に驚くばかりです。

あれこれ考えさせられ
これからも語り継がれるであろう
漫画史における色褪せる事ない名作の一つですね。

満足度 ★★★★★★★★☆☆ (8)

投稿 : 2015/03/28
閲覧 : 382
サンキュー:

47

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