「ログ・ホライズン(TVアニメ動画)」

総合得点
84.7
感想・評価
1971
棚に入れた
11969
ランキング
280
★★★★☆ 3.8 (1971)
物語
4.1
作画
3.7
声優
3.8
音楽
3.7
キャラ
3.9

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ネタバレ

STONE さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 5.0 作画 : 3.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

ゲーム仕様をうまく活かした異世界ファンタジー

 原作は未読。
 テレビ放映時は同じMMORPGの世界に閉じ込められるという設定のソードアート・
オンライン(以後、SAOと表記)の少し後に放映されたため、「パクリ」だの、「二番煎じ」だの
言う人もいたようだったが、似たようなモチーフを扱った「.hack」シリーズや「クリス・
クロス」などの既出作品があることを考えると本作品とSAOのどちらが先かなどと考えても
しょうがないように思える。
 更に最近?の媒体であることからMMORPGを取り扱っているが、別の媒体、例えば本の中の
世界に閉じ込められるような設定などはもっと古い作品があるし、「コンピュータ内に存在する
世界」、「自分のいた現実とは、別の現実世界」などの個々の要素に分解すると、これまた
それぞれ古い作品があったりする。
 この作品に限らず、ネット上ではやたらと「パクリ」を指摘する発言が多く見受けられるが、
そもそも創作物において、ほとんどの作品が先人の創作物に影響を受けつつ、それを発展・変化
させていったもので、同じモチーフを扱うことが「パクリ」と言うのなら、タイムトラベル
ものや異星人襲来ものなどは全てH.G.ウェルズのパクリ作品ということになってしまう。
 設定、展開、結果などが全て似たような作品はさすがにどうかと思うが、同じモチーフや
設定を扱いながらも「もっと面白くしてやろう」、「違った切り口で扱ってやろう」といった
心意気のようなものが感じられれば個人的にはオーケーかなと思う。
 本作品とは関係ないことを長々と書いてしまいましたが、この作品にはネット上でパクリ
指摘が多かったものでつい書いてしまいました。

 パクリうんぬんは置いといて、近い時期に放映されたSAOと設定が似ているのは事実だが、
設定の扱いや展開などはまったく異なるもの。
 SAOではゲーム世界に閉じ込められた理由や、それを解決するにはゲームをクリアすれば
いいということが判っており、そのために個々のスタンスの違いこそあるものの、ゲームクリア
こそが全体の総意であり、そのために主人公が行動するヒロイックファンタジー系作品で
あるのに対して、本作品は事象理由が不明であることから、主人公であるシロエを始めとする
各キャラのこの世界への向き合い方はそれぞれ異なる。結果としては各キャラのそれぞれの
行動を描く、一種の群像劇のようになっているのが面白い。

 作品舞台であるエルダー・テイルだが、元?はMMORPGであるという部分を活かしきって
いる感じで、魂魄理論とHP、MPの関係のようにゲームの仕様や設定が、エルダー・テイルでの
理に叶った現象となっているところなどの落とし込み方が上手い。
 戦闘などもゲームのバトルシステムがうまいこと反映されており、全体的に設定が凄く
練り込まれている印象が強い。

 展開としてはシロエの視点を中心にアキバを中心としたエルダー・テイルの状況を変えていく
様が描かれているが、味のなかった食事がちょっとした工夫で味を付けることができるという
小さな事象から、アキバ全体を変えるような大きなものに発展させていく話の膨らませ方が
面白い。
 また、円卓会議設立とミノリとトウヤの救出、ゴブリンの襲撃と年少組の合宿といった
具合に、大局的なものと局地的なものを同時進行で進ませつつ、互いが無関係ではなくリンク
している状態にあるなど、話の進ませ方が上手いなと思う。

 主人公のシロエだが、多くのファンタジー作品の主人公が自ら先頭に立って戦うような
キャラが多いのに対して、知略を駆使する参謀タイプであるのが面白く、この頭脳プレーが
この作品の見どころの一つといった印象。
 ただ知略に根ざした理知的な行動を取りながらも、その行動を促す発端は直感的な印象で、
内なる感情は結構熱いものがあるキャラに見えた。
 現実世界でも内向的だったように思えるシロエだが、最初は内向きだったシロエがエルダー・
テイルでの状況を前にして次第に変化していく様が描かれており、シロエの人間的成長
ストーリーという側面もある。
 このエルダー・テイルでの経験による人間的成長は他のキャラも大なり小なりあるようで、
特にシロエを目標とするミノリなどはそれが顕著な感じ。

 他にも魅力的なキャラが多いが、単に個としての魅力だけでなく、ギルド、円卓会議、アキバ
全体など、大小さまざまなコミュニティにおいて一致協力していくチームプレイの魅力がある。
 この内容がまさに作品内で語られる「自分ができることをする」を体現しており、それぞれの
特技を活かして目的に向かう様は見ていて気持ちいい。

 大地人という存在も印象深く、プレイヤーが冒険者としてがゲームに興じていた頃は
プレイヤーが人間で、大地人はゲームを成立させるためにシステムの一部にすぎなかった
ものが、エルダー・テイルに取り込まれた今、感情はおろか歴史さえ持つ大地人こそ人間で、
死んでも生き返るような冒険者こそ異質な存在であるという主客逆転しているような状態が
面白い。
 本作品はエルダー・テイルを一つの現実として捉えるか、あくまでゲームとして捉えるかに
よる各キャラの認識の違いが多く描かれているが、冒険者の大地人への態度も同じような
もので、向かい合う相手を人として認識できるか、否かは一種の差別的要素も絡んでくるために
なかなか奥深いものがある。
 この冒険者と大地人という関係においては、大地人として積極的に冒険者という存在を理解
していこうとするレイネシアや、大地人でありながら冒険者になったルンデルハウス・コードは
今後も重要な存在になっていきそう。

 ストーリー的には途中で終わってしまった感じだが、まだまだ作品内の謎は多く、更に
シロエを始めとするエルダー・テイルの行く末も気になることもあって、今後が楽しみ。
 更に彩りを添える要素として幾つかのカップリングが生じていたが、こういった恋愛方面の
今後も楽しみと言えば楽しみ。

投稿 : 2016/01/11
閲覧 : 318
サンキュー:

10

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