「思い出のマーニー(アニメ映画)」

総合得点
66.9
感想・評価
341
棚に入れた
1779
ランキング
2652
★★★★☆ 3.8 (341)
物語
3.8
作画
4.2
声優
3.5
音楽
3.8
キャラ
3.7

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ネタバレ

N0TT0N さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

心残りの杏奈

思い出のマーニー

言わずと知れたジブリ作品です。
一応言っておくと、長編作品監督業の引退を発表した宮崎監督作品ではありません。
個人的にはジブリに所謂ジブリらしさを求めるのは止めようと思っているので結構自然体で視聴しました。

内容は現実のお話とファンタジーを融合させた感じの作品です。

結論を言うととても素敵な作品だったと思います。
名作というよりは良作。
ひねくれた見方をしがちな自分でも目からキラキラしたモノが溢れる感じの作品でした。

設定で目を見張るのが、自分を好きになれない主人公の杏奈が療養のため訪れた場所とそこから見えるお屋敷、その間にある湿地帯の景色です。
ただの景色といえばそれまでだけど、この風景を普通の町にしてしまったらファンタジー性が弱くなるし、鬱蒼と茂る森なんかにしたら主人公の「自分を好きになれない感情」と重なりすぎて重たい物語になっていたような気がします。

どちらも悪くはないと思うけど、現実とファンタジーが半々の感じを出すことを考えると、内に籠もった印象にならず、かといって大きく開かれているわけでもない、そして秘密の場所に成り得るこんな美しくてちょっと不思議な湿地帯にしたのは正解だったように思います。

作画は良かったですね。
水が多く登場するんだけど、水の表現の幅ってかなり広いと思うのです。
本作の場合は結構シンプルに水を表現しているんだけど、とても表情のある背景作画になっているとおもいます。

そして物語の主題は、杏奈の心の変化だと思うのですが、かなり丁寧に、じっくりと描かれています。

描こうと思えばいくらでも周囲との関係などを描けると思うけど、そこは極力簡潔に、且つ十分状況が解るよう上手く表現されていて、物語はほとんど杏奈とマーニーの関係に絞って描かれているので、ブレずに杏奈の心境を追いかけることができます。

謎めいた部分があるのに迷わないで視聴できるのは、この演出のおかげではないかと思います。

そして、この謎めいた部分が作品のもう一つのポイントだと思うのですが、これが現実とファンタジーを半々の感じで描いた理由だと思います。

個人的には納得の解答でした。
そして、この謎が解った後もう1度違う視点から作品を視聴するという楽しみもあると思います。

そう、本当のマーニーの視点で。



【余談】
根岸季衣さん。
この方は女優さんでハードな役からとぼけた役までこなせる素晴らしいバイプレーヤーだと思ってたのですが、まさかここまで声優力があるとは‥。
お見逸れしました。+゚(*ノ∀`)

彩香ちゃん。
とてもいいキャラでしたw
彼女によって物語全体の雰囲気がいい方向に進んだと言ってもいいくらいです。
キャラといい物語上の役割といいノエインという古いアニメに出ていたメガネっ娘とかぶりますw


※この先、本編未視聴の方は覗かないことをお勧めします。


{netabare}

最後まで視聴するとマーニーの正体が解るのだけど、それと同時にこの現象を、杏奈だけでなくマーニーも望んでいたことが解ります。
マーニーおばあちゃんの心残り。

おばあちゃんが杏奈にもっといろいろしてあげたかったことがあって、おばあちゃんとして悔しくて申し訳ない気持ちだったのではないかと思うのです。

つまりこの現象は杏奈の夢の出来事であったと同時に、マーニーの夢の出来事でもあったのでしょう。

そういう印象を持って2回目、おばあちゃんマーニー視点で視聴をしたのだけど、ぶっちゃけマーニーが、おばあちゃんなのか杏奈と年齢の近い見た目どおりのマーニーなのかよく解りませんでした。

行動自体は完全に見た目どおりの年齢のそれであるのに、杏奈に対する思いはおばあちゃんの気持ちが強く表れているように感じました。

で思ったのが、杏奈が孫であることや、おばあちゃんになったとき杏奈に対してどういう感情を抱いていたのかを感覚的に理解していて、精神的には見た目どおりの少女。
でも当然見た目どおりの自分の時間軸の感覚も持っている。
それがマーニーだったのでは‥ということです。

なので、より混乱してるのはマーニーのほうで、一途な杏奈に対し、マーニーは少女マーニーの1番である和彦とおばあちゃんマーニーの1番である杏奈の間でどうしたらいいのか解らない状況になってしまったのでしょう。

そして、2人のマーニーが混在したことが、この物語が「マーニーが与え、杏奈が受け取る」というふうな、一方通行の物語にならなかった大きな要因だと思います。

まあ、演出としても完全におばあちゃん的行動をとる少女じゃちょっとおかしいことになりそうだし、結果的には最善の策だったように思います。
たぶん監督もその辺を狙っていたんじゃないでしょうか。

おばあちゃんの気持ちを少女マーニーの気持ちに変換した行動。
その変換を元に戻すと、マーニーがこの現象を求めた理由が見えてきます。

それは自分が杏奈を誰よりも愛しているということ、
もっと言うと、杏奈は愛されているのだと、自分のことをもっと好きになっていいのだと伝えたかったということ。


その気持ちが伝わったことにマーニーの心残りの解消と、杏奈の自己肯定があるのだと思います。

{/netabare}

投稿 : 2015/03/28
閲覧 : 263
サンキュー:

18

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