「四月は君の嘘(TVアニメ動画)」

総合得点
91.6
感想・評価
5071
棚に入れた
20164
ランキング
28
★★★★★ 4.3 (5071)
物語
4.3
作画
4.3
声優
4.2
音楽
4.4
キャラ
4.2

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ネタバレ

OZ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

モノクロームな世界はカラフルに

原作の漫画は読んでいないが
あらすじから興味を惹かれ
観てみる事にした2014秋~2015冬の2クール作品

■モノクロームな世界はカラフルに■
ピアノを弾けなくなった元天才ピアニスト 有馬 公生と
赴くままに自由な音色を奏でるヴァイオリニスト 宮園 かをり
相反する性格の二人が出会い共鳴し
音楽を題材に成長を描いた『四月は君の嘘』

ノイタミナらしい音楽×青春×恋愛で
『のだめカンタービレ』の様に
この手の作品を好む人にはド真ん中な作品だろう。

今作品の評価したい点は
何と言っても演奏においての演出面だ。
特に第2話「友人A」にて
ベートーベンのヴァイオリン・ソナタ第9を
ヒロイン 宮園 かをりが奏でるシーンは
音のハメ方といい作画共に圧巻である。

また ピアノの音が聴こえない表現を
ボコボコと水の中で弾いている描写が
閉塞感を漂わせて何とも面白い見せ方だ。

一方で気になったのは
日常シーンにおいての些細な暴力?描写が
"浮いてしまっている"事である。

コミカル要素を出したい意図は伝わるが
血がドクドク吹き出したりと
流血ネタに若干引き気味となってしまう為
もう少し違うアプローチで
描いて欲しかったところだ。

音楽面は勿言うまでもなく力が入っており
クラシック並びに主題歌は
流石の仕上がりとなっている。

中でも前期OP「光るなら」は
キャッチーで聴き易く
「君だよ 君なんだよ♪」のフレーズが印象に残り
今作品の代名詞となり得る楽曲である。

反対に全てを観終わった後で聴くと
胸を打つのは前期ED「キラメキ」だ。
かをりに向けた公生の想いが詰め込まれており

「出会いから全てが かけがえのない日々
 いつまでもこの胸にあるよ ありがとう」

このラストフレーズが強く胸を締めつけ
最終回に流れる場面では
これ以上にないくらい
歌詞と見事にマッチしており
文句の付け様のない完璧な演出であった。

ストーリーそのものは
ズバ抜けて上手く練られている訳でないが
涙を誘うドラマチックな展開には
感極まってしまう人も多いだろう。

■才能を高め合うライバル達■
互いを高め合うに
ライバルは欠かせない存在である。
そう!今作品は二人のライバル達が
実に魅力的なのだ。

まず一人目は相座 武士。
特徴のある尖った髪型からは
ピアニストだと想像出来ないが
見た目とは裏腹に
指先から繊細な音を弾く演奏家である。

中でも第19話「さよならヒーロー」にて
ショパン 革命のエチュードを

「見てろよ絵見・・・有馬・・・
 てめえらまとめてぶっ潰してやる!!」と

演奏を始めるシーンには魅入ってしまったもの。

話が進むにつれ公生に対し
妹の凪へのシスコンっぷりを表したりと
演奏外のところで徐々に人間味を感じられ
ギャップもあってかお気に入りのキャラクターだ。

続いて二人目は
公生を否定する為に
ピアノを弾き続ける井川 絵見。

その日の天気にすら左右され
ほんのちょっとした事で
演奏ががらりと変わる気分屋な彼女だが
第8話「響け」にて
ショパン 木枯らしのエチュードを

「たった4分足らず
 たった4分足らずの演奏が・・・私をピアニストにした」
「響け 響け 響け!私のピアノ!!」と

公生に向けて真っ赤なドレスで弾く姿は
観る者 聴く者を魅了した事だろう。

コンクールで勝つ為の演奏している武士より
順位は下に位置しているものの
情熱を込めて鍵盤を弾き
武士とはまた異なる魅力を持った演奏家である。

あくまで公生とかをりの物語なので
登場機会がそれ程多くなかった二人だけれど
彼等の存在で以って
今作品が彩られたのは間違いないだろう。

■かをりの手紙■
今作品のハイライトとして
真っ先に挙げたいのが最終回である。
公生に宛てたかをりの手紙を読む場面は
まさにクライマックスに相応しく
気付いた時には感情が頬を伝っていたからだ。


「ありがとう かをりの人生を豊かにしてくれて」

静かに雪が舞うかをりの眠る場所で
彼女の両親から手渡された一枚の便り

季節は流れ 雪に代わり
薄紅色の桜が散り始めた頃
かをりが黒猫を見た同じ場所で
ポケットからそっと手紙を取り出す公生

『拝啓 有馬 公生様
 さっきまで一緒にいた人に手紙を書くのは変な感じです』

『君はひどい奴です
 グズ のろま アンポンタン』
相変わらずの憎まれ口な書き出しから始まり

『君を初めて見たのは五つの時
 当時通ってたピアノ教室の発表会でした』
最初に公生を目にした日の事

『大き過ぎるピアノに向かい 一音奏でた途端
 私の憧れになりました』
公生に憧れを抱いていた事

『公生君にピアノ弾いてもらいたいの』
ピアノをやめてヴァイオリンを始めた事

『どうやれば声かけられるのかな
 購買部にサンドウィッチ買いに通おうかな
 でも 結局眺めてるだけでした
 だって みんな 仲良過ぎるんだもの
 私の入るスペースはないんだもの』
同じ中学だと知った時の事

『ある夜 病院の待合室で
 お父さんとお母さんが泣いてるのを見て
 私は長くないのだと知りました』
おそらく自分は長く生きられない事

『怖かったコンタクトレンズ
 体重を気にして出来なかったケーキホール喰い
 偉そうに指図する譜面も私らしく弾いてあげた』
後悔を天国に持ち込まない為に走り出した事

そして たった一つの嘘

『そして 一つだけ嘘をつきました
 宮園かをりが渡 亮太君を好き
 という嘘をつきました』

『その嘘は私の前に
 有馬 公生君
 君を連れて来てくれました』

公園にある遊具の上で
ピアニカ片手に「ハトと少年」を吹くかをり

二人の出会った記憶が
鮮やかによみがえる

『私の姑息な嘘が連れてきた君は
 想像と違ってました
 思ってたより暗くて卑屈で意固地でしつこくて盗撮魔
 思ってたより声が低くて
 思ってたより男らしい
 思ってた通り優しい人でした』

『度胸橋から飛び込んだ川は
 冷たくて気持ち良かったね』
『音楽室をのぞくまんまるの月は
 おまんじゅうみたいで美味しそうだった』
『競走した電車には本気で勝てると思った』
『輝く星の下で二人で歌ったキラキラ星 楽しかったね 』
『夜の学校って絶対何かあるよね』
『雪って桜の花びらに似てるよね』
『演奏家なのに舞台の外のことで心がいっぱいなのは なんかおかしいね』

カラフルに色付き 過ごした日々を
一つ一つ確かめる様に綴られた言葉達

前期ED曲「キラメキ」が流れ出す
『忘れられない風景がこんな些細なことなんておかしいよね』

「そんなことないよ」
ピアノを弾きながらかをりの言葉に答える公生

『君はどうですか
 私は誰かの心に住めたかな』
「そうだね」

『私は 君の心に住めたかな』
「土足であがってきたよ」

『ちょっとでも私の事 思い出してくれるかな』
「忘れたら 化けて出てくるくせに」

『リセットなんかイヤだよ』
「するもんか」
『忘れないでね』
「うん・・・」
『約束したからね』
「うん・・・」

『やっぱり 君でよかった
 届くかな 届くといいな』

『有馬 公生君
 君が好きです 好きです 好きです』
手紙に零れ落ちる一粒の涙

『カヌレ全部食べれなくてごめんね
 たくさん叩いてごめんね
 わがままばかりごめんね
 いっぱいいっぱいごめんね』

『ありがとう』
踏切の向こう側で優しく微笑むかをりはもういない

「君は自分勝手だ
 お礼を言うのは僕なのに」

『PS 私の宝物を同封いたします
 いらなかったら破って捨ててください』

いなくなってしまったかをりの代わりに
幼なじみの澤部 椿が
踏切を越えて歩いてくる

「一人になんてなれると思うなよ公生
 背後霊みたくずーっとずーっと傍に居てやるんだからな
 覚悟しとけ!」
椿の素直になれない思いやりに
少し困った笑みを浮かべる公生

「もうすぐ春が来る
 君と出会った春が来る」

【君がいない春が来る】

幼き日のかをりと後ろを歩く公生
偶然収まった彼女の宝物である一枚の写真

かをりと出会っていなければ
おそらく公生はモノクロな世界から
抜け出す事が出来なかっただろう。
それはかをりも同じで
公生と出会っていなければ
入退院を繰り返し
体の弱かった彼女は走り出す事が出来ないまま
後悔を天国に持ち込んだかもしれない。

かをりがその場にいない時は
「宮園さん」と呼ぶ公生

公生がその場にいない時は
「有馬くん」と呼ぶかをり

目の前にいる時は"君"と呼び合い
お互いの人生をカラフルに色付け合っていった二人。

14歳とあまりにも短い生涯であったが
思い出の詰まった手紙と
有馬 公生を想い続けた一枚の写真
それこそ宮園 かをりという一人の少女が
確かに生きていた証なのだから・・・。

■あとがき■
最終回でメインヒロインが亡くなってしまう
悲しい結末を迎え
終り方に賛否が分かれそうなところだが
全体を通して高水準を保っていた全22話でした。

何だかんだ言ってラストでは
かをりに生きていて欲しいと願っていたので
亡くなってしまったと分かった時は
胸が締めつけられる思いだったね。

特に最終話の
公生へ宛てた手紙を読む場面で
間もなく生涯を閉じるであろうその時
どういった心持ちで想いを綴っていたのか?
かをりの姿を想像すると
もう涙が止まらなかったです。

彼女が伝えたかった淡い恋心が
最後の最後で公生に届いて本当に良かった。

結末は悲しいの一言だけれど
再び自らに閉じこもらず
前を向く公生を観れたのと
タイトルの意味も知れたので
これ以上にない最終回でした。

アニメを観ながら漫画版も平行して読んでみましたが
公生とかをりは「ヴァイオリン」と呼ぶのに対し
椿と渡は「バイオリン」と呼ぶなど
音楽への根本的な捉え方が異なる描写が有り
漫画ならではの良さを感じる事が出来て楽しめたよ。

しかし 今作品については
アニメ版がもっとも適していたかな。
音楽を扱う作品である以上
視覚に加えて"聴覚"へも訴えかけてくれるので
漫画版も同じくらい面白いが
アニメならではといった作品に
昇華されていた気がします。

またDVDやBDの第1巻売り上げが
約1万2千枚と好調なので
作品は完結してしまったけれど
武士や絵見のスピンオフ等を
違う形でも観れたら良いな。

前向きな雰囲気で幕を閉じたとは言え
やはり悲しい結末でしたので
お気に入りとはならなかったですが
心に響く素晴らしい作品でした。

満足度 ★★★★★★★★☆☆ (8)

投稿 : 2015/03/22
閲覧 : 514
サンキュー:

77

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