ossan_2014 さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.5
作画 : 3.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.0
キャラ : 4.5
状態:今観てる
笑え、高らかに
笑う門には福来る、というが、笑いについて、特に苦境にある時こそ笑いを意識する事を勧める箴言、格言は多い。
人間性にとって、笑いというものが大きく影響するものだと、遠い昔から経験的に語りつがれてきた。
精神医学の基準書としてDSMを発行するアメリカ精神医学会だが、そのアメリカで大きく発展し影響力を拡大する行動主義心理学、認知心理学においては、人間性はむしろ解体され、人間の精神は、ある種の自動反応機械のようなものとして取り扱われるように見える。
このような人間観から追及される心理学に依拠する精神医学の現場では、心理分析のような患者個人の精神性に関わっていく治療法は後退し、認知療法のような、自動機械に適切な反応を引き出すように入力するような、精神性から切り離された方法が増えてゆく。
また大脳生理学の発展は精神状態を脳内物質の分泌に還元し、投薬によりこれコントロールすることで、精神の治療を唯物的な化学反応の連鎖へと変換した。
患者の苦痛を救うという点のみを追及する精神医療の現場で、治療行為において、心や精神というものの実在を否定するかのような趨勢は、人間から人間性を抹消していくような印象を受ける。
心理という人間固有とみなされる領域から、人間性というものが消去されていくような学的な流れの中、「笑い」という人間性の発露ともいえる領域で精神医学を語ろうとする本作は、精神医を原作者とするゆえに生まれた果敢な挑戦であろう。
過剰に詰め込まれたギャグ、殊に、炸裂する「シモネタ」という人間性に深く訴えるギャグは、精神科医である原作者による、精神性の消滅という心理学の主流と人間性の間にある巨大な亀裂に対する洞察の表れかもしれない。
………というような適当な屁理屈を無理やりこじつけて視聴すると、頻発するシモネタもなんだか奥深く見えてきて面白いと思うのだがどうだろう(笑)