蒼い✨️ さんの感想・評価
4.8
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
ヤックデカルチャー。
【概要】
アニメーション制作:竜の子プロダクション
1984年7月21日に公開された115分間の劇場版作品。
監督は石黒昇、河森正治。
【あらすじ】
西暦2009年2月。
人類初の超大型宇宙移民船マクロス進宙式の日。
突如出現した謎の宇宙艦隊の攻撃により地球は壊滅的ダメージを受けた。
地球を襲った異星人とは、男のゼントラーディと女のメルトランディの巨人族であり、
この二大勢力が50万年も宇宙戦争を続けている。ゼントラーディ艦隊の奇襲を受けて、
避難民5万数千人を乗せたマクロス艦はフォールド航法で緊急脱出を試みるも、
システムが想定通りに作動せずに冥王星軌道上へと跳ばされてしまう。
そのフォールド事故から5ヶ月後。
マクロスが地球への帰還の途中、土星の衛星タイタン付近の航行から物語は始まる。
ゼントラーディ軍のブリタイ艦隊の司令部は、捕獲した地球の物体に驚いていた。
特に、音波信号と異星人が呼ぶものを聴いて戦闘不能になる兵士が続出との報告。
その音波信号とは地球人類が歌と呼ぶものであり、
マクロス艦内でデビューして人気歌手となった少女、リン・ミンメイの歌声が、
戦うこと以外に何も知らないゼントラーディ軍の兵士に未知の感情を芽生えさせ、
その恐怖や戸惑いが戦闘不能に陥らせる大きな衝撃になっていた。
そのミンメイのコンサートの当日、ゼントラーディ軍の襲撃を受けて、
マクロスは要塞型から強攻型に変形(トランス・フォーメーション)
して戦うことになりコンサートは中断。
可変戦闘機バルキリー隊を指揮する隊長のロイ・フォッカー少佐と、
部下の一条輝、マクシミリアン・ジーナス、柿崎速雄がゼントラーディのパワードスーツに応戦。
戦闘中にマクロス艦内にゼントラーディ軍の一部が侵入。
輝は、敵戦艦の迎撃との上官の早瀬未沙の命令に逆らってマクロス艦内のゼントラーディ軍を追う。
艦内の市街地で敵機を倒してミンメイを救った輝であったが、重力制御システムが損傷。
閉鎖されたエンジン・ブロック区画に閉じこめられたふたり。
バルキリーも壊れて動かなくなってしまい、外部に連絡も出来ない状態。
新人パイロットの一条輝とスーパーアイドルのリン・ミンメイ。
若い男女がこの状況でお互いに特別な感情を抱くのには無理も無かった。
【感想】
エンディングロールのキャストクレジットの先頭が、「リン・ミンメイ 飯島真理」
となっているように、歌姫ミンメイを主役に再構成された劇場アニメ。
なので、アイドルPV的なアニメーションのシーンが多数あります。
また、三角関係の変遷の流れがTV版よりもミンメイに感情移入出来るように変更されていますね。
メカのデザインだけなくTV版で演出家としても評価された河森正治氏が抜擢されて、
TV版から続投の石黒昇氏と共同で監督を務めています。
もともと、TV版時点でストーリーの原案を作っていたのが河森氏であり、
『歌で戦争が終わるわけ無いだろ!』とスタッフから散々ツッコミを入れられながらも説得をして、
マクロスの実質的な最終回の第27話「愛は流れる」のコンテを作ったのが凄い。
石黒監督はじめ多くのスタッフに助けられてることも忘れてはいけませんが。
年齢がごく近い、板野一郎氏、美樹本晴彦氏、庵野秀明氏らアニメーターに恵まれていたと、
河森氏本人が述べてるのに加えて平野俊弘氏、垣野内成美氏、木上益治氏や結城信輝氏など、
自分でも名前を知ってるアニメーターが全員凄い。知らないアニメーターも多分凄いメンバーで、
河森監督も自分でセル画のメカの大部分のレタッチをする熱の入れようでして、
本人のインタビューを読むとむちゃくちゃ面白い。
美樹本晴彦氏を中心に一級のアニメーターによって版権絵レベルで描かれていたのが、
ただ美しいだけではなくて、登場人物の感情のニュアンスを大切にした細やかな動きの人物作画。
記号的な表現を避けて感情豊かに描かれていて、特にリン・ミンメイや早瀬未沙らヒロインの表情が、
スクリーンの中に素晴らしい女優が出現したかのよう。
台詞でくどくど状況を説明するのではなくて最高のクオリティで作られた芝居のアニメーションと、
飯島真理氏の歌で、観る者の心を動かす。
また、メカの動きも空気抵抗や真空などの小さいところまで手を抜かずにこだわったり、
宇宙戦艦マクロスの描き込みのディティールや有名な板野サーカスの素晴らしさは勿論、
宇宙空間戦闘での色の表現は今のアニメでは再現が難しいと思えるものがあり、
(セル画を何重にも重ねて撮影したら偶然なったとか)
この劇場作品のアニメーションのクオリティはオンリーワンであると思いますね。
(近年のアニメでも神作画と言って差し支えない作品があり、それぞれに魅力がありますが)
スタッフがアニメを作るのが好きなのと、若さ(河森監督は当時24歳)で突っ走ってた時代。
スケジュール的に全力を出せる機会が限られていたTV版のリベンジで劇場の大画面を意識して、
キャラデザやマクロス艦内の設定を観客の視線を意識して全面的に作り直した、
その異常なまでの描き込みの密度は、
日本のセル画アニメでは歴代最強であると自分では思っています。
そうやって出来た作品を見た当時のアニメファンの熱狂は、
レジェンドと呼ぶに相応しいものでしょう。
ストーリーの深さやテーマ性という点ではTV版に軍配が上がりますが、
アニメは観て聴いて楽しむものという角度から作られた劇場版もまた素晴らしい。
劇中歌「愛・おぼえていますか」をミンメイが歌いながらの、
クライマックスの7分間の戦闘シーンを観るに、
これは間違いなく昭和のアニメの最高峰のひとつとして殿堂入りの作品であると思いました。
これにて、感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。