leojojo さんの感想・評価
3.9
物語 : 2.5
作画 : 5.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
天才の恐ろしさ
確かに涙が出そうなほど感動したシーンもあった。そして、宮﨑駿の得意な、空飛ぶモノたちには心が踊った {netabare}(特にカプローニさんの飛行機達にはポニョのカンブリア紀の生物たちや、ラピュタで見た飛行船と同じような面白い格好良さがあった) {/netabare}。だが正直、ゾッとしたシーンの方が印象に残っている。
飛行機が壊れたシーンが幾つかあるが、その時の堀越の表情が興味深いので、注意して見て欲しい。{netabare}彼は「美しくない」飛行機には何の興味も抱かないのだ。スポットライトに照らされる、回収された七試艦上戦闘機を一瞥し、くるっと立ち去るあのシーンには背筋が凍った。設計に対する情熱とあまりに対照的だ。物語の最後の「飛行機の墓場」も仮にも戦争についての映画としておかしい。なんとこの物語、一回もも「人間が死ぬ場面」がないのだ。彼は美しい飛行機が破壊に使われ、そして壊れていくのが悲しかったのだ。天才故の考え方ではないだろうか。{/netabare}彼を愛し支えた女性が、そんな堀越の性格をよく理解していることが、物語の後半で分かる。それは、あまりにも悲劇的なのだ。{netabare}「美しいところだけを好きな人に見てもらったのね」というのは、即ち綺麗だから本当に心の底から愛されていることを悟った美穂子は、愛されたまま死を迎えようとしたのだ。{/netabare}色々な意味で、美しい映画だ。