アニオタ熊 さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
今更見たが
改めて、宮崎さんが引退してしまったのは悲しい。
久石譲との共演が二度と見れなのもさらに悲しい。
すさまじく精緻な世界観と、物語を貫く観客への問いかけ、ストーリーに完璧に寄り添うようにして展開していくBGM、そして何よりも美しすぎる作画。
全てが余りにも愛おしく、観終わった後はしばらくその想像上でありながら現実を凌駕するほどにリアルな世界に自分はどうあがいてもたどり着けないことにたまらなく胸を痛めていた。
しかし、{netabare}あの世界はただ美しいだけの世界ではない。
そこでも人は殺し合い、醜く争い、世界を食いつぶそうとし始めている。
主人公は飛行機とは美しい夢だと言う。だが、同時に自らの加担する技術の進歩が悲しみや憎しみを生み出すことも理解しているように思える。
それでもなお夢を追いかける主人公に、あくなき欲望を満たそうとし続ける人類を重ね、人類に絶望しようとするも、主人公の優しさやその妻菜穂子との間の深い愛情が丁寧に描かれることで人類の人間的側面も意識させられ、そんな簡単な結論は許されず、苦悩し続けるしか道はないのだと諭される。
同時に、カプローニ伯爵の「創造的人生は10年」という言葉からは、人には時間が有限にしかなく、故に精一杯悩み、自分のなすべき目標を定め、それに向かっていくしかないのだというメッセージが読み取れるよう思う。{/netabare}
私がこの作品を観て、私なりに受け取ったメッセージはつまり、人は考え続けるべきだということ。
過ちを繰り返し、そのたびに学ばず、再び次の過ちへと向かい続けるも、それでも足掻き続ければ、いつか人は過たぬ道へとたどり着くことができるかもしれない。この作品からはそんな希望とも絶望ともつかない啓示のようなものを受け取ったように思う。