しゅんこう さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
時間をおいてみるとじんわりと感じるアニメ
汚染された旧首都で人命救助を行う少女たちの物語です。
時代の巡り遇わせとはこういうことを言うのかなと、一見しただけで判る重いテーマ、放送延期や制作上の障害が多かったであろう本作品に、心折れず最後まで真摯に制作に取り組んだと思われるスタッフさんたちに頭が下がる思いを感じました。
以下、また長めの感想です。
気になった方はご覧ください。
{netabare}
わかりやすい萌えやラブコメ設定、奇抜な展開や派手なアクションなどほぼない作品なので、最近流行のアニメからはかなり遠い位置に存在していることは間違いないでしょう。当然、売れ行きは察しの通りのアニメですが、私としてはもう少し評価されてもいいのではと思います。
とは言え、素人の私が見ても判るくらい、近距離で遮蔽物もないのに棒立ちしてる銃撃戦の場面や汚染された地域での活動にしてはずいぶんゆるいセキュリティーなど作画表現で設定考証が甘く、多くの人が不合理性やリアリティの欠如、違和感を感じるのは仕方が無いことです。作画や物語の整合性や演出・表現に注目が集まる「魅せる」アニメにこだわっている場合はがっかりするでしょう。
アニメも商売ですので利益を上げなくては話にならないのも事実です。慈善事業じゃないのですから。ですがそんな「売れる」アニメばっかりになってしまってもやはりつまらないと感じます。日本のアニメが世界に築いてきた複雑性というブランドが、「売れる」という理由だけで中二バトルや肌色アニメばかりに偏ってしまっては形無しになってしまいます。
もちろん私も中二バトルや肌色シーンも大好きなんですが、それと同じように他の価値観のアニメも広く受け入れられるような、豊かなアニメ社会が来て欲しいと願っています。(残酷表現のみを売りにするのは困りますが)個人の趣味嗜好との線引きもあるので非常にデリケートな問題なのは間違いないのですが、こういうオープンエンド的に何かを読み手に「伝える」ことに一生懸命なアニメもそれなりに評価されてもよいのでは?と思っています。演出や話題性の強い表現ばかりに気をとられがちな私たち視聴者にとって、とても強い問題提起をこのアニメから感じるようになりました。
今のところ、そんな心配は無いくらい多様なアニメが作られていますが、似たようなことはテレビの世界で起こっています。わかりやすいというかワンパターンであまりにも窮屈になってしまって、テレビ離れが進んだと何かとささやかれてニュースになっている現在、アニメ業界もこうならないで欲しいなと考えてしまいました。
毎度のことですがかなり脱線してしまいました。この作品の評価できる点は、誰もが避けそうなところをテーマに取り上げて制作されたことですが、作中の作画も設定考証はともかく、厳しい制作環境にもかかわらず、感動に必要なカットは最低限描かれており、背景や3DCGの部分もよいところはたくさんありました。
もう1つ特筆すべきは、登場人物たちが話すセリフの内容がとても的確でよかったです。ロボットが発する「外に出たことが無い」など観念的な問いかけや技術者だった男の「誰もが見て見ぬ振りをしってそのツケが招いた事故だったんだ」という厳しい社会批判を含むセリフ、敵側の人物たちからも「いつの世も地獄に取り残されるのは貧しく勇敢な者たちばかりだ。そのような尊き犠牲の上に成り立つ未来などいらぬ」、「どうしてこんなに痛いのに死ねないんだ」「もう痛みなんて感じない」など弱者たちの悲しい叫びがセリフになっています。
ものすごい速さで消費されるアニメのスピード社会に生きている私たちですが、時間が経ったときにまた見直してみたいと思わせるアニメでした。
~ {/netabare}