ossan_2014 さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
背景と世界
原作は同名のライトノベル。
遊園地という「職場」で、主人公たち若者の青春ドラマと、「職業人としてのオッサン」たちのドラマが交錯する原作小説に対し、TVアニメとしてビジネス要素とオッサン要素をバッサリ切り捨てて、爽やかにまとめてきた印象。
その方向性を象徴するオープニングは、アニメ特有の鮮やかな色遣いと相まって、ショウ・ビジネスの華やかな面を思うさま表現している。
一見して作画が綺麗であることに目が行くが、特に感心したのは美術設定に非常な力がそそがれているところ。
「倒産寸前で設備の補修もままならない」、「従業員の意識が荒廃している」状況から「希望を見出し活気が復活する」状況まで、活字メディアであれば数ページを費やして描写される「背景」を、「背景画」という1枚の絵として文字通り一目瞭然に提示する描写力は、映像化の一つのお手本のようだ。
特に感心したのは、ラティファの居室の表現で、調度品も茶器も、いかにも王族の別邸にふさわしい高級品に見せている事だ。
かつてのアニメでは、上場企業のパーティーであっても、学生食堂の合コンにしか見えない描写が普通であったことを思うと隔世の感があるが、現在でもこれに似た描写で済ませているアニメが散見されているところを見ると、時代性ではなく、一つの世界をどれだけ突き詰めて構築するかという、製作者の意識の問題かもしれない。
賃貸マンションのモデル・ルームのような「お城」で「お姫様」の口から魔法の話が飛び出したのでは、「物語」の中に入り込んで楽しむことは難しかっただろう。
最後に、美術設定で一番印象深かったのは、実は、いすずの部屋の風呂だった。
昔々、賃貸住宅では風呂がないことが多く、銭湯に通うのが一般的だったのだが、風呂付の物件が増え始めたころ、あのような、風呂なしアパートに後から持ち込める風呂が存在していたのだ。
あの頃の商品とは少し形状が違うので、製作者があれを再現していたわけではなく、アニメ的なギャグっぽい設定のつもりだったのだろうとは思うが、ちょっと懐かしい気がした(笑)。