朝霧麻衣 さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
空戦と恋の物語
はじめに、原作を読んだ上でも十分に楽しめる作品だと言うことを先に書いておきます。原作には無いこの映画特有の良さがたくさんありました。
この作品の世界では「神聖レヴァーム皇国」と「帝政天ツ上」と呼ばれる国同士で戦争を行っています。二国間の戦争のさなか、二国間のハーフとして生まれた主人公「狩乃シャルル」はどこへ行っても迫害を受けるが、「飛空機」の操縦だけは他に類を見ない才能を持っていた。そんな彼の腕を見込んで軍の上層部からある任務が言い渡された。レヴァーム皇国で次期皇妃となられるお姫様「ファナ・デル・モラル」をその王子のもとへ引き渡したいとのことだった。1万2千キロ先の目的地まで姫様を乗せての旅が始まります。
まずこの作品、細かい世界設定や時代背景のようなものは極力省いて主人公の境遇にスポットを置いているので、ストーリーのテンポが良かったです。それでいて原作を読んでいなくても理解できる程度に分かりやすく作られていたので良かったと思います。加えて主人公視点でほとんどストーリーが進んでいくのもとても新鮮でした。
この作品の一番よかった所は、主人公とお姫様との距離感の変化を表現する描写だったと思います。身分違いの恋 {netabare}(この作品だと恋とまでは言わないのか?){/netabare}
はやはり王道ではありますが、王道だけに先の展開が気になる部分でもありました。主人公自身、旅を続けていくうちに芽生えてくる葛藤や背中からにじみ出てくるようなつらさが良く伝わってきました。先述した主人公の境遇を重点的に描写していた部分もここによく生きていたと感じました。二人の感情を表現する上で一瞬光が差し込んだりと演出も良く考えられていたと思います。それらを踏まえたうえでのラストシーンは主人公の無言の主張に胸が熱くなりました!脚本素晴らしかったです。
戦闘機による空戦もとても迫力ありました。激しい銃撃をかいくぐる場面や戦闘員の死を覚悟した瞬間などの緊迫した雰囲気がとても良く出ていました。戦闘機を操縦するパイロットが敵を必死に見つけようと周りを見る仕草や内装の計器の動きなどにかなりのこだわりを感じました。体に掛かる強烈なGに負けじと操縦かんを握る感じの表現が素晴らしく、とても必死さが伝わってきます。
夜間に潜伏したときにふと見える綺麗な夕焼けや海などの背景、とても作画が綺麗でした。見る見るうちに変わる場面で映し出される景色のクオリティは圧巻でした。
以上書いたように作画・演出・脚本共によく考えられていてとても素晴らしい作品なのですが、どうしても声優さんの技量不足な感が否めないです。あにこれ内で評価が低いのもここに起因するものだと思われます。ホントそこだけがもったいないと思いました。
あとお姫様が原作読んでてイメージとは少し違いましたが、これはこれでありだったかなと思います。
この作品は戦闘シーンも素晴らしいですが、メインは二人の人間ドラマだと思ってます。声優さんが気にはなりますが、純粋に二人の旅を見守るような形で見ていただけたらなと思います。