無心 さんの感想・評価
4.7
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
たとえーーたとえ幾千幾万の兄があり、その愛情全てを寄せ集めたとしても、俺1人のこの愛にはとうてい……
私は常々こんな作品を求めていた‼︎
これがあにこれで200位…だと?
もっと評価されてもいいんじゃ…。
まぁいい。言うほどマイナーでもないだろうが、『知る人ぞ知る』でいい。
アニメを観るようになり、まだ日も浅い自分だが、これは稀にみる名作だと思う。
いやいやいや、お前たいしてアニメ知らねーじゃんとか言う突っ込みはさておき、真面目にレビューをします。
妹を何者かに殺された兄、恋人を何者かに殺された少年が、彼女の死の真相を探り、復讐を遂げるために立ち上がる。
同じ頃?1人の魔法使いの姫君がとある陰謀に巻き込まれ無人島に流される。
前半は姫君と敵対する鎖部家の面々との心理戦、バトル。後半は殺された少女の謎が明らかになるラブコメという形で、全く様相の異なる構成になっている。
ファンタジー色はやや強いものの、よく練られているという感じ。個々のキャラクターの言動にも無理がなく、感情移入がしやすいのも好印象。
作中でシェイクスピアのハムレットとテンペストの台詞が引用されているが、テンペストは『誰もが幸せになれる物語』らしい。なるほど、最後は綺麗にまとまっていて、一応はハッピーな形で幕を閉じている。
でも自分は終わってから丸一日ふさぎ込み、誰とも会えずついには寝込んだ。全然ハッピーじゃなかった。だって…愛花が…‼︎
【 名シーン 】
とりあえず1番最初に「おぉっ‼︎」ってなったのは8話『魔女を断つ、時間』でしょうか。
「おい…マジかよ…」ってなりました。ここから最終話までノンストップでしたね。詳細は割愛します。
次にきたのは16話『徘徊する亡霊』でしょうか。
故郷の村に帰ってきた一行。
村の子供達に幽霊の噂を流し、危ない場所へ近づけさせないようにしていたが、
身内を亡くした女の子が神社で誘拐されてしまう。
「なぜ神社に近づいたのだ。噂を流していたのに。」という葉風に対し、
「知っていたから来たのかも。分かるような気がします。」と吉野は答える。
「去っていった人に霊でもいいから会いたい。そんな気持ちも否定しますか。たとえば私の霊ならどうですか。」
そんな愛花の言葉を思い出し
「たとえ幽霊だろうと、会いたくてここへ来たんだ。」
と、村の子と自分の心情を重ねる。
彼女を失ってから、彼女からのメールや写真を何度も何度も見返していた吉野。たとえ実態がなくても。幽霊の姿であったとしても。それでもいいからもう一度、一目でも会いたいと思う。
吉野は本当に彼女のことが好きだったんだね。男だから、真広や周りには悟られないようにずっと抑えていたんだね。
盛り上がりの中でいかにもな音楽を流したり、彼女の名前を叫び号泣するなど、視聴者に感動の押し売りをしないところも良かった。心に残るシーンだった。
序盤は真広かっこいー♡と思って観ていたが、回を重ねる毎に吉野に傾いてしまった自分にとって、愛花との過去回想は心が痛くて、ほんのり甘い、すごく切ない。もう自分は愛花が妖艶過ぎて生きるのが辛い。だってもう取り戻せないのだから。
もう1人のヒロイン、葉風も良かった。ラストは吉野にとっても彼女にとってもベストに収まっていた。
葉風より愛花が好きな自分にとっては、吉野は愛花を忘れることはないだろうと思いたい。彼女の死を思い出にするでもなく、乗り越えるでもなく、抱えながら生きていくのだろうと、そう思いたい。
これ、めちゃくちゃ傑作だと個人的には思います。『知る人ぞ知る』では勿体無い気が…します。ぜひ未視聴の方は観てみて下さい。