kids さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
すごく残酷だが描きたいものは明白
ゲーム原作の恋愛モノです。衝撃的な結末で有名になった作品で性的描写も結構あるので少し覚悟して視聴しましょう。
★ストーリーについて
ストーリーの中心は主人公の伊藤誠とヒロインの桂言葉、西園寺世界の三角関係を中心とした愛憎劇です。最初はただの恋愛だけではと思わせる内容なのですが、どんどん歯車が狂っていきとんでもない結末へと突っ走っていきます。この内容を許容するかどうかは人それぞれですが、「この残酷な結末を描きたかった」という制作側の意思は明白に伝わってくるものでした。どのような形であれ、明白な意思を持って作った作品は人の心を揺さぶるということがよく分かる作品だと言えるのではないでしょうか。
★登場人物について(以下視聴済み推奨)
あなたはこの作品のどのキャラクターが好きになりましたか?
どのキャラクターに共感しましたか?
面白いことにこの作品は視聴者のキャラの好みが分かれる作品だと言えます。そしてその好みがその人の考え方を象徴しているように思えるのです。とにかく掘り下げて考えてみましょう。
伊藤誠 ~だらしない最低男代表(?)~
とにかく女にだらしなく節操のない最低男だとよく言われます。{netabare}片思いの言葉と付き合ったと思ったら世界になびき、挙句の果てに見境なく女と肉体関係を結ぶようになる{/netabare}なんてあってはならないことです。そのだらしなさに目が行きがちですが、僕が気になったのは彼の主体性のなさでした。
{netabare}言葉にアプローチしたのも世界のバックアップがなかったら何も起きなかっただろうし、世界になびいたのもきっかけは世界の方から誘惑してきたことでした。その三角関係の中で壊れきってからは目の前の肉欲・愛欲に溺れてどんどん転げ落ちていくだけで状況は悪化していきました。{/netabare}
目の前の出来事になんとなく流されるだけで自制心もなかったというのが彼の本質なのではないかと思います。そう考えると似たような人はどこにでもいるし、少し壊れれば誰だってこうなる可能性があると思います。そういう意味でリアリティのあるキャラだと思いました。
桂言葉 ~一途なヤンデレ乙女~
誠のことを一途に思う姿が作品を通して貫かれ、好感の持てるキャラだと言われていているのもあり、一般的な人気も圧倒的に言葉ファンが多いらしいです。{netabare}最初は誠とカップルとなれたものの、誠のだらしなさの「被害者」となり、精神崩壊までしてしまうかわいそうなキャラ{/netabare}として描かれているので、それも当然かもしれません。(あとあの爆弾的なスタイルも影響してるのかな?)
しかし待ってください。本当にそんなに良い子でしたか?好みもあるとは思いますが僕にとっては言葉が一番好感度の低いキャラだったりします。
彼女の魅力は好きな人を一途に想いつづけるところにあると思います。それでうまくいっていれば問題はないのです。しかし今回はめんどくさいだけの重たい女になり下がってしまいました。その結果彼女の欠点もはっきりと露呈して状況も悪化することになります。
{netabare}彼女は誠との関係がギクシャクし始めた時に「誠くんを信じてる」「誠くんなら大丈夫」といって思考停止してしまいました。さらに言えば彼女の「愛情」というのはそもそも相手のことを観ておらず自分のしたいことを相手に半ば押し付けていただけではないでしょうか。結局関係が事実上破綻した時には精神崩壊をおこし心を閉ざしてしまいます。{/netabare}
まとめると自分しか観ておらず、都合の悪いことは見ないふりをするという、自分勝手な幼い姿が彼女の本質なのではないかと僕は感じました。
(もちろん性格のこともあるし、誠と分かり合おうとしなかったわけではないので弁解の余地もあるとは思っています)
西園寺世界 ~活発な狂言回し~
僕は彼女が一押しです。良くも悪くもほとんどあらゆる意味で言葉とは対局にあるキャラクターだと思います。{netabare}序盤は誠と言葉の関係をアシストすることを心がけていましたが、徐々に自分の気持ちを抑えられなくなってしまい、物語を混沌とさせてしまう役割を担うこととなりました。{/netabare}
僕が彼女を押すのには主に2つの理由があります。
まず行動力があり、主体性をもって行動していたという点です。本人の活発で明るい性格の影響もあるんだとは思いますが、自分で考えて物語を最も動かそうとしたのは彼女だと思います。そういう動ける人は現実には意外といないものです。
次に周りの人々のことが比較的見えていて、一人よがりにあまりならなかった点です。この視野が無ければ{netabare}最初のアシスト{/netabare}等は起き得なかったと思います。
ただ、彼女の場合は、自分の欲望を殺すという「自己」を貫けなかったことが致命的でした。その結果本人もバランスを見失い、物語は壊れていくわけです。ただ、周りに気を配り行動した結果自分自身が疲弊してしまうというのはありがちなことだと思いますし、個人的にはとても共感できるキャラだと思いました。
とまあメインキャラクターを掘り下げてみましたが、誤解しないでほしいのはどのキャラクターも決して悪いキャラではないということです。関係がこじれることがなかったら、どのキャラも問題なく普通に高校生活を送れたはずのキャラクターであることは忘れないでおきましょう。
★最後に
声高におすすめできる内容ではありませんが、個人的には割りと好きな作品だったりします。OPが本編に反して結構明るかったり、EDが毎回違う曲だったりと音楽の方も悪くなかったと思います。衝撃の展開を覚悟して観れるかたはぜひ一度御覧ください。