しゅんこう さんの感想・評価
3.1
物語 : 1.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
貧困と差別と少女たちと僕らの。
前半までの流れは素晴らしかったと思います。多少、強引なところもあったような気もしますが、主人公や少女たちの苦悩、貧困・差別といった背景がよい担保になって、本来は理解されにくいジャンルにたくさんの人が引き込まれるようにできていると思いました。登場する少女もかわいらしくて魅力的なキャラばかりでとてもよかったです。
しかし、残酷シーンが多くて困ります。残酷シーンを入れるとアニメとしてハードルが上がるのは間違いないのにそれでもことあるごとにぶち込んできますね。細やかな心理描写や物語があってこその演出ツールだと思うのですが。不条理や不合理な点も第二期がないのでこのままではなんとも言えない作りで残念です。
以下は雑談と感想を。
話を読むのが好きな人だけご覧ください。
{netabare}
あくまで前半部分だけの話ですが、他の作品と違い、この作品のとてもすばらしたっかた点は、最近のアニメの中ではかなり直接的に貧困と差別の問題を少女たちの中に取り入れて表現したことです。
そのまま最後まで描いていてくれたら名作になっていたかもしれないと思いますが、残念ながら普通のバトルものになってしまいました。そんな重いテーマだけじゃアニメにならないので無理もないのです。
貧困と差別ほど身近で普遍的なテーマはないと思います。愛や復讐も魅力的なテーマですが、対象に選びにくさがなく、かつ日常生活で向けられる感情がもっとも多いのは貧困と差別です。
この作品では人間の敵である生物の遺伝子をもって生まれてくる少女たちにたびたび肉体的・精神的な暴力が行われている様子を描いています。
少女たちによって自分たちの命が救われているにもかかわらず、未知の生物に対する恐怖心、自分たちが受けた悲しみや憎しみを彼女たちにぶつけているわけです。なんとみっともない。
でも常識的であろうとするほど、周囲からの足並みから外れる恐怖は誰にでもあり、自分が標的になりたくない、目立ちたくないという理由で本来手を差し伸べなくてはならない場面で行動できない人間の一面も十分に想像できます。
単に攻撃的な人が多いだけなのかもしれないですが、それはそれで悲しいです。自分ならそんな攻撃はしないで目と耳を塞ぎ静かに生きていきます。
彼女たちを守らない点ではどれも同じで最低な解答ですが。
こんなふうに多くの人がもう精神的な貧困状態にあるわけです。
差別の根っこもこの中にあるような気がします。
人類共通の敵がいながらも、まだ身内同士で争いや差別を続けるこの作品の人間たちの姿は貧困や差別のもつ根深さを表し、1度始まった負のループを断ち切るのは容易ではないという現実が暗示されています。
そんな絶望的で悲しい状態に置かれているのにもかかわらず、懸命に生きようとする少女たちの姿が激しく心を打ち付けます。
もし第二期があるとしたら、この少女たちがもっと楽しそうに過ごす姿や
苦しみから救われる姿をぜひ見てみたいです。
{/netabare}