aaa6841 さんの感想・評価
2.8
物語 : 1.5
作画 : 3.5
声優 : 3.0
音楽 : 4.0
キャラ : 2.0
状態:観終わった
酷評
おなじみの学園モノ、おなじみのハーレム、実は昔会ってましたとかいうおなじみの幼なじみ。
主要キャラの全てが記憶障害を患っているという斬新な設定に、錠と鍵という重要っぽいアイテムが存在するものの、肝心の内容はといえば、知り合ったばかりの2人が恋人のフリをしなければならなくなったとかいう昭和風味のラブコメディ。
だが、キャラを中心にそれなりに楽しく視聴することができた。
19話を見るまでは。
18話終盤にて、日が沈んだ海辺の少し離れた場所で二人が線香花火に興じていたところ、突然発情しだした千棘が言った、「私たちが本当に恋人だったら上手くいってたと思う?」という質問に対して、楽がそれを否定したところから千棘の態度が豹変する。
そして19話、千棘の態度はとにかく悪いほうへ向かう。
楽が何を話しかけても熱も関心もない声を返すだけで、歩み寄ろうとしても拒絶するばかりで、挙句の果てには今までの交流すら欺瞞だったと否定する始末。
さすがにあそこまで態度が豹変し、徹底的に楽を足蹴にするくらいなのだから、それはそれは複雑な悩みや葛藤を抱えた結果、泣く泣くあんな態度を取らざるを得なくなったみたいな理由があるのかと思いきや、「恋しちゃったからこんな態度になっちゃいました」とかいう真相。
要するに、今までにもあった「何でこんなイライラしてるの私」みたいな心情の延長にある程度のものなわけで、それは決して自分の気持ちを自覚して、考えて、理解して、答えを出して、決意した結果あの態度になったわけではなく、「何となくイライラしたのでこんなことになっちゃいました」の域を出ていない。
しかもこの場合、自分の本心を言い放っているのではなく、真意から逸れたところで悪態をついているのだから更に悪質である。
要するに、こんな冷たい態度をとっている理由をお前自身が考え、私の心情を汲みとり、私が納得のいく様に振る舞えと暗に示しているわけだ。
傲慢すぎて気持ちが悪い。
とは言え、人間関係や男女関係において、つい、いらぬことを口に出してしまったり、我を忘れて怒り昂ったりしてしまうときがあることは理解できる。
なので、ここまでであれば、素直に謝れば許せるレベルだったかもしれない。
しかし、楽が千棘に劇の出演を頼む場面にて、公衆の面前で顔面ビンタまで食らわせた相手が向こうから歩み寄ってきたというのに、この期に及んでまだグチグチと言い出す始末。
ほとんど一方的かつ真面目に楽が和解を訴えた結果、じゃあ許してやるかみたいな態度で終わる。
今まで通りの「何でこんなイライラしてるの私」の延長でしかないわけだから和解するときもヘラヘラしてやがるのだ。
ついでに言っておくと、楽は楽で、真面目だけど内容は馬鹿という残念なことになっている。
演技の練習を全くしていないどころか、文化祭の手伝いすらしている気配がない人間を、「お前にしか出来ないんだ」の一点張りで主役を任せようとする頭の悪さと、人望のなさと、視野狭窄。
それに対して千棘は、目前に迫った劇のことよりも、海辺で言った好きだ嫌いだを問い詰めることほうが重要らしい。
なるほど確かにこの2人なら釣り合いのとれたお似合いのカップルだ。
もうこの時点で反吐が噴射しそうなくらい気持ち悪かったのだが、まだまだこの物語は終わってくれない。
みんなで頑張った劇を中止にしたくないと言った小野寺。
それを聞いて、中止にはさせないと決意した楽。
そんな件を見せられた後に始まった劇の中身はというと、一度も練習に参加していない輩を主役にし、それをごまかすように劇の内容を滅茶苦茶に改変し、本来の代役であった体調不良で療養中であるはずの万里花が何故か登場し、完全部外者のクロードが乱入出演し、セットを破壊した上、出演者が下敷きになるものの観客は拍手喝采、劇は大成功。
もうそんなんでいいなら、怪我人の小野寺が出演できない理由が全くないだろう。
何なら足の怪我もメタパワーで治せよ。
もちろん「ラブコメ」なのだから面白おかしな展開になることは重々承知している。
が、それならば、「あんなに皆頑張ってたのに」とか、「みんなでつくりあげたものを自分の怪我で台無しにしてしまうのは申し訳ない」とか、「そんな彼女を見てどうしてもやらせてあげたいと思った」みたいなシーンを描写するなと言いたい。
もし、それを描いたならば、せめてそれに関する事項だけは出来る限り真面目にやれと思うのだが、その後の展開は何もかもおちゃらけて、ぞんざいで、お粗末だった。
どこまでも人の心情を馬鹿にしたアニメなのだなと痛感した。
万引き犯に、ものづくりの精神を力説されたような気分になった。
その上で、何もかも不自然にねじ曲げてつくりあげたコメディ(劇)が、全話を通じて最低辺レベルの出来だったのでパーフェクトに救いようがない。
普段ならどんなクソアニメを見ても苦笑くらいは出来るのに、それすら出てこなかった。
真顔のまま、脳内で数字でも数えて現実逃避するくらいしかできなかった。
そして最後に、千棘が笑顔で「もちろん大嫌いよ」と言う場面。
正直この辺になってくると、もう画面から微妙に目を逸らしながら見ていたのだが、このシーンを見て確信した。
結局これを言わせたかっただけなんだなと。
本当は好きなのに笑顔で大嫌いと言っちゃう女の子可愛いでしょ、をやりたかっただけなんだなと。
キャラクターに個々の「決め台詞」を言わせたいだけなので、そこに至るまでの過程、その台詞を吐くに値するキャラクターに育てていくことを最初から放棄しているのだろう。
どうりでどいつもこいつも成長する気配がないわけだ。
ここまでの甚だしいクソを見せつけられたおかげで、これまで特に惹かれることのなかった小野寺ごときのラストシーンで、吹き荒んだ心が多少癒されたので、小野寺に免じて酷評はこのくらいにしておきます。