「攻殻機動隊S.A.C 2nd GIG(TVアニメ動画)」

総合得点
90.4
感想・評価
2334
棚に入れた
12410
ランキング
53
★★★★★ 4.3 (2334)
物語
4.3
作画
4.3
声優
4.3
音楽
4.3
キャラ
4.4

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ネタバレ

ossan_2014 さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.8
物語 : 1.0 作画 : 4.0 声優 : 3.0 音楽 : 5.0 キャラ : 1.0 状態:観終わった

道化師のタイト・ロープ

主題歌の「RISE」は、TVアニメ主題歌の5本の指に入る傑作ではないかと思っている。
(オリガさんのご冥福を祈ります)

ロシア語パートから英語パートに入ると、それまで「音」として聴こえていた歌声が突如として意味をもった「言葉」として世界を描きだし、ロシア語に変ると再び「意味」が崩壊して世界が砕け散る。
単にロシア語に無知で聞き取れないだけといえばそれまでだが、あたかもピントがぼけてかすんだ映像が瞬間的にフォーカスを合わせて対象が姿を現し、また瞬間的に焦点を失って消失するような、言語が交替するたびに眩暈を誘発する幻惑感で、ぜひフルコーラスで聴いてみてほしい。

この主題歌の傑作ぶりに比べ、本編の振るわなさは酷くアンバランスで、まるで本編自体のバランスの悪さを象徴しているかのようだ。


「個別の11人」により仕掛けられるテロと、それに対抗する国家テロ組織「公安9課」による捜査とカウンター・テロルが描かれるサスペンス・アクションだが、ポリティカル・アクションとまでは言えないのは、作中の政治状況や国際関係が空想的で薄っぺらい印象があるからだ。

近未来アクションの設定のためのものなのだから、何も現実的で重厚である必要はさらさら無い。なりたての軍事オタク少年が夢想しがちな、軍事行動を無理やり正当化するためにする、ファンタジックで本質的にシビアさに欠けるものであっても一向に構わないのだが、違和感を覚えるのは、設定のための下敷きにしては、過剰にこれが語られる点だ。

通常、フィクションを創作するにあたっては、設定や物事の背景説明は、エピソードで暗示するのが常套とされ、言葉で説明するのは洗練度が劣っているとされるにも拘わらず、登場人物の口を借りて多弁をもって語られる過剰さは、リアル志向であるように見えるアクション・シーンに対してひどくバランスを欠いているようだ。

不自然さを推してまで語られる政治性が子供じみたものであるため、この多弁は、せっかくのサスペンス・アクションに対して、リアリティを加えるどころか、これは絵空事の事件ですから、といちいち「ネタを割って」いるような効果を発揮して、物語に没入することを妨げてしまっている。
{netabare}その上、終幕近く、一連の事件の発端が一人の怪物的な人物の策謀によるものという「真相」にたどり着いても、驚愕ではなく、「ああ、『陰謀』ね」といった予定調和的な感想しかもたらさない。{/netabare}

加えて、政治性を語る語り口自体が、選ばれた賢人だけが知ることができる真実、とでも言った勿体ぶったトーンで演出されるため、国家テロルに正義感を感じている「公安9課」とその周辺の人々に対し、あたかも、トンデモ説を信じ込んで怪しげな儀式に耽る気の毒な人のような印象を与えてしまい、肝心の捜査やアクションのリアリティを大きく減殺してしまっている。

近未来社会の描写や、捜査やアクションはよく描けているようにみえ、おそらく、この、設定の一部に過ぎない政治性に多弁を弄することなく暗示にとどめておけば、普通にサスペンス・アクションの良作として楽しめたろう。

問題は、架空世界を構築する力の優劣ではなく、何を見せていくかという量的なバランス感覚のようだ。


大きなサーカスでは、しばしばピエロが綱渡りをして最後に落っこちてみせるという出し物をする。
ふらつくピエロの姿に観客が笑い、最後にネットに落下する姿に喝采を送るのは、よろよろと歩く姿も、落下するところまで含めて、「芸」になっているからだ。

「芸」ではなく単にバランスを崩して落下するのでは、笑いや拍手どころか、不安感しか掻き立てることはできないだろう。

投稿 : 2015/02/16
閲覧 : 333
サンキュー:

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