「PSYCHO-PASS サイコパス(TVアニメ動画)」

総合得点
90.2
感想・評価
5599
棚に入れた
26468
ランキング
60
★★★★★ 4.1 (5599)
物語
4.3
作画
4.0
声優
4.1
音楽
4.1
キャラ
4.1

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ネタバレ

ぽ~か~ふぇいす さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.0 作画 : 3.5 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

前半は完璧だったが後半はいろいろ粗が目立った

脚本に魔法少女まどかマギカでアニメ界にセンセーションを引き起こした虚淵玄
総監督に踊る大捜査線シリーズの本広克行
制作は攻殻機動隊のProduction I.G
もう視聴前から期待度MAXの作品でした

舞台は22世紀の東京
機械によって人間の心を読みとって
デジタル処化することが可能な技術サイマティックスキャンの登場で
人々がより安全に幸福な生活を送れるようになり
犯罪者は犯罪を犯す前にサイマティックスキャンによって
心の状態から「潜在犯」として社会からつまみ出されます
思想信条の自由なんてものはありません
世界全体が戦火の渦にある中
日本だけがこれによって治安を維持しているという事なので
身の安全とのバーターですね

判断を行うコンピュータが「シビュラシステム」
その手足となって今でいう警察機構の役割を担っているのが公安局
そこでは犯罪捜査のために能力のある潜在犯を「執行官」として登用し捜査にあたらせており
主人公の常守朱はその執行官たちを管理する新米の「監視官」として
同僚の執行官や監視官たちとともに潜在犯と戦っていくが・・・

といった感じの
SFサスペンスホラー
ちりばめられた哲学的なエッセンスも
中々にセンスを感じます

これは傑作の予感!
と思っていたところ後半からどうも雲行きが怪しい・・・

{netabare}
後半はいろいろ不満点だらけで
それを箇条書きにしていたらそれだけで大変なことになるので
特に強く納得がいかない部分だけ上げておきます

まずはシビュラシステムの正体について

魔女の正体は人間でした!
シヴュラの正体は人間でした!
ヒディアーズの正体は人間でした!
虚淵さん・・・もうそれは見飽きたよ!?
ってのはきっとみんな思ってることだろうけど
でも気になったのはそこじゃないんです

なんで脳にそのまま電極を差し込むような不安定な状態で
UFOキャッチャーのように常にクレーンで上げ下げしているのか?
精密機器にとってあんなもんシステムトラブルの原因にしかならないです
このアニメの近未来ガジェットはSFマニアのツボをついたものが多かった印象
それだけにこの余りにいい加減な描写にはだいぶ幻滅しました

もう一つは槙島さんのラボ潜入について

槙島さんは教授の目玉を使って生体認証を潜り抜けていましたが
そもそも生体認証には2つの課題があります
一つは本人を別人と認識してしまう可能性
もう一つは別人を本人と認識してしまう可能性
人間は成長したり老いたりするので
完全に同じでないと同一と見做さない場合
本人なのに認証を通れないことが出てきます
逆に認証を甘くすると本人でないものが認証を通ったり
あるいは作中のように一部の部位だけや
樹脂製の指紋のコピーなどの偽証を見逃すことになります
そのためそもそも生体認証が重要な役割を果たすこと自体が難しいのですが
そこには目を瞑ったとしてもそれ以上に大きな問題があります

槙島さんは眼球を持っていって生体認証をクリアしようとしましたが
目を使った生体認証は主に二つ、網膜認証か虹彩認証でしょう
虹彩認証はそもそも瞳孔反射のない死体では抜けられません
網膜認証の場合はあくまで網膜パターンを読むので
水晶体だけくりぬいて持って行っても役に立ちません
舞台が近未来なのでより優れた認証がある可能性もありますが
それならば猶のこと通過は不可能でしょう
つまり槙島さんはあの扉を開けることができないのです
生体認証に失敗して眼球を片手に途方に暮れる槙島さんを想像したら
あまりに可笑しくて折角のクライマックスが台無しでした

私が大学院でコンピュータの研究をしていたから
という事もあるかもしれませんが
どちらも科学的な考証が適当過ぎて看過できないレベルでした
これらに共通しているのは
SF考証やなんかを無視してでも視聴者に与えるインパクトを優先させている点です
シビュラの例は無機物のように統合管理される人の脳を
できる限り薄気味悪く演出したかっただけ
ラボの生体認証は死体ののどに手を突っ込む朱ちゃんと
目玉をシステムにかざす槙島の絵が欲しかっただけ

物語を紡いでいく過程で過激な表現が必要になることはあるでしょう
私は基本的にそれらを肯定する側に立つことが多いです
しかしこの作品は過激な表現のほうが主目的になってしまい
物語が歪に捻じ曲げられているというのが正直な感想です
猟奇性を上げることを一番上に持ってきた結果
突っ込みどころ満載のギャグシーンに成り下がっています
全体のクオリティが高ければ高いほど
そういう部分が大きな不協和音を生み出し
作品全体の質に影響してしまいます

しかし、よくよく考えてみると
この方向性は最初からはっきりしていました
例えばドミネーターのエリミネーターモード
シビュラが更生の余地なしと判断した罪人をその場で死刑執行する
というところまではまぁ倫理的な是非はともかく合理性があります
しかし撃たれたものの肉体が膨張し破裂する必要性は全くありません
むしろそれがエリアストレスを引き上げたり
監視官の色相を濁らせる結果になったりと
作中でも悪影響ばかりまき散らしています
これも単純に放送できる限界までグロテスクにしたい
というレベルの低い思い付きから来ている以外に説明がつきません{/netabare}

法と秩序、善と悪といった高尚なテーマに深く切り込む
SF作品としての魅力をもっとしっかりと描き切って欲しかったです
猟奇的で低俗な絵を見せることがメインになってしまっては
女の子の裸に謎の湯煙たててるアニメと本質的に大差ないです
序盤はSFとしても刑事物としても楽しく観れました
後半を含めても評価できる部分が沢山あったはずなのに
観終った後に残ったのは消化不良のもやもやした感覚ばかりでした

投稿 : 2015/02/15
閲覧 : 418
サンキュー:

34

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