みかみ(みみかき) さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 5.0
音楽 : 3.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
ひさびさに、ヴィレッジ・ヴァンガードの存在意義を感じた
うぜぇぇぇぇっぇぇぇぇぇぇっぇぇぇwwwwwwwwwwww
「バカかわいい」という形容詞をわたしはよく使いますが、
つまり、これのことです。
うちの父親とか、こういうバカかわいさにあふれてますよ!
●このうざさについて
テンプレ的につくっているところもあって、
一番うまくいってるテンプレはこう。
A.確実にばか。誰か突っ込んであげて!ツッコミ待ち。しかし、謎の自尊心をぎりぎりで保つ、保ち方の台詞がおかしい。
B.しかし、つっこんじゃいけないのかな…ここ…
という二点セット。
けっこう昔からコントのネタとしては、「バカヤンキー」とかって定番ネタとしてはあった。
「田中先輩、マジ、ブクロ最強っていうか、まじ、なんていうか…、はんぱねぇ、っていうの?
ぜったい、会ったら、その瞬間、まじでやられるっていうか…
超つぇぇ、から、まじ。ぜったい。
あ、これ?
あ、うん。そこのマックで買った。マックぱねぇよ。いや、まじ、マック、すげぇって、
店員さん超かわいいの。マジ最強っていうか…、見た瞬間ほれるっつーか。
しかも、マックさ、ほら、おいしくね?マジ、ポテトうめぇんだけど。」
みたいな、バカかわいい系の雰囲気をベースにしたコントはあるにはあった。
ただ、peeping lifeのすごいのは、これをヤンキー以外の、多種多様な人たちでやってるってことで、
・バカップル
・おっさん
・USTするオタク
とかね。
いずれも、題材としてはあるにはあったんだけど、
摘出の仕方のクオリティが、はんぱない。
あと、「ツッコミ待ち」「バカ」「なぞプライド」まではけっこうあったと思うんだけれども、
「突っ込めねぇぇぇぇぇぇぇぇwwwwww」状況のピックアップの仕方がすごく上手いのかな、とか思う。
ヤンキーに突っ込めない理由は、相手がヤンキーだからで、怒るから、なんだけど。
あと、『魁!!クロマティ高校』のメカ沢とかも、つっこむと存在が崩壊する、という理由なんだけど。
ここで突っ込めない理由は
・相手が恋人だから
・相手が目上だから
・ネットの向こう側にいるから
とかで、いずれも、日常空間のなかに埋めこまれているソフトな強制力みたいなものをすごくうまく摘出している。
職員室編はつっこんでるけどね。
あと、
・男子中学生ネタ
・新婚さんネタ
・ラッパーとその彼女ネタ
はちょっと方向性が違っていて
「そろってバカ」系。
これはつくりは「そろってバカ系」というと、昔からあるジャンルなんだけど、
「あこがれ駆動系」と言ってもいい。
主に、テレビとか、文化シーンとかね。
そして、あこがれの対象そのものが、「えっ、そこがあこがれの対象なんだ…」ぐらいのものをうまくもってくる。
あとは個別に
*「花見の場所取り編」は
あこがれ駆動系のバカでもなく、ソフト権力系でもなく、
ギャグとしてもっともアグレッシブなつくり。
文化系女子のたくらみ、とかツボ的なものを理解してないと、
これわからないだろ…w
やりすぎ感もあるけど、よく作ったなこれw
*「CDデビュー決定! 」
これはそろってバカ系とも言えなくもないけど、
ソフト権力系と、そろってバカ系のハイブリッドって感じ。
「営業さんのカタにはまった喋り方」みたいのが、基本的にはツボなんだよね、森りょういちさんは。
余談だけど、わたしも、一度「長年、営業をやってきたおっさん」をコンテンツ系の世界にほうりこませたら、異様に浮いて見えるということがあった…。
●なぜ、そこでプライド…なのか。問題
やっぱり、なぜそこで「プライド」的なものが発生しているのかどうか、ということが面白い、というのがこの話で
ローカルな社会空間とか、雑誌とか、ローカル・シーンのなかでは「おかしくない」ことになってるもろもろの現象がある、ということなんだよね。
で、そういうもろもろの現象があることは当然で、ローカルな社会空間において、その人がそういう作法を身につける、というそのこと自体は、比較的ふつうのこと。
で、その当該社会の「内側」でそれをやってる分にはその作法はまったくおかしくないし、それを笑うのはイくないと思うのだけれども、その作法が、日常の別のシーンにまではみ出してくるとやっぱり、それはおかしい。
で、たいがい、そういうローカルな場所で作られた世界観って、その人の人格システムそのものをがっちりと規定するから、ほかのところにもはみ出してくるんだよね。
●わたしみたいのも取り上げてほしい
たぶん、わたしのテキストも、わたしの属する比較的せまい社会のなかで形作られているものなので、
わたしの属している比較的狭い社会から縁遠い人であればあるほどに、
「なんで、こいつ、こんなわけのわからない話にえんえんとこだわってんのwww」
「カタカナ、多くねぇ?www」
とか、ごく普通に思われていると思うのだけれども、
まあ、そういうことだと思います。
まあ、実際の会話だと(あたりまえだけど)相手をみて、話す言葉づかいとかは調整するんだけれども、こういう独白スタイルだと、ただ単に脳内言語がだだ漏れに近い形になるっていう、アレですよ。
peeping lifeの人に、わたしみたいなタイプの人間とかを「笑い」の対象にしてもらえれば、いいなぁ、と思うんだけど。
官僚とか、政治家とか、学者とか、大企業の偉い人とか、いわゆる「頭のいい偉いひと」であっても、だいたい、コミュニケーションギャップがかなり大きな場所を衝いていけば、けっこうおもろいしね。
官僚はムスカみたいなバカかわいいのがけっこういっぱいいるし、政治家は営業の人をより強力にしたような人格の人いっぱいいるし、学者はいろんなタイプいるけどよりどりみどりの動物の群れだし……大企業の偉い人も、けっこうテンプレ人格があるしね。
そのわりに、この手の連中とか、自分がテンプレ人格に陥っている、とかっていう自覚がないことがけっこう多いので、ぜひそういう気づきを与えるための作品としても機能してほしいですね。
まあ、気づいたところで、テンプレ人格が治るかって、言われてもなおらないし、治ったところで意味なんてないから、別にテンプレ人格は、テンプレ人格でいいとは思うんだけど。「あ、おれ、いま、テンプレ人格な対応をしていることによって、ディスコミュニケーションが生じてる…?」とか思ってくれると、コミュニケーションってしやすくなるしね。
まあ、いろいろな意味で、
ぜひ今後もがんばっていただきたく。
●中間メディアの死。そしてヴィレヴァン
ちなみに、見たきっかけは、これ2009年あたりから、ヴィレッジ・ヴァンガードに行くと、どこのヴィレッジヴァンガードでも、延々とかかっていて、
それで見てみたのだけれども、これを紹介してくれたのは、ほんとヴィレヴァンありがとうって思ってる。ヴィレヴァン好きだ、とかそういうタイプではわたしは絶対にないけれど、これに関しては感謝。
peeping lifeのはなしそこまで関係ないけど、ヴィレヴァンについてちょっと書いておくと、
10年前とか、ヴィレヴァンに行くと、『AKIRA』がわざわざ棚積みされていたりして、「んなもん、棚積みされなくとも、知ってるわー。なんか、そんなサブカル・ポジションでの、教育とかされてもなー」みたいな。気分だったのだけれども、
これを発掘してきたり、あと最近だと、九井さんの『竜の学校は山の上』とかをプッシュしているのも偉いね。
本の棚に行くと、相変わらず私から見るとウレセンの文化人系の本が多いので、どうしても微妙な気分になるのだけれども…。
80年代~90年代ってのは、たぶんサブカルが機能するための中間メディアとしての「雑誌」というものがもっと元気良かったわけだよね。ごく単純に、売れ行き的に。
『スタジオボイス』『広告批評』『TVブロス』とかね…。
だいたいの雑誌は、2000年代中盤に休刊したり、活動縮小したりしている。あと、昔の『ファミ通』もサブカル雑誌としての機能をもってたんだけど。
ここらへんの、サブカルが滅びた最大の要因はネットが情報を代替するようになった、ということだけれども…ネットって、思った以上に「シーン」みたいなものを作りだすパワーがないんだよね。
ネットって本当にサブカル雑誌つくってた連中が意図的につくりだそうとしていた中途半端な世界なんかよりも、情報リテラシーの高い一部の層にとっては、ネットはそれより遥かに「楽園」だとは思う。わたし、いまだにヴィレヴァンのラインナップ見ると、イラッとするもの。「ヴィレヴァンのやりたいことはわかるけどイラッとする」人って、たくさん居たと思うんだけれども、ネットって、ヴィレヴァンと比べるとそこまでイラっとしないんだよね。はてブのトップエントリーとか、2chまとめブログとか見てるとイラっとすることは可能だけど、Twitterの自分のタイムラインをみていても、このイラつきはそこまでひどくならない。
これはこれで、小さな楽園が無数にできあがっているとは思う。思うのだけれども、ロングテールよろしく、そこそこの教養欲求のある人とかを、ぐっと結びつけるものがなくなっちゃった。物販のレベルで、20万~80万人ぐらいの人々を、いっきょに動員できるものがなくなっちゃったんだよね。
20年前だったら『AKIRA』って言ったら、マンガ読みやアニオタだけじゃなくて、本読みも、ゲーオタも、音楽オタも、服オタも、映画オタも、美術系オタも、およそ「教養」なるものを捏造することに興味あるひとたちは、みんな知ってた。15年まえ『エヴァ』もみんな知ってた。
だけれども、いま『まどか☆マギカ』は映画オタや美術オタや服オタは知らんでしょ。同様にゲームで言えば『ワンダと巨像』あたりのタイトルは知らん人多いだろうし、『鈴木先生』『百舌谷さん逆上する』とかはアニオタ、漫画オタ以外はそこまで知らんこと多いでしょう。
ぜんぶ被ってる人は、たぶん2万人~4万人がいいとここなんじゃないかしら。これ、15年前だったら、サブカル雑誌がこういうものとか取り上げてて、10万人以上は、この手の層はあったんだよね。
あるいは、もうちょっとメジャーラインでいえば、「浦沢直樹」はMONSTERとか、一冊あたり100万強を売ってるけど、いま、浦沢直樹あたりのポジションの人間がいたとしても、100万強の部数を売ることができるのかどうか…。雑誌メディアが騒いで、流通メディア(問屋というか、主に小売店)が猛プッシュして、それでようやく、100万部って部数は成立してる。
peeping lifeの売上は10万弱ぐらいらしい。
この手のサブカル流通としては、本当に驚異的なヒットだと思うけれども、
この「10万弱」という数字が、おそらくヴィレヴァンという小売店メディアが全力を出したときの最大値でしょう。
もちろん、peeping lifeは、ヴィレヴァンが頑張った結果、テレビだとかネットメディアでも、話題としてきちんと出まわるようになったので、それだけじゃない、とは思うけどね。
でも、peeping lifeは、もっとメジャーなものになることは可能だろうと思うので、せめて30万部ぐらいの商売に是非なってほしいなあ。(さすがに、100万とは言いません…。)
peeping lifeを、30万ぐらい売ることができたら、ネット時代の希望のあるコンテンツ・ビジネスのありかたって見えてくると思うのだけれども。現状、peeping lifeがヴィレヴァンがこれだけ本気だして、ようやく10万ってのは、ほんとに中間メディアの死だよなー、としか言いようがない。