なお さんの感想・評価
4.5
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
中盤以降に本領発揮する名作
有頂天家族
[あらすじ]
物語の舞台は千年の都.京都。
ここでは古来より人に化けた狸と天狗が人間に紛れて暮らしていた。
そんな狸の中でも下鴨家は名のある一族、狸界を統べる存在の「偽右衛門」でもあった下鴨総一郎はある年の瀬、人間たちに狸鍋にされ、帰らぬ狸となってしまった。
残された母狸と四人の息子狸たちはそんな父の死を悲しみつつも「狸として生きている限り鍋にされることもある」といういわば食物連鎖の定めを理解してもいる。 一方で山にすら化けられる大狸であった父がなぜ人間の手に堕ちたのか、父の死に秘められた真実とは?
偉大なる父の姿を追い、次期「偽右衛門」の座を巡り奔走する長男・矢一郎。
何故か井戸の中の蛙に化けて以来そこから出てこない次男の矢二郎の胸中とは?
阿呆の塊だが行動力と熱い気持ちを備え、総一郎が一番自分に似ていると話す物語の主人公的存在の三男矢三郎が立ち向かう先は?
まだまだ発展途上、身体は小さきけれど純粋な心の持ち主。ショタかわいいとはまさにこの子!四男矢四朗
などなど。
そしてこれは面白い!
作中中盤から次回への引きがうまくて物語の世界に引き込まれる。
自分は5話の弁天がメインの回から本格的にのめり込んだ。 狸が主役というアニメに珍しさがある。故に物語序盤、特に1話は話がよくわからないことからここで断念してしまうことも考えられるが、ちょっと待ってほしい。1話切りするには惜しすぎる。1話より2話、2話より3話と回を重ねる毎に明らかになる真実や、登場人物それぞれの心理を会話や演出によって視聴者側にダイレクトに伝えてくる展開は見応えがある。だからのめり込める。このあたりはさすが尊敬するP.A.というところ。多くのところで言われているが本作はとても独自の雰囲気を持っている。独特な世界観があり絵の感じにも特徴がある。舞台が京都ということで少し時代を遡ったかのような古風な世界が広がっており、心穏やかにさせられる。ジブリの雰囲気に似ていると言えばわかりやすいだろうか。なおストーリーがしっかりあるのでただの日常系アニメではない。時に心苦しいシーンもあると思うが、そこも含めて有頂天家族の見所である。
あっそれと個人的に言わせてもらうとー……
海星ちゃんの衝撃の可愛さ!
いやもう初登場時、雷が怖い矢一郎達の母上を橋の下で付き添って見守ったシーンとか、矢三郎と教授が屋上からどう降りようか困ってるときにさっとはしごになって助けるとことか口はキツいけどこういった優しいところ好きだった。てかはしごになってってことはずっとそこで待機してたのかな?
それとも影で密かに2人を見てて然るべきタイミングでさり気なくはしごになったのかな?笑
いずれにしても優しさが滲み出とるわい。
一方全く顔が出ないからそういうキャラなのかと思って特に顔は気にも止めてなかったけど、銭湯回でついにそのベールを脱いだ時心撃たれた。
ん?
「海星ちゃん可愛いんじゃーーーーーーーーーーーッ!!!!!!」
衝撃の可愛さァッッ (;゙゚'ω゚'): ΣΣ!!!
その時俺の心に電流走る!(カイジのナレーション風)
あるシーンでは総一郎の死の真相を知っていて、一人心を痛めてそれを矢三郎に涙を振り絞り告白したところなどは、この子は本当に優しい子なのだととても温かい気持ちになった。
うう…
辛かったろう……
苦しかったろう……
私の胸で泣いていいのだよ。
よく頑張ったね。
いつまでも傍にいるから安心して眠っていいからね。
しかもその後も捕まった矢四朗を逃がしたり、身内を敵に回しても下鴨家に力を貸そうとする姿勢のなんと美しいことか。
口調だけ見るとね。ちょっときつめの感じで従来の俺が好きなタイプではないのかもしれない。でも海星は別!なんかもうそういうところもひっくるめて好きになってる。海星の全てを包みたい気持ちが心の奥底から溢れてきよる。
この海星に比べて親の夷川と兄の金閣と銀閣の性格の汚さよ…
夷川とかいう強烈な屑キャラ 。なーんでこんな奴から海星みたいな子が生まれたのかね(゚Д゚)ハァー?
興味を惹かれていた弁天さんについては詳しく明かされなかったな。結局この人はなんで金曜倶楽部なる狸を食べる週間のある倶楽部に入ったのか、寂しそうな描写の本意とはなんぞや?とね。まぁその辺は視聴者に考えさせるパティーンですかね?
ネットでもいろいろ考察あがってるようですけど。
ただ最終回もあれ夷川のその後が気になる。結局うやむやにされた感あるけど、あそこもうちょっとすっきりした結末欲しかったな。相応の報いというか地に堕ちる様が描かれていればより良かったな。
あいつはほんと許せん。
個人的に印象的なシーンをいくつか
第7話「銭湯の掟」の最後、矢二郎に向かって真相を問う矢一郎。わかっていたんだろうけど否定してほしいのに矢二郎に肯定され泣き崩れるシーン。その後それを聞いていた矢三郎が何も言わず天を見上げる演出も良かった。
次いで第8話「父の旅立つ日」より
赤玉先生「総一郎よ。わしは、お前と別れるのが残念である。ここだけの話であるが・・・」
この台詞やばかったね。いつも頑固な先生だしこんな素直な言葉言うわけないと思ってた。総一郎との今生の別れを惜しみ最後に素直な感情をこぼした所にやられた。
あぁほんとに父旅立つんやなって思った。
して最終回第13話「有頂天家族」より
矢二郎が電話越しに母狸と長年ぶりだろう会話をし、言葉が出ず涙を堪えるシーン。ここ他の人の感想にあったけど、確かに咽び泣くより涙堪えて声が出ない嗚咽みたいな描写の方が心にきたね。矢二郎も井戸の中でずっと思い悩んで号泣もしてたんやろうし母狸との会話、ここでは申し訳なさとかまともに目を見れない気持ち、堪えきれない感情の表れとしての嗚咽がすごく響いた。
あとこれは個人的に引っかかったシーン
2話で母狸が息子狸4匹に涙ながらに父が死んだ理由話すシーン正直「鍋にされて食べられたんだ」って言うからシリアスな雰囲気のはずなんに、強そうな親父が鍋にされたってギャップと、その後の矢三郎の冷静なトーンで「帰らぬ狸になりましたとさ」っていう台詞と相まってちょっと笑ったんだが、全部見てから思うとここ怒りの感情沸いてきたな!
序盤の2話時点では父狸の像がはっきりしてなくて笑ってしまったし、この世界の住人は皆「狸に生まれたのなら食われることもあろう」っていうスタンスだから「食物連鎖的にそういうもんなのか」と思って狸が鍋にされることを自分は大事だと捉えていなかった。しかし真相知ってからはいーやこれは許されないと感じたね。
これを見たみんなはどう思いましたかね?
いかんせん昔3話で切ったことを後悔しました。
逆に今見たからこそ大きな感銘を受けたともいえる。
初めて見る人は1話から13話まで一気に駆け抜けてほしい。
またしばらくしてから2回目を見たいと思える作品。
その時は1話から違う視点でいろいろなものが見えてきて、新たな感じ方があると思うのでとても楽しみ。
有頂天家族は慎ましやかに評価されるべき作品だと感じた。