蒼い✨️ さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
素晴らしい作品をありがとう。
アニメーション制作:P.A.WORKS
2014年10月9日 - 2015年3月26日に放映された全24話+作中アニメのOVA2話のTVアニメ。
監督は木下誠一じゃなくて、水島努。
【概要/あらすじ】
山形県の県立上山高校(かみのやまこうこう)にアニメーション同好会があり、
5人の女子高生・宮森あおい、安原絵麻、坂木しずか、藤堂美沙、今井みどりは、
文化祭に向けて自主制作アニメーションの制作に励んでいた。完成して上映。
5人には夢があった。それぞれがアニメの仕事に就いて将来いつか、
このメンバーでまたアニメを作っていこう。今度はプロとして!
「ドーナッツの誓い」から2年半後。
短大を経て都内のアニメーション制作会社「武蔵野アニメーション」に就職した宮森あおいであったが、
アニメーション制作の現場の現実は、思い描いてたよりハードだった。
制作進行管理が彼女の業務であるが、とにかくうまく行かない。
アニメ制作の過程で発生する問題が山積み。
拘り煮詰まりスタッフを振り回す監督。進捗状況に関わるトラブルが度々発生する。
スタッフ同士の見解の相違などによるイザコザが起きる。
その、ひとつひとつに対して向き合いつつ、なんとか乗り越えていくのではあったが。
この物語はアニメ業界の夢と現実を織り交ぜながら描かれたものである。
経験の浅い5人の女性がアニメ業界の先輩たちからアドバイスを貰ったり学んだりする。
また、アニメがどのようにして作られるのか?スタッフの一人一人の群像劇としての側面もあったりする。
【感想】
SHIROBAKOという作品はアニメ業界を描いたフィクションであり、
誇張があったり茶化したりコメディタッチの脚色だらけではありますが、
我々の実生活に通じる身につまされるエピソードが多い気がします。
我々の社会に根付いている人々は手に職を持って生活を営み、
何かしら他者に関わって、それが大きな塊となってコミュニティを築いてるのです。
周りを見れば、
・自分の都合だけで動いている者
・他者とのコミュニケーションが不足している者
・夢や理想ばっか追いかけてる者
・人間関係や立場にいつも胃がキリキリしている者
・ちょっとしたことで他者の支えになっている者
エトセトラ…エトセトラ。
世の中には真面目な人もいれば適当な人もいる。
人を案じてくれる人もいれば自己中心的な人もいる。
そういうのを全部ひっくるめて群を成しているのが人間という集団。
このアニメは社会の縮図であるとも言えます。
さて、このアニメはド素人にもわかりやすいアニメ業界講座であります。
理想・美化に多少のファンタジー要素が入っていたり、コミカルに描いてたりしていますが、
アニメ制作会社は産みの苦しみがあったり、多数の裏方に支えられて作品を作ってるんだなって、
これを観たらアニメを見る目に若干の影響が出ますね。
世に言う駄作・迷作も作りたくて作ってるわけじゃないんですね。(多分)
お金が無かったり人手不足だったりスケジュールに無理があったり。
シリーズ構成の横手美智子がアニメ作りに関わることになった経緯を登場人物の今井みどりに反映させてみたりと、
これって、制作サイドひとりひとりの自分たちの体験を切り売りして脚色してアニメにしちゃったものですよね?
だからこそ、創作的部分もあるにはあるのですが、作品のなかで起きる出来事の一つ一つに具体性があります。
何度も使える手ではないですが、業界を舞台にした作品は好みですし、
情熱、拘り、ポジティブ、前を向いて突っ走る。
アニメーション作りの過程で迷走する展開だらけですが、
登場人物の多くが持つ仕事にかける様々な想いと人間模様が描かれていて素直に面白いと思いました。
P.A.WORKSの社長の堀川憲司がエヴァンゲリオンなどで、宮森あおいと似たような業務をしていたこともあり、
アニメ業界に対する愛情みたいなものに溢れていますね。
業界の実在人物モデルの登場人物が多数登場し、その人らへのリスペクト精神が非常によく現れています。
前半を振り返ってみると、イデ○ン展の話とか、○ンノ○○アキ監督が出てきた話とか『おおーっ!』って思いましたw
特にイデ○ン…昔観たことのあるアニメだけあって、す○やまこ○いちに許可とってあるの?て心配になるほど、
聞いたことのあるようで微妙に違うメロディラインに笑ってしまいました。
(大人の事情で、配信・BDではBGMが差し替えられてしまいましたが)
あと、お気に入りは会社で浮いてた大ベテランのアニメーターである杉江茂さんが大きく関わるお話。
年長者を老害扱いして若者サイコーって作品よりも、
きちんと杉江さんみたいな人を認めて敬って花を持たせてくれる優しさが大好きです。
SHIROBAKOという作品が特に良いと思えるのは、人間には一人一人に人生があり、
それをきちんと歩んできたものには品性や言葉の重みが備わってきている。
という点をきちんと描ききっているということですね。なかなかに、そういうアニメにはお目にかかれません。
逆に楽な方に逃げたり思慮が足りないまま適当に生きてきた人間は、
その場しのぎ的な無責任さが習性になっていたりで情熱やプライドを失っていたりで自分で自分の値打ちを下げている、
ことも描かれていて、人間のきれいな面や逆の面と多種多様多な人物の描き方に「生きる」ということについて、
いろいろと考えさせられることがあります。作品内で扱いの良くない人物にも、
その人なりの憤懣や理屈があることも台詞でさり気なく、フォローされてるのが細かいですね。
まあ、あんまりよろしくない人物をムサニ外部に固めたり作為的な部分もありますが、
そこのところは面接の時に社長などの人を見る目で、
一緒にやっていってもダメかもしれない人間を採用しないようにしていると脳内補完しています。
2クール目も観てて思ったのですが…このアニメに出てくるおじさんたち、
みゃーもりとかメインなはずの5人の女子連中よりキャラが立ってて面白くないでしょうか?
アニメーション同好会出身の5人の娘たちはSHIROBAKOの企画を通すためのブラフで、
スタッフが描きたい本命は、おじさんたちなんじゃないかと?
社長の丸川さんにもモデルがいれば、監督やプロデューサー、音響監督、
おじさんではないですが女性声優さんたちetc.
観ていて面白いので、これはこれで十分にオッケーだと思いました!
このアニメで一番感動したのは、第19話ですかね。
40年近く前の昭和と平成の今が繋がっている。
世代が変わってアニメ制作のやりかたが変化しても、
過去の先人たちの情熱や心が今も残って現在や未来に繋がっている。
それは、「歴史」「人の営み」に通じるものがあって、
不幸とか悲劇に頼らないで泣かせるのは素直に凄いと思いました。
きれいな人間模様だけじゃなくて、汚れ役というのが存在していて、
それも嫌な悪役じゃなくて人間の有り様として描かれていますね。
タローがそうでありますし、後半のヘイト要員だった眼鏡の彼とかもね。
彼もリアルタイム試聴で叩かれていましたね。
ただ社会経験をちょっとでもつまんだことがあるなら彼の気持ちも、わかるんですよね。
世の中には大人の社会にも理不尽なこと嫌なことがいっぱいあって、無責任・責任転嫁・嫌がらせ。
社会の負の側面といいますか、人によっては被害の大小や対処能力の有無で個人差はあるんでしょうが。
環境や対人関係によって人は救われたり救われなかったりする。このアニメの深い部分が見えます。
自分では頑張ってるつもり・間違ってないつもりでも、人からは全くそう思われてなかったりで、
相互不理解による人間関係の捻れというのは二元論的なモノでは語れなく、胃の痛くなることが多いのですけどね。
トラブルメーカーにも救済があるこのアニメでもヒ・ト・リ・ダ・ケ!
Cさん(仮名)としておきましょうか?彼だけは本当に中身空っぽのしょーもない人間として終わりましたね。
バ○だ!とんでもない奴だ!と思っても、その人にはその人になりのロジックがあって、
それが他の人間と致命的に違いすぎるというだけの話かもしれませんけどね。
少なくとも現実世界でフィクション感覚で人を貶めるというのは、できるだけ慎むべきかも。
あんなんでよく大手出版社に入社出来て今までクビにならなかったと不思議でもありますが、
あれでも、学歴よくて表向きは人当たりいいとかで彼の致命的な問題点が気づかれなかったのか?
リアルとフィクションの折衷部分で彼は作品の犠牲者かもしれませんね。
ただ、リアルでも自分の理屈以外が脳内に発生せずに自分の要望を通すのみで、
会話が成立しない困った人間ってのも存在しうるので、
Cさんみたいなのも全くありえないとも言い切れないのですよね。
世の中には色んな人がいる。自分自身が気づかないうちに人から良くない奴だと思われることもある。
自己評価と他人からの評価のギャップが発生する可能性。
単にCさんは他人に対して恐ろしく鈍感なのかもしれませんね。
突っ込みどころをネタとして逃げてしまった感もあり完璧な作品であるとは言い難い点も当然ありますが、
それはそれで十分に許容範囲内でしたし、人間劇として非常に秀逸な作品です。
最終回まで気持ちよく観られた半年間の放映。素晴らしい作品を本当にありがとうございました!
と、スタッフの方々に感謝したいと思いました。
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。