退会済のユーザー さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
こんなに泣いたのは久しぶりかも
悲しいから泣くというのではなく、じんわりとした、とてもいい泣き方ができました。
以下、2016/5/8追記
<物語>
テーマは「現実の厳しさに対して夢を見て生きる」ということ。
13話だけの内容にかなり詰め込まれていて、全体的に入り組んでいる印象を受ける。整理してみよう。
(1)「変化しない人物」と「変化する人物」の特徴
{netabare}
・変化する人物・・・ワカナ、サワ、教頭、声楽部の部長
ワカナは見れば分かる通り、「現実的な人間」から「夢をみる人間」へ変化する。サワは最初「しっかり者」のキャラだが、後半で「様子がおかしく」なり、弱さを見せる。その弱さは克服されるが、最後は単なるしっかり者ではなく明確な夢をもった人に変化する。教頭は最初「音楽の難しさ」を強調するが、最後は「楽しさ」に気づく。声楽部の部長も同様。
・変化しない人物・・・タナカ、ウィーン(あだ名)、コナツ、校長先生
前の三人は脳天気である。タナカは最初から夢に向かって進んでいる。コナツはいつも楽しんでいる感じであり、これとワカナの母が重なる。校長は、合唱部の承認のシーンで管理職な雰囲気を一瞬出すが、ワカナが部員に入っていることで態度を変える。男性陣はいずれもキャラが変化しない。
{/netabare}
こうしてみると、「成長する」のはさりげなく全員女性であり、男性キャラは本当に影が薄い。つまり、ほぼヲタク(男性)向けのアニメということですな。
(2)主役と主題が分離している
このアニメ、主役は明らかにコナツだと思われる。なぜなら合唱部の部長であり5人のリーダー役だからだ。「成長物」アニメでは、主人公が一番成長するのが普通である。ところが、このアニメで主役は成長しない(最初から成長済みである)。一番成長するのは本来脇役であるはずの人物であり、視聴者もいつの間にかそちらの人物にのめり込んでしまうからこそ、意外性も相まって感動も大きいのだと思われる。
このアニメの「主題」に最も深くかかわっているのは、もちろんワカナである。また、11話では{netabare}ワカナが歌を完成させ、バラバラになりかけた5人をまとめる役を担う。{/netabare}この時点ではワカナが「主役」という感じがする。ところが12話でもコナツは委員会で白祭の「中止の中止」を提案するので、未だに主人公のポジションは確保している。
と、このように見ると登場人物によって正反対のストーリー展開(変化するかしないか=成長するかしないか)をしたり、登場人物のポジションがしばしば変化する(リーダーシップを発揮する場面が登場人物によって異なる)。それにも関わらず、物語は「夢」へ真っ直ぐ向かっているので、ストーリーはとても技巧的である。
疑問点:
・10話でワカナが教頭先生に下の名前を聞く。しかし5話でサワの母が「高倉直子」というフルネームをワカナに言っている。サラリと。
・学校の鍵は理事長と校長のどちらが管理しているのか?いまひとつはっきりしなかったが、大した問題ではないだろう。
5.0点
<声優>
演技に関して、特に斬新的なところはみられない。
とにかくきれいな歌声。
3話で、校歌を最初やる気なさそうに歌っている。
5.0点
<キャラ>
ワカナ、サワ、教頭の「成長するグループ」は二面性があってストーリーに良い影響を与えている。その一方で、二面性をもたない「平面的」なキャラが土台の役目をしている(地域の家族、親、成長しないキャラ)。
注目したいのが、ワカナの「現実的キャラ」についてである。実際は「現実逃避」であったことが判明する。母の死によって、母との約束が二度と叶えられなくなったという事実からの逃避である。一方、サワや教頭には「現実逃避」的な姿勢は見られない。この意味で、「成長」の意味が登場人物によって様々に異なっている。
5.0点
<作画>
作画が物語に意味を与えることができているシーンが「演技以外」でも見られる。
(1)EDの画像
{netabare}
ワカナが1話で左端に立っていて、だんだんと近づいてくるのは皆気づくだろう。しかし重要なのはそれだけではない。1~5話と(6話は前半部のまとめ)7話以降では明らかに異なっている。前者は登場人物が「一人ずつ」示されるが、後者は「みんなで」画面にいる。つまり、ワカナがみんなの輪に入ったことで5人は一つになれたのだ。
{/netabare}
(2)3話のバドミントン勝負の流れ
速すぎて分かりにくいので整理すると、
{netabare}
・タイチはまず3人のボールを跳ね返すが、サワからのボールをコナツにスパイクして1点を先取
・ワカナがタイチからのレシーブを拾う
・サワがタイチにスパイクを打って1点取る
・ワカナからのボールはウィーンが拾うが、ネットに当たって1点を失う
{/netabare}
(3)
5話で撤去されたピアノの足跡が畳についている
(4)最後の合唱のシーンでの舞台配置
あまりよく見えないが、5人に教頭は対面している。合唱は5人の後ろにいる。吹奏楽は左右に分かれて座っている。
(5)
最終話、上野さんがピアノに座るとき、背景の教室の窓ガラスについた埃まで書かれている。
(6)最終回のラストシーンでワカナが歩く時の横顔が母マヒルに似ている
{netabare}
こう見える技術的な理由をいろいろと考えたが、一番のポイントはワカナを「白っぽく」描いたからだろう。ほか、首が長く見えるようにし、ポニテのボリューム感も増している。足元のヒールも大人びている。
{/netabare}
5.0点
<音楽>
作品では複数の歌が出てくるが、重要なシーンではすべてワカナの母マヒルの作った心の旋律がテーマとなっている。たとえば、以下の曲はすべて共通したメロディー(フレーズ?)をもつので、いわゆる「変奏曲」といってよい。
・アミーゴ・アミーゴ
・心の旋律
・radiant melody
マヒルの影響が大きなものであったことがよく分かる。
どうも歌が「鎮魂歌」(レクイエム)に聞こえてしまう。実際、作曲半ばして死んだワカナの母マヒルに対するレクイエムではないのか?そう思えば、なぜ歌がここまで切ないのかも分かる気がする。
ほか、テーマの転用に気づいたところ:
10話の歌「ショウテンジャー」とOPの曲のサビはテーマが同じ。
3話で校歌を最初やる気なさそうに歌っているが、バンドのフォローでタイチが楽しそうに歌い始める
3話のEDから5人で歌っている
5.0点(合唱系の音楽が好きでない人にはこのアニメが好きになれないと思われる。)
<総合的な感想>
希望をもつことが主題のはずなのだが、あまりにも歌がシミるしテーマが爽やかな見かけによらず重く喪失感が強い。たとえば、学校は無くなるし皆は卒業すると別々の道を歩んでしまうし、親がすでに死んでいたりするし・・・
しばらくの間、何もする気が起きなくなってしまう。見返すたびに廃人になりそう・・・なにかバカなアニメ見て心入れ替えないと復帰できない・・・