スーパースラッガー さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
見どころは「クララが立った!」だけじゃない!
私があらためていうまでもなく、「ハイジ」は日本アニメ史において燦然と輝く金字塔と言って間違いないです。
テレビのバラエティ番組の懐かしアニメ特集で、毎回「クララが立った!」のシーンが取り上げられたり、最近ではCMでパロディのネタになっていたりと、本放送が1974年とは思えないくらいの影響力を今なお誇っている名作中の名作です。
今やアニメ界の重鎮として称される宮崎駿さん、高畑勲さんが若い情熱を惜しげもなく注ぎこんだ作品としても知られています。
これは実に驚くべきエピソードですが、世界中で翻訳されて放映されている「ハイジ」は、ヨハンナ・スピリの原作以上に広く認知されていて、世界の子どもたちはアニメの「ハイジ」が本家だと信じているらしいです(たとえば、ハイジは黒髪だとみんな思っている、とか)。
ここまでいくと「名作」といった陳腐な表現ではおさまりきれず、「お化けアニメ」(当然ほめ言葉です!)としかいいようがないでしょうね。
見どころはたくさんありますし、本作については多くの方々がいろいろ語っていらっしゃると思いますし、本気で語ると「ハイジ」については一作の本が書けてしまうくらい言いたいことがあるのですが、ここでは私がとくに「こうだよなあ」と思っていることを大きく二点だけ、書きたいと思います。
まず、このアニメは素晴らしい教育アニメだと思います。
もちろん、説教くさい上から目線のニュアンスの「教育」ではないです。
ハイジやペーターを見守るおじいさんの言動に注目してください。
愛情を持って子どもたちを見守るスタンスでありながら、ここは大人が手を貸してあげたほうがいいという場面や、ここで一言言わなくてはいけないという場面では、きちんと助け船を出す(不器用ながらも実にタイムリーな言葉と行動)・・・この絶妙なバランス感覚は、素晴らしいとしかいいようがありません。
物語前半では厳しく気難しいイメージのおじいさんでしたが、孫娘のハイジとのかかわりを通して、素晴らしい教育者・人格者になっていくのです。
私は、本作をハイジの成長物語であると同時に、「おじいさんの再生ストーリー」であると思っています。
次に、ヤギについてです。
ハイジにヤギは欠かせないですよね。
本作ではヤギのユキちゃんをはじめとして、たくさんのヤギが劇中で活躍します。
作品を作る際に濃密なロケハン(海外含む)を組んだことでも知られている本作ですが、メイン動物であるヤギの描写が実にリアルなのです。
姿かたちだけでなく、一つ一つのしぐさ、そして生態までよく研究してアニメに再現しているので感心します。
{netabare}細かいところでいえば、おじいさんが自分の飼っているヤギたちに塩をなめさせているシーンがあります。
ヤギ、牛、馬などを飼育されている方にとっては常識中の常識ですが、彼らに塩は必須の食品です(草から得られない成分である塩分・ミネラル分の補給ができます。家畜用の塩があります)。{/netabare}
実は、かつて家でヤギを飼っていたことがあるのですが、そういう経験のある私が観ても、本作のヤギたちはとてもヤギらしく、生き生きしています。
もちろん、アニメ向けのデフォルメや、ストーリー上のアレンジなどはありますが、制作スタッフの方々の観察力と表現力にはただただ恐れ入るばかりです。
{netabare} そうそう、ユキちゃんがお乳が出なくてつぶされそうになる(処分されそうになる)エピソードがありましたが、あのお話は子ども向けにしてはリアルでしたね。
家畜動物の悲哀っていうか、現実というか、「そういうところまで子どもアニメに盛り込むとは・・・こんなところからも本作が意欲作であるということがわかります{/netabare}
最後になりますが、これは関連本で読んだのですが、本作の制作当時のコンセプトは「大の大人たちが本気になって、本当に子どもに見せたいアニメを作る」ということだったようです。
私はシリアスなアニメからギャグアニメ、萌え系アニメまでとにかくいろんなアニメが好きですが、「ハイジ」のように「子どもの心を育てることを意識した作品」も、いつの世にもあってほしいものだと思います。
追記:いかにも本放送をリアルタイムで観た古参ファンのような文章を書いてしまいましたが、ちゃんと観たのは2010年代になってからです・・・そんなに昔の人ではないので^^;