photon さんの感想・評価
2.8
物語 : 2.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
死をみる姿勢
今でこそありきたりな設定のストーリーだろうけれども、原作が1958年に連載されていたことを踏まえると新鮮という意味がそれなりに考えられた作品なんだろうなと思った。
原作者の山田風太郎は「私としては滑稽な死に方が望ましいのだが」ということばを残した人で、それがとても印象的だったこともあり著書に手を伸ばしたことがある。
僕が通読したのは「人間臨終図鑑」という15歳に亡くなった人から121歳に亡くなった人(著名人)900人くらいの臨終の時とその人に関する簡単な説明とを記した本で、各章ごとに著者が一言残しているのだけれど、本作品を観ている時にその中にある一節を思い出した。
寝そべって他人の死を読むというような意味の一節で、その通り寝そべって臨終図鑑を読んでいる自分にぎょっとしたものだった。
そしてまた別の一節、他人の死は犬の死より軽いということばに妙に納得した。犬好きの人に勘違いされないように、当時の意味で家畜の死ということだと思う。
本作はフィクションではあるけれど、人の死についてのストーリー。
他人の死が家畜の死よりも軽いものだとすると、フィクションにおける死はそれよりもはるかに軽い。それでも情動が溢れるとするならば、死へ向かう途にあるドラマに対するもので、死という結末に対するものではないと思う。
山田風太郎は死を真正面に捉え、それについて幾度も考察を重ねた人の一人だと思う。死を扱えば感動が割増するという安易な考え方をしない人間だと容易に想像のつくような人の作品にしては少し死を美化しているようにも感じた。けれども、アニメとして描くのであれば多少大袈裟にもなろうとも思うので差引ゼロというところか。
ストーリーの評価は小説としての評価も考慮しようかと思ったけれど、アニメのみにとどめるよう心掛けた。