photon さんの感想・評価
2.7
物語 : 1.5
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
ディストピア
個人的に「新世界より」と似ているように感じたけれど、それは多分ディストピアとしての設定が似ているからだと思う。Freedomなんかもそうだけれどディストピア=監視社会という印象が原作者の中に固定観念としてあるのかなと不思議に感じる。例えばサミュエル・バトラーの作品(エレホン)なんかはそれと異なる設定でディストピアを見事に描いていると思う。
もしも管理社会的であることばかりがディストピアであると定めてしまっているのであれば、伝統芸能などのように設定が様式美のようなかたちで残るばかりで年寄りの娯楽と同様のものになってしまうのではないかと考えてしまう。
本作品について、分かり易いという点は評価できるかなと思った。
理想都市が複数存在しているがNo.6の他の詳細は不明という設定はオーウェルの作品(1984年)に似ているような。
ディストピア・アニメはルサンチマン的だったり主人公が幼かったりな作品が多いけれど、本作品も似たようなもので、その辺りに違和感を抱く。ただ、使用される言語が(1984年に設定の一つとして出てくる)ニュースピークのように、思考を限定してしまうような設定は無いので思想まで管理できていないことを考慮に入れると合点はいく。合点はいくがディストピアとして半端なつくりになってしまうので、僕の抱く違和感はその辺りにあるんだと思う。
本作品中、主人公とネズミのくちづけは割と印象的に思うけれど、これは管理社会への抵抗(或いは葛藤)として起きた行為という位置づけなのかなと思った。管理社会で人間は精神的に孤立する傾向にあり、これに抗う為の行為なのだとしたら、主人公にとってそれまで生きた社会への訣別をも意味する。そんな風に考えると主人公がロストタウンに残るって感じのことを言った部分にスムーズに繋がるかなと。
ストーリー全体としてはヒロイン?(沙布)の流れが杜撰に感じるので、もう少しその辺を丁寧に進めていればまだマシな評価ができたと思う。
個人的にディストピアものは好きなので、そろそろ冒険を犯してでも異色のディストピア作品が出てくることを願う。
凄く勉強していると感じる作品は多いのだけれど、その殆どが末節に割かれるばかりでそれでは商業的と言われて仕方ないし、消費されるのも無理はないと思う。但し、そういう状況が良いなんてことは思わない。