karinchaco さんの感想・評価
3.7
物語 : 2.5
作画 : 5.0
声優 : 2.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:----
日本を代表するアニメ映画。だが、私の感性には合わなかった。
今更述べるまでもないですが日本を代表するアニメーション映画です。
私がジブリ作品に若干の違和感を感じ始めたのはもののけ姫のころ。周りで多くの友達が絶賛していたのを不思議に感じていました。
そして、2001年にこの作品が公開されて分かったことは『宮崎駿監督と私の感性が合わなくなった』ことでした。いわば宮崎監督作品との決別の時といっても過言ではないかもしれません。
アニメ映画としての出来は、作画はさすがスタジオジブリ。どんなシーンでもきれいに動きますし、登場人物の感情が巧く動きに乗っていると思います。
背景は、室内特に湯婆婆の部屋や湯屋の書き込みはすごいし、千尋がかおなしとともに駅で列車を待つシーンの空や水は非常に美しいと思いました。
音楽は久石さんの素晴らしいBGMが物語を盛り上げますし、キャラクターもみんなユニークでとても個性的で見ていて飽きてきません。いずれも最高レベルで世界的に評価されているのがうなずける出来だと思います。
ただ、私があわないと思っているのは、シナリオの内容とかたくなに職業声優を使わない姿勢。この2点においては私の考えと決定的に異なっています。
・シナリオについて
この作品では、環境問題をはじめ、家庭教育の問題、家族のあり方について、風俗、ETCと数多くの社会風刺がなされていると思います。この詳しい内容に関してはほかのレビュアーさんやあにこれ以外の個人ブロガーさん、SNSサイトで語られています。なので私からは内容について多くを語るつもりはありません。
私が、言いたいのは「一つの作品にあまりにも多くの社会風刺を詰め込みすぎじゃないですか」ということです。作り手としては何か一つでも心に引っかかって考えるきっかけになればいいと考えているのかもしれません。
しかし、私としてはテーマを絞ってくれたほうがより伝わったのではないかと思います。
単純に私の読解力が不足していたということなのかもしれませんが。
・職業声優の起用について
ジブリはもののけ姫から主要な役での職業声優の起用を意図的に避けています。このことは宮崎監督本人からも各所で語られていることです。理由としてはストーリーの設定上、声優的な巧さよりも、声優ではない不安定さが必要。ということみたいですね。確かにこの点においては宮崎監督の言っていることは当たっていると思います。
演技をすること自体がより大げさな表現を求められるなか、アニメという表現方法はキャラの目は過剰に大きいし実写ではできないアクロバットな動きや変身など全てにおいてデフォルメした世界です。そこに求められる演技は実写の映画やドラマ、演劇以上に過剰なものを求められ続けてきたわけです。なので、アニメにおいても実写映画と同じような表現をしたいと考えている宮崎監督が職業声優の起用を避けるのは必然だったことは明白です。
実際、私的にもトトロのメイのお父さんは糸井さんでなきゃダメだと思いますし、この千と千尋の神隠しでも湯婆婆は夏木マリさん。坊は神木隆之介君でなければならなかったと思います。
しかし、それと職業声優を全く排除するということは違うと思います。ジブリ作品がどのようなオーディションをして声優の起用を決めているかはわかりませんが、選択肢にも入っていないんでしょうかね。
宮崎監督同様、ガンダムシリーズの富野監督も最近の萌え声ブームには辟易しているとされていますが、彼の場合は全く排除せず適材適所で起用してと思います。
それと、よく言われることの一つに「ディズニー作品」だって職業声優使っていないというのがありますが、こっちの場合はすべてとは言いませんがプロモーション優先という事情があるんでしょうからそれと一緒にはできません。
・総論
この作品以降、宮崎監督とスタジオジブリの目指す方向性というのは表面的には理解できなくもないんですが、私はそれを見て合わないと思っちゃうんですよね。決して面白くないというわけではないんです。だけど、相容れない。
そして、この原稿を書くにあたっていろいろ調べたのですが、この作品って映画評論家や映画ファンにはおおむね好評なんですよね。さっきの声優議論では映画好きほど宮崎監督擁護なんです。なので、宮崎監督が目指す方向性のターゲットは確実にゲットしていると思います。