101匹足利尊氏 さんの感想・評価
4.5
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 3.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
原作を凌駕し芸術にまで昇華した絶品アニメ!イタリアを喰らう!!
現代イタリアを舞台に様々な手段で〝条件付け"を施した〝義体"の少女たちに
色々な〝お仕事"をさせる乾いた設定の本作。
しばしば一期目の本作と比べ二期を黒歴史とみなすファンもいますが、
私は二期も十分に及第点をあげられる出来だったと思います。
むしろ原作者が監修、脚本した二期の方が、
義体が萌えを含んだなつき方をするなど原作に忠実だと思います。
だがこのシリーズの場合は硬派な一期がただただ凄すぎました。
作画は正直、枚数の多さも大して感じられず、コマ反復、シーン使い回しも多い。
ですが、本作は振り返りすら編集により、視聴者を惹き付ける要素として機能しています。
人物を点々と動かして作画枚数を削減しつつ、
普通に動かすより幻想的に見せる演出を繰り出して来られた時は、
彼らはまさに深夜アニメの魔術師だと唸らされました。
さらに主題歌には穏やかなメロディに退廃的毒舌を乗せる
〝グラスゴーの重鎮"The Delgados(デルガドス)の楽曲を起用。
作中でもピアノやバイオリン、オーケストラを組み込んで、
乾き切った世界に乙女の純情が上滑りする痛切を、格調高く演出します。
だが、それ以上に、本作は効果音の使い方が大変素晴らしい。
キャラが動くから仕方なく鳴る音が本作にはほとんど存在しません。
効果音すらも情報伝達、場面演出の意図を持って視聴者に迫ってきます。
〝革靴が石畳をコツコツ叩く音"。…私も気に入っています。
限られたソースで最大限魅せる。深夜アニメかくあるべきというお手本だと思います。
その深夜アニメの黒魔術で原作を越え、
ローマ、ルネサンス…。歴史と芸術文化の国、イタリア。
バイオリン、パスタ…。伝統工芸と職人の国、イタリア。
日本が明治維新の頃、ようやく統一国家をこしらえた
急造つぎはぎ国家、イタリア。
冴えない南の農村部を、北の工業地帯がおんぶに抱っこする、
南北格差の縦長国、イタリア。
マフィア生誕の地、イタリア。
複雑な表情を見せるイタリアを丸呑みしてしまった本作。
あくまで10年前の絵空事でありながら、
分離か?統合か?で揺れる今日の欧州情勢を、
イタリアから考える視点にも耐え得る逸品です。