takarock さんの感想・評価

3.6
物語 : 3.5 作画 : 3.5 声優 : 3.5 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態：観終わった

「再建物語」と「コメディ」の関係とバランス

本作は、潰れかけのテーマパークを再建する過程を
コメディタッチで描いている作品なのですが、
この手の作品というのは古今東西様々な傑作が存在します。
舞台がテーマパークでなく、メジャー球団なら「メジャーリーグ（映画）」ですし、
レストランなら「王様のレストラン（TVドラマ）」とかですかね。

そういった再建物語というのは、、
最初はまるでやる気のなかった者たち（従業員等）がプロとしての意識に目覚め、
そこから怒涛の快進撃を展開、
ほんのちょっとの運も手伝って最後は大きな目標を達成。
こんなところでしょうか。
どこまでも上昇していく高揚感だったり、
「お荷物と言われた俺達だってやれるんだ！」
といった周囲を見返す倍返しの爽快感だったりが魅力なんだと思います。
そして、本作に足りてなかったのはそこなんです。

50万人の入場者数を達成するためには
残り3ヶ月で25万人を集客しなければならないという明確な目標があるものの、
各話でキャストたちの個性だったりコメディ描写に焦点を合わせ過ぎて
肝心要の怒涛の快進撃という描写が不足しているんですよね。

各話単体で観ればコメディとして楽しめるのですが、
再建物語として全体的に捉えた場合、高揚感も爽快感もあまり感じられませんでした。

入場料30円！？終いには無料でもいいって・・・
出前でもいいのよ！？
それに秘策はサッカー国内1部リーグのクラブの現役組と引退組の興行試合って・・・
本業じゃないよね・・・

これもJリーグの試合をちょくちょく生観戦する私にとっては、
ツッコミどころ満載なんですけど、まぁいいです。
でも、入場料無料はやり過ぎじゃないですか？　30円というのも大概ですけどね。
目標入場者数を達成すれば何でもありというのは再建物語として大きくマイナス要素です。

そもそも舞台がちょっと大規模過ぎたのかもしれませんね。
街のレストラン程度の規模なら
何かのきっかけで繁盛店にという展開は無理なく進行できるのですが、
短期間でテーマパークを再建するとなると色々と無理が生じてくるというのもあり、
説得力が足りてないんですよね。
とはいえ、厳密にそれを求めるのも野暮ですし、
多少のご都合主義なんてものにも目を瞑ります。

しかし、本作には、このレビューでいくつか挙げていったような
まるで差し水のようにこちら（視聴者）の熱を冷ましてしまう箇所が存在し、
それによって再建物語の魅力の根幹部分が損なわれ、
その魅力が伝え切れていないと思いました。

結局のところ、キャラのやり取りなどのコメディ描写で
楽しむ作品という印象ですし、それ止まりなんです。
それで十分といえば十分なんですけど、もったいないですね。
「再建物語」と「コメディ」はトレード・オフの関係ではなく、
両立することだってできるわけですからね。
バランスという観点からも、
再建物語調コメディより、コメディ調再建物語の方が私は好きです。

最終話は個人的にはおもしろかったですけど、
OVAでやればいいのでは？という内容でした。
あの最終話こそが本作をよく表しているのではないでしょうかｗ
つまり、単体の話としたらおもしろいけど、全体的な視点からいうと、
12話の大団円の熱を奪う差し水のような最終話だったということです。

基本的に、再建物語に差し水は必要ないのかもしれませんね。
本作にはちょっとそれが多かったです。
そういうことを気にせず単純にコメディとして楽しむのが吉という作品です。