るるかん さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
音と感情の一体化に感動
自分はクラシカルミュージックに精通しているわけではないが、この作品のピアノの感情的な表現は見事だったと思う。上手いも下手も、激しさも柔らかさも、しっかりと音で表現できていた。生半可な演奏だったら、きっとここまでいい作品にはならなかったと思う。若い有能な演奏家の活躍の場がアニメ界にもあるということは喜ばしいし、やはり、日本のアニメは素晴らしいと思うのでした。
もともと天才的な肌の公生の身体に染みついたピアノの凄味が随所に感じられるシナリオ展開はとても感動できた。感情の乗ったピアノの演奏だけで、涙が溢れるような場面もいくつかあったし、色々あっても公生が最後に辿り着く場所はピアノで、それは故郷のような安心感や母のような包容力があったのだろう。
演奏家が何を想い一心に弾いているのか・・・その一端を垣間見られたような気がするし、弾き手の想いが音と一体化することで人々に感動を与えるのだと思う。演奏をどう聴けば、もっと楽しめるのか理解できたような気がします。
かをりと椿の存在はこの作品の肝なのでしょう。公生との間にある大きな障壁である音楽に嫌悪感のある椿と、幼き頃の公生のピアノに感動してバイオリンを始めた音楽の大好きなかをり。どちらも甲乙つけがたい存在で、公生にとっては大切な存在。
幼き公生を見守り続け、公生への恋に気がつく椿の気持ちと、公生が苦悩している時に現れ、共に演奏することで公生を元気づけるかをりの気持ちの大きさは天秤にかけても同じくらいの重さではないかな・・・。
後半はかをりへの想いに偏りかけたけど、かをりを含め演奏家として成長した自分が、多くの関わった人たちによるものだとピアノは気付かせてくれる。公生にとって、演奏(ピアノ)とは成長する場所であり、自分と語り合う場所なのだ。演奏家とはそういうものなのだ・・・という捉え方で間違いないと思う。
話の内容は重たく、演奏時の描写は深く、天才肌の芸術家の世界が感じられて好感が持てるシナリオだったが、随所にコミカルさを出すための不必要な蹴り、殴るなどのシーンが若干私には不快だった。かをりにも椿にも、そういう描写の必要性は全く感じなかったので、そこが減点かな。
こういう題材は、いろんな人にハマり易い内容だから手抜きな部分があっても楽しめるのかもしれないが、この作品に関しては演奏もプロのそれだし、ピアノが豊かに感情表現をする楽器だと気付かせてくれる。
私が一番感動したのは、公生が色々な想いをこめて奏でるピアノの音の力強さ・荒さ・繊細さ・柔らかさ・素直さ・はかなさ・優しさ・感謝等々が本当に音と感情が一体となっていて、素敵な響きであったこと。公生の気持ちを考えながら演奏を聴いていると、自然に涙が溢れてしまいました。
見て良かった作品です♪