しゅんこう さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
絶望の原因を解消する希望。
絶望の原因を解消する希望。
蒔かれた種。
高校生がたった二人で東京の街に爆弾テロを仕掛けていく。
舞台は現代。近未来や別世界ではなく
現実的なものとして描かれています。
1クールですっきり見終われます。
作画と音楽の質はすばらしく
全話通してみてもまるで劇場作品のようです。
キャラクターデザインもモダンで
すっきりとした形で好みです。
{netabare}
巧みに機械や爆弾を操作する様は高校生2人の能力が高く
尋常ではないことがわかるように描かれています。
また二人は動画投稿サイトに犯行予告をアップして
謎解きゲームを警察に要求しています。
これに優秀な一人の刑事が興味を持ち
論理的な理性的な推理を武器に
静かに二人を追いかけます。
物語は自然と二人の目的と隠された生い立ちに
焦点が合わさるようになります。
途中から米国からの介入も入ってくるようになり
自分たちと同じ力を持った思わぬ刺客が
物語の速度と緊張感を高めます。
弱くておとなしいどこにでもいる
普通の女の子のように描かれているヒロインが
またなんともいえない味わいを出しています。
非常にタイムリーな話題、テーマに
真正面から取り組んだオリジナルアニメです。
原作中心のアニメが多い中
独自に展開されるオリジナルアニメのよさがキラリと光っています。
{/netabare}
以下は少し長めの感想とレビューです。
暇な方はどうぞ。それ以外の方は撤退を。
{netabare}
テロ自体は一般的に
「非難されるべき行為」
として多くの人に認識されています。
その根拠となっているのが
不特定の直接関係のない人も標的となることから
強い道徳的・倫理的側面からの批判です。
反道徳性・反倫理性と言い変えてもいいでしょう。
しかし、
この考え方をもとに
自分と異なる立場の者を
すぐにテロリスト呼ばわりする風潮は
危険な感じがします。
もちろん不特定多数を巻き込む
残酷な暴力行為は許しがたいものです。
そもそもテロは複雑に暴力が絡んだ現象ですが
その中身は物理的なものもさることながら
「社会に何らかの要求を意図して行われる暴力的な行為」で
「心理的にその衝撃を与えて揺さぶること」
がその中心的な内容だと思います。
だとすると発展途上の弱い国から経済力のある強い国が
便宜を図るという名目で有利に資源や労働力を搾取している状態も
一方では限りなく暴力に近い行為と考える人が
出てきても不思議ではありません。
毎日300円にも満たない金額で生活してる人が
今も世界の半分近く存在していることは
テロの根本に貧困と絶望があると想像するに難くありません。
敵対する大国はテロ根絶といって戦争にじゃんじゃんお金を使っていますが
そのお金を人道支援に回したほうが何倍も
効果があるように思えます。
貧困がなくならないとたぶん永遠に
テロと戦い続けることになると思うのは私だけでしょうか。
ちょっと脱線が過ぎてしまいましたが・・・
この絶望感は人を違う価値感へと
導く呪いの様なものです。
主人公たち高校生の2人は幼い頃に
圧倒的な強い立場から
多くのものを奪われました。
トラウマや絶望を受けた人が
すぐにテロを起こすわけではありません。
しかしながら深い絶望は
人を渇望させます。
しかしもその人の絶望は
その人しか理解できません。
余命も少ない高校生。
誰からも認識されない存在。
不安と孤独。
少しだけ強い力。
どうでしょう。
希望を求めて行動を起こす
理由には十分な気がします。
もちろん行為や手段はとても許されるものではありません。
でも自分たちを知ってほしかった
という願いは誰でも持っているものです。
だから残響なのでしょう。
薄く、儚く、消えてしまう声が
街には溢れているような
せつない視聴後の気持ちでした。
{/netabare}