しゅんこう さんの感想・評価
4.4
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
ただの猟奇アニメではありませんよ
シビュラシステムなる
人間の心理状態や性格傾向の計測を可能とした近未来が舞台。
理論上、犯罪を未然に防ぐことが可能になった社会。
潜在的に犯罪を起こす可能性のある、
または起こしつつある犯罪者と
それを取り締まる刑事の物語です。
今回はちょっと長いネタばれレビューです。
読むのが苦痛な場合は飛ばしてください。
{netabare}
①物語の内容とその面白さ
私たちの社会は犯罪を未然に防ぐことはできない。
このアニメの社会では常に心理状態をスキャンされることで
心理状態を色相で表し、にごっていれば
例え犯罪を犯していなくても
潜在犯として犯罪者と同等に扱われます。
施設に収容され、色相が戻らない限り、色相を戻すためにカウンセリングなど受けながら狭い部屋の中で生涯を送ることになります。
なので市民は安心して街を歩くことが出来るわけです。
ストレスのない安定した人たちしかいないのです。
これもシビュラシステムが完全に近いシステムで信用に足りえる
と全国民・全市民が信じているからです。
確かに機械は人間と違って間違いは起こさないでしょう。
ルールや規則に逆らうことはできません。
言われたことを効率よくこなすことが出来ます。
人間には真似できないことです。人間じゃない機械だからミスはしないと。
しかし、そんな社会でも犯罪が起こります。
完全にストレスをなくすことが難しいからでしょう。
深刻な犯罪は上記のシステムが管理しているため
殺人などの重い罪を犯す前にチェックされ、未然に防がれます。
主人公たちはそんな潜在犯を取り締まる刑事です。
また、取り締まる執行官は犯罪係数の高い潜在犯です。
FBIに協力する犯罪者と同じです。
犯罪者が犯罪を取り締まる、という一見効率的ですが
この物語では使い捨てを意味するその扱いに
シビュラの社会の歪(いびつ)さが現れてます。
人間が自分たちで犯罪と向き合わなくなった世界
自分たちで物事の判断をしなくなった世界
手塚治虫の火の鳥などにも数十年前に描かれていますが
それは徹底した管理社会、自分たちの人間性や尊厳を
放棄した世界です。
描き方は違えど木城ゆきとの銃夢における
人々がいつでも自殺できる世界
最終自殺装置の存在を合わせて考えてみると興味深いです。
しかもこれは私たちの現代社会においても現在進行形で
行われている内容なのです。
犯罪を自分とは無縁のものと思いどこか遠くのフィクション
と思い、普遍的な常識やルールに従うことを互いに監視しながら
強制される社会。
でもそんな普遍的な常識は本当にあるのでしょうか。
主人公たちに敵対する槇島がその矛盾の象徴として
問いかけてきます。
社会とは何なのか?
犯罪とはなんなのか?
人間とは?
誰もが自分だけは大丈夫と思っている
その最後のよりどころまで
槇島は揺さぶってきます。
免罪体質というシステムから完全に外れた存在としての力を使って。
システムから存在を認められない犯罪者と免罪体質が同じなのは
非常に皮肉です。
そんな極限状態の中、監視官常森茜と執行官の狡噛慎也がお互いに信念をぶつけながら事件を追っていくところにこの物語の面白さがあります。2人はまるで先の見えない真っ暗な海を照らす灯台のようです。
私たちの社会は犯罪を未然に防ぐことはできない。
このルールが変わる時が果たしてやってくるのでしょうか。
単に社会体制の是非を問うのではなく、人間そのものが焦点になっていると思うアニメです。
②作画・キャラクター
デザインは天野明のシリアスでかわいらしいキャラがとても魅力的です。
登場キャラクターも個性的でそれぞれの持ち味を生かして行動しています。
戦闘場面のドミネーター使用は近未来を感じさせます。ふんだんに使われるCGはもはやお家芸ですので安定しています。
室内の小物、背景もよく書き込まれています。
③声優・音楽
豪華ベテラン陣、力のある声優さんたちで
雰囲気も合っています。
音楽もかっこいいです。12話からのEDが特にお気に入りです。
④まとめと補足
全体的にこれはすごいなあと特に感じたことは
登場する犯罪者の心理・心情がよく表されていたことです。
犯罪に至る過程や犯罪の手口など詳細に描かれています。
誤解を恐れずに言えば
芸術や音楽、肉体の受容感覚に通常ではない異なる認知の仕方を
感じます。
総集編もありますので
是非見比べてください。
{/netabare}