ワタ さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
小細工なしの京アニの本気、アニメ映画史上に残る傑作
上映時間は163分。アニメ映画としては非常に長い尺です。
原作の尺からして2時間以内に収めることもできたと思いますが
世界観やキャラの心理を至極丁寧に描写した結果でしょう。
物語の随所に盛り上がるシーンがあり、中弛み感じることはありません。
TVシリーズ同様キョン視点で物語は進行。いつもの日常から非日常への移り変わり、
恐怖、葛藤、苦悩、そして決断。キョンに感情移入できるように作られています。
キョンの感じる「痛み」や「喜び」がダイレクトに伝わってくるし、
キョンが現状を打破しようとすれば必死に応援したくなります。
本作のメインヒロインである長門有希。
本来無機質なキャラである長門ですが、消失では人間らしい表情を見せてくれます。
恥じらう仕草一つ取っても実に可愛らしい。
仕草や表情の変化を繊細に描くことでキャラの魅力を十二分に引き出す、これぞ京アニクオリティ。
BGMは映画らしくクラシックの曲が多いですね。物語が大きく動き出すシーン、
逆に静寂漂うシーンにおいても実に効果的な役割を果たしていると思います。
そして何より背景美術の美麗さは圧巻の一言。
ラストの病院屋上でのシーンは必見。舞い散る雪、夜景の美しさに感動してしまう程です。
見るべき上での注意点は、事前にアニメ一期を視聴しておくことでしょうか。
要はハルヒの基本設定を知ってから見た方がいいということです。
初見だと置いてけぼりを食らってしまうかもしれません。
TVシリーズでは、作品に様々な仕掛けを施すことで注目を浴びようとする姿勢が見られました。
しかし本作「消失」は小細工一切なし。純粋にシナリオ、アニメーションのクオリティのみでの勝負。
結果、アニメならではの魅力を付随させつつ、シリーズ最高傑作と評される原作を完璧に再現。
京アニの本気をまざまざと見せつけてくれました。アニメ映画史上に残る傑作だと思います。