「ガッチャマン クラウズ(TVアニメ動画)」

総合得点
69.6
感想・評価
698
棚に入れた
3386
ランキング
1781
★★★★☆ 3.8 (698)
物語
3.7
作画
3.7
声優
3.8
音楽
3.9
キャラ
3.9

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ネタバレ

田中タイキック さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 3.5 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

みんな人の不幸がだ~い好きなんでしょ?メシウマーーーーーーーーー!!

2013年7月~ 日本テレビにて放送
全13話(1~12話+12話DC版)

ガッチャマンの名を冠しながらもその作風は既存のガッチャマンとはまるで異なり
CGで描かれたアバンギャルドで機械的なギミック満載のスーツに
ビビットな色使いと洗練されたキャラクターデザイン
ネットワーク社会の、善悪の線引が曖昧であるがゆえの脆弱性
単純な勧善懲悪ではなく対立構造がSNS上で展開されているストーリー
知る人ぞ知るっていうには有名すぎるかもしれないけど
奇才であることは間違いない演出家、中村健治さんの監督作品


最初こそ突然、能力を与えられ秘密結社ガッチャマンとして
人知れず市民に危害を加える異星生命体を倒していくっていう。
変身ヒーロー物の基本プロットをなぞっているけど
主人公がその異星生命体と何故か通じ合っちゃった!
実はその生命体は悪いやつでもなんでも無いってのが判明して
さて、ガッチャマンのやること無くなっちまったぞっていうのが序盤の話。

その一方で、この世界で一番流行ってる世の中をアップデートするSNS GALAX(ギャラックス)というのが存在して
人の善意と善意を総裁XというAIアプリケーションが接続し相互扶助でもって世界をより良い方向にアップデートしようとする。
GALAXの創始者 爾乃美家累(にのみやるい)が掲げる「世界をアップデートするのはヒーローじゃない。僕らだ。」
そのスローガンを元に一般人は各々できる事を全うしながら成果を出していき少しずつGALAXのSNSとしての有用性を示していく。

今作の主人公 一ノ瀬はじめは「ガッチャマン」でありながら「GALAX」を作中最も有効に使っているヘビーユーザーであり
両陣営にいながらも両方の危うさ、脆さの問題を提起するような存在

そして「ガッチャマン」でもなければ「GALAX」のユーザーでもないネット上の悪意の象徴 ベルクカッツェ

ガッチャマン、GALAX、ベルクカッツェの三勢力が戦うって話が基本になってくるけど
単純なドンパチバトルだけでなく、人々を守るヒーローの必要性
群衆をまとめるリーダーのあり方、SNSで繋がった民衆は本当の危機にどうあるべきか。
それらの要素をメタ的に、皮肉交じりに、そしてかなり王道に描いた作品。

そして実はガッチャマン達の真っ直ぐな人間的成長と
逆境や恐怖を勇気でもって立ち向かっていくという
熱い要素も兼ね備えてるからテンションめっちゃ上がる作品でもあったりです。


【総評】
現代の延長線上にあるようなSNS描写とそこで生きている人間のリアリティ
ついつい自分たちのSNS事情と置き換えて考えてしまうような作りであるにも関わらず
後半の加速度的に盛り上げて突っ切っていくストーリー展開が考えるのを止めて夢中にさせてしまう。
初見は物語に流されるままに、2週目以降じっくりと思考を巡らせるのがオススメです。


【精神的な俺TUEEE主人公のはじめちゃんってすげぇよなぁ!?】
{netabare}
一番好きなキャラは?って聞かれたら皆さん様々でしょうけど
一番気になったキャラは?って聞かれたらどうでしょう
私はやっぱり主人公の一ノ瀬はじめです。それほど異質な存在でした。
1話で内田真礼さんの手帳フェチな変態演技に興奮してる場合じゃなかったでコレ・・・

エキセントリックすぎる行動と核心を突くような発言をノーモーションでぶん投げていくスタイル。
最初はただの変人にしか見えない一方で、常識にとらわれない視野の広さと思慮深さを持ち合わせた
どこか物事の本質を見抜いているような天才肌タイプ。
周りにみるみる影響を与えていって仲間の成長のトリガーとなる存在にまでなるはじめちゃん
精神的な俺TUEEE主人公って感じでしょうか。かなり完成された人物であることは間違いないです。

そして彼女は劇中で最も考え、周りに考えを促す存在でもあります。
清音とのお年寄りに席を譲る譲らないの会話から始まり
ガッチャマンメンバーそれぞれ、爾乃美家累、総理大臣、SNSで繋がった人々、そして自分自身にも
凝り固まった固定観念に逐一なぜ?どうして?と疑問のハサミを入れ
常識という名で停止してしまった思考の稼働を促し続けていました。
ゲーミフィケーションを用いて混沌とした立川をGALAXユーザー自身で収束させた終盤
方法は違ったが累の掲げた理想、誰もがヒーローになりえるんだ!世界をアップデートするのは僕らだ!
そんな想いは実を結び、全てが丸く収まったように見える状況であっても彼女だけは疑問を投げ続けます。
「ヒーローってなんすかね♪なんなんすかね♪なんすかねー♪」
そんな歌を口ずさみながら。

そして彼女はどんな場面・状況でも肯定、否定を許さない
どこまでもフラットで合理的な人物に描かれていたのも印象的
それは己に課したルール的なものなのか、そもそもそんな感情持ち合わせてねーよ!な感じなのかは分からないけど。
仲間がやられてしまった時も、問題の根本はそこじゃねーと心配する素振りも見せなかったり
うつつが部屋に来てモジモジしながら「一緒に…(折り紙したい)」と好意の姿勢を見せた時も
「それカエルっすよね」と好意を受け取ったような態度ではなかったこと
ベルクカッツェと相対した時も、10人いたら10人が悪だ!と断定するほどの悪意を見せられた彼女が
やっとの思いで絞り出した言葉が「寂しくてたまんないっす」というもの。
肯定も否定もなく好意や悪意に対してどこまでもフラットな姿勢で受け取ってしまう彼女は
私の目からはひどく孤独に見えてしまいました。
学校やGALAXにどれだけ友達がいようとも
11話でガッチャマンメンバーがはじめに対する想いを独白している時も
「はじめのおかげで~」「はじめはすごい奴だ」と本当の意味で彼女を理解している者はいない感じでした。

ヒーローというのは常々
守るべき者から一方的で無遠慮な期待を押し付けられ
戦うべき相手から憎悪や悪意を向けられ
そんな状況に耐えながらも弱みを見せることは許されない
ヒーローというのは本質的に孤独なものです。
「ヒーローのあり方とは?」と問うた作品で最初から最後まで
彼女は誰よりもヒーローでした。

そして最終話、諸悪の根源であり悪意の火種である存在を
何とかしようと向かったのはやはり、一ノ瀬はじめ。彼女だけでした
{/netabare}


【12話DC版を見ての感想】
{netabare}
TV版の最終話では不明瞭な部分の補完であったり
ぶつ切りに展開されていたエピローグの大幅な追加で話の整合性をもたせたDC版
じゃあDC版だけ見ればいいのか言われればそうではなく
カッツェとデートの約束をする会話やO.Dの変身が無いので
オリジナル版とDC版は独立したエピソードだったなぁという印象

最大の見所はやはり、カッツェと”デート”をするシーン
「僕は僕だよ。なにがあっても」と母親に電話する場面から
カッツェを体内に取り込むまでの詳細なあらましが描かれていたDC版。
TV版だけの印象では、はじめはもう以前の自分には戻れないという覚悟のもと
自己犠牲でもってカッツェを取り込み、いよいよ誰からも理解されない存在になってしまった。
本当の孤独になってしまったはじめちゃんは、それでもいつも通りの笑顔で
ガッチャマンであり続け、ヒーローであり続けるのでした。
という悲劇的な終わり方なのかと思いましたが。

これは孤独なヒーロー、一ノ瀬はじめの救済だったのでは。と感じました。
「カッツェさんのこと好きっす、でも許せないっす、どうしたら良いか考えてたっす。」
荒らしはスルー精神で民衆は悪意と向き合うことはしなかったのに
彼女だけは思考を続けて、それでも分からないから直接話しに来た。
本来、人間はどんな博愛主義でも聖人君子でも必ず悪意をはらんでいるもの。
だから向き合おうとしない、悪意というのを本質的に理解できてしまうから。
それは己自身と向き合うことであり人間誰しもそれは怖いことです。
いくら向き合っても理解できない彼女は完全無欠なヒーローではあっても
人間としてはひどく不完全な存在です。それはカッツェも同様で
「カッツェさんは僕っす。」
カッツェとの対話で本質を、自分と同じ不完全で孤独な存在だと理解します。
だから一緒にいようよ。そうすれば孤独じゃないしお互い人間らしくなれるよ!ってことなんじゃないかと。
カッツェとキスした瞬間、ガッチャマンメンバーやクラスメイトの顔が連続して描かれます。
これははじめちゃんに好意をもってる人物。そして悪意の象徴カッツェを体に取り込むことで
好意も悪意もちゃんと受け取れる人間らしさを手に入れたのでしょう。
一見、諸悪の根源であるカッツェを慈愛でもって許し救済したかのように見せて
自分自身の救済だったという。すごくポジティブな話だった。
完全無欠なヒーローから、ごく普通の女子高生。
すなわちクラウズ(群衆)になれたってことですね。
DC版だけエンディングの歌詞が2番になっています。サビの部分を引用すると


ひとりじゃつかめない 本当の自由は 君と創る未来にあるはず


人間らしい自由は君(カッツェ)と創る未来にあるっす!っていうはじめちゃんのメッセージ
なんだかカッツェと恋人になったような感じだな(笑)
とにかくDC版を見る前と後で、ここまで真逆の印象を持つとは思いませんでした。
見てよかった。お気に入りになりました。
書いてる途中から、はじめちゃんの解釈が根本的に間違ってるような気がしてきたけども
いいもん!僕はそう思ったんだから!!

2期のタイトル「insight」
悪意を手に入れたはじめちゃんがその悪意と向き合うような展開かなと勝手に予想。
とにかくDC版を見て180度印象が変わった人間もいるので見てない人は見てね。ってことでした!


ガッチャ!!{/netabare}

投稿 : 2015/07/11
閲覧 : 509
サンキュー:

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