STONE さんの感想・評価
4.5
物語 : 5.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
恋するがゆえの苦しみ
原作はプレイ済みと言うか、テレビ放映時は未プレイだったが、アニメ描写部分が原作のごく
一部だと知り、先が気になってプレイしたといったところ。
2とは銘打ってあるが、「WHITE ALBUM」(以後、1と表記)とはストーリー、キャラの
繋がりはないので、1未視聴でも理解にはまったく問題なし。
ただ、世界的には繋がりがあるため、1で扱われた曲や、プロの歌手として知名度があるで
あろう森川 由綺や緒方 理奈の名やビジュアルが出てくるのはちょっとした嬉しさがある。
劇中歌の「WHITE ALBUM」がENDクレジットにおいて、作者が由綺や緒方 英二となって
いるところはなかなか凝っているなと。
序盤はバンドが結成する過程が描かれているが、ギタリストが北原 春希であることを知って
いた冬馬 かずさ以外は純粋に歌や音に惹かれており、バンドとして集まっていくことに
説得力がある。この辺の流れは自然かつドラマティックでいい。
以後は実質、春希、冬馬、小木曽 雪菜の三人の物語といった展開。飯塚 武也を始め、脇役も
バイプレイヤーとしてはいい味は出しているけど。
1がキャラの出し過ぎで話が散漫になり、更に各キャラの描き方が浅かった印象があったが、
こちらは三人に絞った分、心情などがかなり掘り下げられている。
特に印象的だったのはあまりモノローグに頼ることなく、表情や仕草でキャラの心情を描く
演出。特に視線の動きにそれが顕著で、「目は口ほどにものを言う」を地で行っている感じ。
それ以外にも何気ない会話やキャラの部屋の描写などに、キャラの裏にある心情を示唆する
ものが多く、とにかく気が抜けない。
三人の楽しい日々は学園祭のライヴでピークを迎えるが、ここのライヴシーンはちょっと。
端的に言うと「ライヴ感のないライヴ」といった感じで、ここは中盤のハイライトとも言える
シーンだけにもっと頑張ってほしかったかなあ。
学園祭ライヴと言うと他作品で印象的だったもの(「涼宮ハルヒの憂鬱」、「けいおん!」、
「坂道のアポロン」など)があるため、どうしても見劣りしてしまう。
以後は雪菜の春希への告白を機に複雑な人間関係が最後まで続くが、この辺は恋するがゆえの
苦悩といったところで、更に単なる三角関係ではなく、冬馬と雪菜との間には恋愛に負けない
ぐらいの友情が絡んでくるゆえに余計にやっかい。
展開としては重いことは重いのだが、話がよくできているだけにとにかく先が気になる。
結局、三人とも心に傷を負うことになるが、この結果に対してはまさに雪菜が言うところの
「どうして、こうなっちゃうんだろう」といった感じ。
論理的には「誰が悪い」みたいな犯人捜し的なことはできるのだろうが、感情的なことも考慮
すると「そういうものじゃないだろう」という気が強く、仮に他の結果になったとしても
いずれも心の痛みを感じることになりそう。
そういう意味ではなるべくしてなったとしか言いようがない感じ。
春希、冬馬、雪菜に関してはいい点も悪い点も掘り下げられているためか、いずれも魅力的で
更に生々しい印象。
この作品、展開自体は現実的とは言わないが、それに対するキャラの行動や考え方が現実的と
いった感じでその辺が生々しさを感じるのかな。
それゆえにかなりキャラに感情移入してしまう部分が強く、そういう意味では観ていて辛い
部分も多分にあった。