無毒蠍 さんの感想・評価
3.2
物語 : 3.5
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
絶望に覆われた世界で主人公とヒロインが愛と希望を育む近未来SFパニックアクション。
主人公の海堂祐司は治療法の確立されていない病気に感染しますが
未来の医療技術に期待し、2009年に人工冬眠に入ることを選択します。
それから22年後…西暦2031年、未来へ夢と希望を抱き眠りについたはずの
彼が目覚めた世界は謎の怪物BLUEに支配される荒廃した地球だったのです。
状況を理解する間もなくBLUEに殺されそうになってると一人の少女に助けられる。
彼女の名はマリーン・エンジェル。
祐司のように眠りについた人間、
通称スリーパーを回収し宇宙にある施設セカンドアースに連れていくのが任務だと言うが…
かくして目覚めたばかりの祐司はマリーンをはじめとする
スリーパー回収部隊の面々に保護されセカンドアースを目指すことになるのだった…
というお話。
全26話と2クール分なんですが内容はそんなに詰まってません。
簡潔に説明すると、セカンドアース目指す→セカンドアースで一波乱→地球に戻り終了って感じです。
感覚的には2クールアニメというより二時間の映画を26話使ってやりました、という印象。
26話あるんだけど物語は二時間映画くらいの動きしかありません。
進行が丁寧と言えないこともないし、テンポが悪いと言えないこともない。
大抵の作品は1話ごとに見せ場を用意してたりするけど
この作品はそういうのじゃないです、淡々と終わってく話も多く、
話数にとらわれず全26話で一つの作品として評価してくれというスタンスに感じました。
退屈って感じはそんなになかったです、淡々としてるから退屈ってわけでもないですし。
パニック映画のような人間と未知の怪物たちとの戦争なので設定だけで盛り上がる部分はあります。
主人公の祐司は絶望に覆われた世界で目覚めることになり、
マリーンたちに連れられ宇宙を目指すことになるのですが
序盤の見所としては祐司とマリーンとの価値観の相違にあります。
マリーンは出会った当初は非常にクールで感情が無いような機械的な女性として描かれています。
そのことで何度か祐司と衝突することもありました。
マリーンは任務最優先と考える女性で祐司を助けるのも任務のため、
彼が希少なサンプルだから助けるという冷めた思考をもっていました。
物事に関して深く思考することはなく、部隊の人間から誘われれば性行為の相手すらします。
それはマリーンに限ったことではなく、少なくとも部隊の人間にとっては比較的当たり前のことのようでした。
女性が性処理を担ってるというわけじゃなく、お互いに生きてる実感を得るためにする行為ということなのでしょう。
少なくともマリーンは嫌々しているという印象はなく、そういった実感に基づいて行動していると言ってました。
そんなマリーンが祐司と出会い変わっていくのがこの作品一番の見所でもあり、大きなテーマになってます。
彼女は祐司と出会ったことにより「違和感」をおぼえるのです。
今までのような感覚で性行為を行う事への違和感、上層部の祐司の扱いに対する違和感。
いままで人形のようだった彼女が人間らしくなっていく様が魅力的な作品。
観終わってみれば最終的に一番人間らしくなっていました。
逆に祐司は中盤からどんどん悪い方へと変化していき、
彼をマリーンが正気に戻すというのが中盤の見所です。
任務最優先だった彼女が組織の意向に背き、
祐司を救うために奔走する姿は出会った当初の姿からは想像がつきません。
大群の怪物を相手に銃撃戦を繰り広げる本作は、
さながらTVゲームの地球防衛軍といったところなんですが
そこに秘められてるテーマは「愛」と「希望」でした。
絶望に満ち溢れた世界で愛を育む祐司とマリーンはSF版アダムとイヴかな。
登場人物の大半が死ぬし、性描写は露骨だし、
今風ではないんだけど、だからこそ一見の価値ある作品だと思います。
少なくとも本作の祐司とマリーンのベッドシーンは美しかったと思います。
マリーンの「生きてる実感」を得るための性行為という描写があるからこそ
終盤での祐司との「愛ある」性行為が際立つのではないでしょうか?
内容は荒削りで陳腐かもしれないけどB級映画を観てる感じで結構面白かったです。
【B+75点】