plm さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
口先と心根の混じり合い
見栄を張るため嘘を塗り重ねるオオカミ少女と、イケメンだけど性格は……の黒王子が織り成す、
「別冊マーガレット」より少女漫画原作の恋愛コメディ作品。
これがまた予想外の面白さで、2014秋アニメの中でもトップクラスのお気に入り作となった。
■常軌を逸した主人公、篠原エリカの愚かさ
この作品のいきなりぶっ飛んでいるところは、主人公の向こう見ず馬鹿さ加減である。
普通の作品では、主人公は「どこか欠点や未熟さがあっても根は良いやつ」のような描かれ方をする。
が、この作品はまるで擁護できない根っからの愚かさを貫き通し、描ききる離れ業をやってのけた。
その場の勢いに任せ、嘘に嘘を重ね、さらには単純で騙されやすい主人公。
しかし、クラスメイトの人物たちもかなりひどい。低レベルの争いを繰り広げる恋愛脳。
類は友を呼ぶというが、呼ばれてきたパターンなのか。
前期の少女漫画作品「アオハライド」では"友達ごっこ"と思いっきり否定された関係を、だが続ける!
アオハライドがあまりに清らかすぎたことを知る、しかしこのギャップが面白すぎる展開だった。
■目先の欲望と浅はかな打算に塗れた、偽りだらけの人間関係
篠原エリカと周囲との関係性は、常に危うさが漂っていた。
唯一の良心・三ちゃんの存在も、エリカがいかに危ういかを際立たせる照明と化し、
どこで致命的に踏み外すのか、どこでツケが回ってくるのか、そんな緊張感に満ちていた。
そう、その「緊張感」こそが絶好のスパイスとなって面白さを引き立たせていたと思う。
驚きや緊張感、登場人物の真剣さ・切迫感があるからこそ、展開が面白い。
今になって篠原エリカの愚かさこそが、主人公としての適性だったのではないかと気づく。
物語の中で問題の中心にいるから主人公なのであり、トラブルメイカーの方が良いともいえる。
加えて、この主人公は少々意地汚くても単純馬鹿だから人間関係がドロドロしない、
しかも自業自得だから多少痛い目を見ても心が痛まないという、
見る側にとっては精神衛生上とても良いキャラなのであった!
この子のおかげで、ハチャメチャでとてもコミカルなストーリーが展開されたといえよう。
■口先だけじゃない、深みのある人間関係を望む黒王子
オオカミ少女のキャラの魅力もそうだが、黒王子こと佐田恭也の魅力もまた然り。
少女漫画作品で共感できる男キャラというのも珍しいが、このキャラは実にそれがしやすかった。
というのもこの黒王子、至極まともな考え方で、一定ラインの常識を逸脱せず節度のある人物。
内向的な性格で、他人とあまり深く関わろうとしないあたりもどこかリアリティがある。
上っ面の浅はかな人間関係を嫌う一方で、同じレベルの理解者を求める淡い期待のようなものを感じた。
けれど、そんなものエリカが叶えらるはずもなく、表面上のものばかりに騙される醜態を晒すばかり。
でもそんなことも繰り返すうちに、情が芽生えるものなんだろう。
自分を折り曲げて、エリカを受け入れることにした、そんな恭也の変化が窺い知れる。
この作品、どちらかといえば主人公・エリカは「まるで成長していない……」って感じだが、
恭也は大人になって成長した、という印象を持つ。
"黒王子"なんていうけれど、恭也くんはわりと最初から良い奴だったと思う。結構優しい。
☆まとめ☆
恋愛ものというと、青春過ぎて鼻につくみたいな作品も多々あると思うが、
本作は序~中盤と非常にコミカルで、シチュエーション的面白さや人物のリアクション的な面白さ、
想像の斜め上をいく展開に驚愕したり笑ったりして、単純に観やすく掴みの良い作品だと思う。
関係性進展によって味は変わるが、キレのある展開は変わらず終始楽しめた。
繊細な良さというのもあるけれど、猪突猛進な良さもあるなと感じさせてくれた怒涛の面白さだった。