fluid さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
難しい描写が楽しめる名作アニメ
間違いなく名作ですね。
1年おきくらいに何度見ても面白いです。
最近の低予算、量産アニメに慣れた状態で久々に視聴すると、昔のアニメなのに何だこのクオリティは!と驚かされます。
難しいとか、アニメなんだからもっと分かりやすくといった感想も多いようですが、個人的には難しい方が好きです。
恋愛もの、推理もの、先が読める作品ほどつまらないものは無いですね。
分からないからこそ面白い、そんな楽しみ方ができる人向けのアニメです。
なぜ名作なのか、それは上げるときりが無いので省きます。
しいて言うなら支持者が多いこと、それ自体が名作であることの証。
■なぜ名作を楽しめない人が居るのか?
支持者が多いからと言ってすべての人間が面白いと感じるかというと、そうではなく、当然つまらないと感じる人もいることでしょう。
ただし、「自分は楽しめなかった」と表現するのは分かりますが、この作品はダメだなと見下す評価はちょっと違いますよね。
大勢が認めるものに対して違和感を感じるのであれば、自分が特殊なんだという結論に至るのが普通なのではないでしょうか?
では、なんで楽しめない人がいるのか? それには2パターンあると思うんです。
それは、理解できなくて楽しめないパターンと、理解できるけど超越し過ぎて薄っぺらく見えるパターンです。
名作の場合、ほとんどが前者でしょう。
まあ、一言で言うなら趣味の問題ですね。共感できるかどうか。
ピカソやゴッホの良さなんて凡人には分かりませんよね。絵を描く技術なんて知らないわけですから理解できないのは当然です。
書道、宝石、ファッション、論文、酒の上手さ、なんでもそうです。それらは経験者にしか分かりません。
この世は一人の人間では理解の及ばないような素晴らしさで満ち溢れてるわけです。
大勢が指示する作品、つまりは大勢が理解し良いと評価している作品なのですから、そんな作品の理解を超える頭脳の持ち主なんてめったにいないはずです。
それにもかかわらず名作に対して見下す評価をする方は、少数派の高度な頭脳の持ち主か、理解できてないことにすら気づかないバカか、どちらかですね^^;
■このアニメに必要な理解力とは?
自分にもすべて理解できているわけではないのでしょうけど、まず間違いないのが。
・物理法則の理解
・人生経験
・哲学
といったあたりでしょうか。
これらのいずれか一つでも理解に乏しいとこのアニメは楽しめないと思います。
このアニメはファタジー設定が現実の延長のように感じる点が良いですね。
実際の物理や不確定性原理などSFをよく理解している方が描いた作品ということが良く伝わってきます。
端的に言うと、将来実際にありえそうなファンタジーということです。それが人の興味をそそるわけですね。
この点が、物理に詳しくない視聴者には伝わらない面白さなんだと思います。
あとは、かなり細かい心理の変化や哲学が描かれた作品なのでその点についても理解力がかなり要求されます。
ちなみに、子供が子供向けアニメしか楽しめなかったり、大人が子ども向けアニメを楽しめないのも同じですね。
大人か子供か?それはどこで決まるのか?
外見や年齢? いやいや、内面的な精神の年齢が重要なわけです。
人は成長とともに知識や経験を身に付け理解できる範囲が広まります。
ただし、この成長というのはレベルアップのような段階的なものはないですし、全人類が同じように線形的に成長するわけでもありません。
人それぞれ理解できる分野が異なり、さらにはその理解の深さも異なります。
人それぞれの理解力の違いが作品を楽しめる人、楽しめない人の線引きとなってるわけですね。
例えるなら、小さい子供がつくウソは中学生や高校生にはお見通しですよね。
そして、中高生がつくウソは大人にはお見通しなわけです。
そんなひねりの欠片も無いような作品を見ているような感覚、といえば伝わりますでしょうか。
あと、旦那がつくウソを奥さんが見抜くのも同じことでしょうかね?(笑)
結婚生活という名の経験から理解力UPみたいな。
このアニメはかなり理解力を要する頭脳派な視聴者向けのアニメ、なんだと思います。
そして頭脳派な客層が多いからヒットした、ということなのでしょう。
ただし、奥の深い頭脳派のアニメがかならずしも名作となるわけではなく、
ものすごく単純で分かりやすく伝わるアニメというのも、同じレベルの理解力の視聴者が世の中に多ければヒットする可能性は大いにあります。
そういった客層もあるということですね。
極論を言うと、アニメ見る人間がみんな子供ならそんなに難しいアニメ作る必要ないんですよね。むしろ酷評されちゃったりもするんじゃないかな。難しい!とかね。
まあ、おそらく、ゆとり社会のひずみがアニメ業界にも表れてるということなのでしょう。
これからは、難しさより、分かりやすさ、そんな客層を踏まえたアニメが増えていくのかもしれませんね。
今後ゆとり層が増えれば、一般の人でもラノベ書いてヒットしやすい社会になりそうです。
■昔のアニメに名作が多い理由
ホントなんでなんだろう?
まあ、絵は最近のアニメの方が段違いなんですが。
それを差し引いても楽しめる、素晴らしさが昔のアニメにはありますよね。
やっぱり思い当たるのは、バブル後の不景気、そして低予算。
でもそれだけじゃないと思うんです。
アニメ制作も最初の頃は試行錯誤しながら、どうやったら視聴者に楽しんでもらえるのか?ってものすごく工夫したと思うんです。
まだ、右も左も分からない業界だったでしょうし。
それが今となってはアニメ制作も、効率化され、使いまわしの技術、使いまわしの脚本、新しく構築する手間が減った反面、作品を作る熱意も失われてしまったのではないでしょうか?
一言で言うと、作業の効率化が原因ですね。工場の流れ作業です。アニメ監督はいわば工場長です(笑)
そんな低予算、効率化された現代においても名作と呼ばれるアニメを世に送り出す製作者達って本当に素晴らしいですね。ホント尊敬します。
でも、これってアニメ業界に限った話じゃないんですよね。
なんでも最初は人間って努力して輝くのに時間が経つにつれてダメになっていく。
同じことやろうとする人が増えれば増えるほど、競争になり、品質が極限まで低下する。
誰も手を付けていなかった業界が最初は儲かったのにダメになって行く様とか、
バブル崩壊後の経済とか、
さらには人間関係も(笑)
恋愛の最初、付き合い始めや、結婚したての頃は良かったのに、だんだん何かが失われていくあの感覚。
もうこれは宇宙の法則と言っても良いレベル。
とまあ脱線しましたが、最初の頃はよかったねぇ、というのはアニメ業界に限った話じゃないということです。