plm さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
断罪者を断罪する者
あらゆる人々の精神状態が数値化され、「ドミネーター」によって犯罪者が裁かれる監視社会。
そんな中で公安局刑事課の活動を描く、近未来サスペンス・アクション サイコパスの続編。
一期で刑事ドラマ的主軸だった狡噛の不在や、一期の朱ポジションと思しき最年少監視官 霜月美佳や、
得体の知れない新人執行官 東金朔夜など、主要メンバーは前作と大きく変わり新鮮な顔触れとなった。
■大きな変化は主人公の立ち位置
一期の朱さんは物語を牽引するというよりは監視官の名の通り見守る役だったのに対し、
二期ではバリバリ刑事らしく主体性を持って頼れる人物に。
一期ラストでその片鱗を見せていただけに、成長が発揮されていたのは続編モノとしては嬉しい限り。
主人公が傍観者というのは、視聴者視点からすれば近い立場として見やすいという利点もあるけれど、
やるときゃやってくれる主人公!という方が最近は気持ち良い気がする。
一方対照的に描かれていたのは後輩ちゃん、霜月監視官。
新人ならではの未熟さ・仲間への反発がある、という立ち位置としては1期の朱なのだが、
その根底にあるのが"正義への疑問"ではなく"自己保身"という点で、まるで違って見えるのだろう。
全編通して良いとこがないという、ある意味可哀相なキャラであった。
■この時代に求められる人間像とは
自ら是非を判断して善悪を導き出せる朱は、人間像としては理想的かもしれない。
しかし、はたしてこのシビュラにより管理されている社会においては、どちらが幸せなのだろうか?
システムに身を委ね、一見して思考を放棄したような人々は、輪を乱さずリスクを冒さない。
だがシステムすら疑う強い正義感は、ときに社会を崩壊させる危険性を孕んでいる。
シビュラに害と見做されれば犯罪者として執行されかねないような世界で、
自分の正義を貫き続けるというのは命知らずな行為とも言えるかもしれない。
そういう意味で朱さんは朱さんで、保身がなさすぎて異常にも思える。
■シビュラの正体に迫っていく一期と、シビュラの自己矛盾に言及していく二期
「免罪体質者」をキーワードに、シビュラが裁けないマキシマを追っていく一期に対し、
「透明人間」をキーワードに、シビュラが認識できないカムイを追っていく二期。
システムの穴を突いた問題である点は同じだが、その焦点が抜け道を利用した犯人ではなく、
シビュラシステムそれ自体へと定まっていく、というアプローチの仕方は面白く感じた。
裁きを下す側に対しても、裁きを下すことができるのか?
カムイはドミネーターで監視官を裁けるのか、といったところから手順を踏んで試していく。
朱は事件状況から犯行目的を読み取っていく……という段階が結構わくわくした。
メンタルケア施設での虐殺はかなりショッキングだったが、矛盾を突きつける意味では効果的だった。
■真の悪役の魅力のなさ
けれどおばあちゃん辺りは悪趣味なだけで、主張が感じられず後味が悪いだけになってしまった。
黒く染めたいからというだけで親族を殺したんじゃ、短絡的で悪逆非道なだけじゃないか。
"コウガミシンヤ"と"トウガネサクヤ"名前の響きも近く、捜査の相棒ポジション、
オープニングで重なる描写もあって、どう話に絡むのかと期待していて、
中盤まで有能さを時折見せていたのに、最後の最後でただの小悪党に成り下がってしまった。
ただ、ラストの撃ち合うシーンは良いと思う。(終わり際が滑稽で笑いが勝ってしまったけども)
いっそのこと両者爆散してほしかったのに、なぜ生き残れたのか。
後輩ちゃんとのラストのやりとりを見せたかったんだろうか、と予想するけれど
最後の挽回チャンスでも後輩ちゃんにいいとこはなかった……。ある意味ぶれない。
ちなみにカムイはあれでホロ纏ってなかったら人体模型みたいなのが歩いてるのかと思うとコワイな。
■非を認め、負の因子を排除して、シビュラは清くなるか?
個人的にシビュラシステムは、あのシステムのままでもっと上手くいくと思うけどなぁ。
シビュラっていうのは複数の脳で議会を開いて多数決を取っているようなものなんじゃないだろうか?
だから朱が判ずることができる問題なら、シビュラはより高度に判ずることが可能であると思う。
朱個人よりたくさんの人(脳)の意見によってだされる回答の方が信頼に足る。
そういうシステムを受け入れた世界じゃなかったのか。
だから「負の因子」を切り捨てるのは間違っているように思う。
意見を出す人はより多い方がいい、反対派をすべて切り捨てたらYESマンしか残らないではないか。
思考を理解できない因子「免罪体質者」を取り込むことで、異なる思考を取り入れていたことからも、
視野を広げるという方針は必要だったはず。
そもそも作為的に脳を選出する、という行為が思考に偏りを生むんじゃなかろうか。
無作為に選ばれた脳をシビュラシステムにあてがえば、より一般的な回答を導き出せるはず。
平凡な人の脳をもっと大量に投入すれば、多くの人にとっての住みやすい世界が実現しそうだ。
けれどこうなれば、もはや外で生きる人とシビュラの中で生きる人の認識に齟齬を作り出しそうだ。
禾生局長のように肉体を借りて出歩くこともできるらしいが……、
シビュラの脳の普段の生活というのは一体どんなものなんだろう?
☆まとめ☆
続編モノ、実のところ一期の終わりはあまりすっきりしていなかったので期待はしていなかった。
けれど観てみると案外、懐かしさもあってかなかなか面白く感じた。
犯罪係数、ドミネーター、執行官監視官……といった作品性のあるワードが印象強かったせいだろうか、
作品独自の世界が展開されていると思わせてくれる部分で、やはり引きこまれるんだなぁと思う。
本格的な刑事モノかというと、どことなく物足りなさが漂ってしまうけれど、
ざっくり気を抜いて観る分には、サイコパスを多少濁らす程度の精神影響力を持つアニメだった。
この作品を観てあなたの心は何に染まるのか、WC?