おぬごん さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
「まどマギ」の皮を被り、「エヴァ」を目指した意欲作
異世界で「勇者」として世界を守ることになった少女たちの物語
5人の少女たちが変身して異世界で謎の化け物と戦うという設定や変身後の姿からは、否応なく「魔法少女まどか☆マギカ」を思い起こさせられる
また少女たちが所属する「勇者部」という最近のアニメでよくある謎のお助け部活動など、
制作側が意図的に、これでもかとありがちな要素を盛り込んできた
設定的な珍しさといえば、車椅子生活で愛国心が(非常に)強い東郷のキャラくらいか
それでも作者はエロゲライターのタカヒロ
どう捻じ曲がった物語にしてくれるのかと思ったら、7話までは不気味なくらいに話がトントン拍子に進む
「不気味なくらい」というのは冗談じゃなく、途中であからさまに死亡フラグを提示しまくったのに何事もなく敵に打ち勝つ回を挟むくらいだから、制作側も意図的にそういう雰囲気を演出していたのだろう
7話までは日常描写中心で視聴者にキャラに愛着を持たせ、バトルは申し訳程度
しかし不穏な空気は溜まりに溜まっていく
そうして積み上げてきた平和な日常と不穏な空気が、8話で爆発する
9話の風と樹の姉妹回の話はある程度予想されたものではあったが、
8話の園子の状態、10話の園子の部屋と世界の惨状、11話での夏凛の勇姿と、視覚的にも衝撃的なショッキングさを演出してくれて、一気に引き込ませてくれた
そして迎えた最終回
今度は一気に、不自然なほどに、物語はハッピーエンドへと収束していく
世界の滅亡や謎といった要素を全部投げっぱなして
このエンディングは賛否両論を巻き起こして当然だろう
この終わり方は、8話以降で世界の惨状や理不尽さで絶望を演出していた物語の終わり方として、無責任にすぎる
しかし一方で「どんな困難にも立ち向かう」少女たちの物語としては、これ以上にない終わり方でもあるのだ
だからこのエンディングは、この作品に対し世界のストーリーを見ていたか、キャラのストーリーを見ていたかで感じ方が変わってくる
結果的にこのエンディングは、後者のキャラのストーリーとして100%振り切った終わり方だった
だからわざわざ7話もかけて、キャラクターを視聴者に印象つけたのだし、ラストに「結城友奈の章 終わり」と、主人公の物語であったことを念押ししたのだ
だが、8話以降の世界観のインパクトが、あまりに強すぎて、多くの人はそっちに目を向けてしまった
その結果、なあなあに投げっぱなされた世界の謎に対し不満が出てしまっている
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※この辺は「大赦」「神樹」といった「世界側」の描き方が肝だった
「世界側」を曖昧な存在として描くことでキャラ描写中心の構成にすることができたし、また安易に描かないことで世界側の「神性」を演出することもできた
しかし最終的にはその曖昧さ故に、最後に種明かし、ネタばらし的な描写を挟むことも困難になってしまった
「世界側」にキャラの1人でもいれば、そいつに説明させればいいだけだが、それもできなかったのだ
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しかし、恐らくはそうした賛否両論まで含め、製作陣の狙いだったのだろう
実のところ、残された世界の謎について考察・推察するための要素はかなり提示されていたように思う
そして希望を未来の世代に託すラストといい、戦術の「結城友奈の章 終わり」といい、最終回はキャラの面からは綺麗に締めつつも、幾らでも続編を作れそうな作りとなっている
膨大に残された謎とそれを考察しうる要素、キャラの心は満たされたが救いようのない世界が残された賛否両論のエンディング、そして続編への余地…
そう、これはエヴァンゲリオンを目指し作られた物語だったのではないかと私は思う
この作品の評価は、このエンディングにどれだけ熱心なファンがついて来てくれて、どれだけ続編が作られるかにかかってくるのではないだろうか
…それにしては、少し篩にかけすぎたのではないかとも思うけどね
個人的にはエンディングには不安も残ったが、オリジナル作品としての挑戦を評価したい